二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 475章 初代 ( No.691 )
日時: 2013/02/17 03:07
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「ズルズキン、噛み砕く!」
「ミロカロス、寝言!」
 ズルズキンは大きく口を開いてミロカロスに突っ込むが、ミロカロスも同時に大量の水を噴射してズルズキンを吹っ飛ばす。
「だったら、諸刃の頭突き!」
 頭を突き出してズルズキンは再度突貫。ミロカロスへと迫る。
 シロナはミロカロスでは諸刃の頭突きを迎撃することは出来ないと理解しているので、下手に指示は出さずミロカロスに攻撃を受けさせる。
 そしてズルズキンの頭突きがミロカロスに直撃したが、思った以上のダメージは出ない。
「寝言!」
 直後、ミロカロスは再び大量の水を発射。ズルズキンを押し流す。
「……眠るに寝言、か。意外ときついな、これ」
 今までしばらく黙って撃ち合っていたが、思わずイリスはそんな言葉をこぼす。
 眠るは大きく体力を回復するが、その代償に眠り状態になってしまう。眠り状態になると基本的に何もできないため、無防備になってしまう。
 だがこのミロカロスは、その無防備な状態異状でさえ利用する。寝言という眠り状態で使用できる技を使い、ズルズキンと対峙している。
 しかもそれだけではない。ミロカロスの特性、不思議な鱗は状態異状の時に防御力が上がる。ズルズキンの諸刃の頭突きを喰らってもすぐに立て直し、反撃できたのもそのためだ。
「しかも、仮にまた起きたとしても眠られて体力を回復されるから、埒が明かない……無限ループってやつか」
 また眠られては敵わないので、決めるならミロカロスが眠っている間だ。
「ズルズキン、マグナムパンチ!」
 ズルズキンは拳を固め、大砲の如き勢いで飛び出してミロカロスに突撃。
「ミロカロス、寝言!」
 だが諸刃の頭突きでないのなら迎撃可能と考え、ミロカロスは再び寝言を使用する。
 しかしミロカロスは動かず、ズルズキンの拳を喰らって吹っ飛ばされた。
「うーん、失敗か」
 ミロカロスが寝言を指示され、何もしないということは今までにも何度かあった。寝言で眠るが発動したのだ。
 眠っている状態で眠るを使っても意味はない。なので何もしない時が必然的に出て来る。それがこのミロカロスの隙だ。
「ミロカロス、もう一度寝言よ!」
 今度は動いたミロカロスは冷たい風をズルズキンに吹き付ける。
「ズルズキン、諸刃の頭突き!」
 ズルズキンは凍える風が止むと、凄まじい勢いでミロカロスに特攻をかける。また寝言を使用しなかったミロカロスは、無抵抗のまま吹っ飛ばされた。
 寝言は違うようだが、眠り状態だと回避や防御などの指示が通らない。不思議な鱗があるとはいえ、技が当たればほぼすべて直撃するのだから、大ダメージも期待できる。
「噛み砕く!」
「寝言よ」
 ズルズキンは大口を開けてミロカロスに齧り付こうとするが、大量の水が噴射され、届かなかった。
「もう一度、寝言!」
 シロナは続けて寝言を指示するが、ミロカロスは動かなかった。また眠るが発動したのだろう。
「今だ! ズルズキン、マグナムパンチ!」
 ミロカロスが動かないうちに、ズルズキンはミロカロスに接近。勢いよく繰り出された拳が、ミロカロスを捉えた。
 ズルズキンもそうだが、防御を捨てて攻め続けた甲斐あり、ミロカロスの体力もかなり削れた。もう一押しだろう。
「諸刃の頭突き!」
 ズルズキンは強烈な頭突きをミロカロスに突き込む。ミロカロスに大打撃を与えたのは確かだろうが、ズルズキンも反動でかなり疲弊しているのが分かる。
「ズルズキン、マグナムパンチ!」
 続けて大砲のような勢いで拳を突き出すズルズキンだが、ミロカロスがそれを阻止しようとする。
「ミロカロス、寝言!」
 シロナの指示を受け、ミロカロスは息を吸い込む。ハイドロポンプだ。
 もしこの攻撃を受ければ、恐らくズルズキンも戦闘不能。ミロカロスより先に攻撃を当てたいが、凍える風を受け続け、素早さが大きく下がったズルズキンでは、それも難しい。そんな時だった。

 ミロカロスは目を開き、吸い込んだ息をすべて吐き出してしまった。

「! 目が覚めたのか、これはチャンスだ。ズルズキン、行け!」
 ズルズキンはそのまま、眠り状態が解けたミロカロスに拳を叩き込む。眠っていなければ不思議な鱗の効果もないので、大ダメージだ。
「ミロカロス、眠る!」
「させない! ズルズキン、ブレイズキック!」
 ミロカロスは目を閉じて眠りに入ろうとするが、そこにズルズキンの炎の蹴りが叩き込まれる。それにより地面に叩きつけられたミロカロスは、衝撃で一度開いた目を再び閉じる。眠るが間に合った……のではなく、戦闘不能だ
「やられちゃったか……戻って、ミロカロス」
 シロナはミロカロスをボールに戻す。これで、シロナの手持ちは残り一体。
「さぁ、最後はあなた。頼んだわよ」
 ゆっくりとボールを取り出し、空中に向け高くボールを放り投げ、シロナの最後のポケモンが繰り出される。

「天空に舞え、ガブリアス!」

 マッハポケモン、ガブリアス。
 青い体躯は恐竜のようで、細身ながらも頑強な鱗を持つ。背中や両腕には鮫のヒレのようなものがあり、こちらも強固そうな鱗で覆われている。
「やっぱり来たか、ガブリアス……!」
 少ししか見ていないものの、その僅かな時間でもこのガブリアスが相当な実力を持っていることだけは分かった。手負いのズルズキンが勝てるような相手ではないが、それでも後続のため、僅かでも削っておきたい。
「行くよズルズキン。諸刃の頭突き!」
 ズルズキンは頭を突き出し、凄まじい気迫を発しながらガブリアスへと突撃する。しかし、
「ガブリアス、怒りの炎!」
 ガブリアスは怒るように燃え盛る業火を放ち、ズルズキンを包み込んでしまう。炎はすぐに晴れたが、直後、ズルズキンは前のめりに倒れた。
「ズルズキン……くっ」
 一撃も当てることができず、ズルズキンは戦闘不能。一矢報いることすら叶わなかった。
「戻れ、ズルズキン」
 イリスはズルズキンをボールに戻す。これでイリスの手持ちも残り一体。
「ガブリアス相手なら、断然ダイケンキだ。だけど……」
 ダイケンキの入ったボールを手に取るが、すると頭の中に、イリゼの言葉がこだまする。
「…………」
 ダイケンキの入ったボールを戻し、違うボールを掴んだイリスは、次のポケモンを繰り出す。
「最後は頼んだよ、ディザ——」

「それでいいのかしら?」

「え……?」
 シロナの言葉を受け、イリスの動きが止まる。
「あなたはそれでいいのかと、言っているのよ。自分の選択を、そんな簡単に変えてもいいの? あなたは今まで自分の選んだ道を無理に変えてまで戦ってきたのかしら」
「それは……」
 口ごもるイリス。確かにイリスはいつも最良の判断を下していたとは言い難いし、自分の選択が間違っていたと思うこともある。
 けれど、本当に、心の底から後悔したことはなかった。
「他人に何かを言われたくらいで我が道を変えるほど、あなたの意志は弱かったのかしら。仮にも真実の英雄と呼ばれる人は、たった一度の敗北で道を逸れてしまうものなのかしら」
 イリスに構わず、シロナはさらに続けた。
「トレーナーにとって——いや、ポケモン持つ人にとって最も大事なのは、自分の思い。ポケモンと共に、最後まで自分の意志を貫く意志の強さ。勿論、他人の意見も大事。でも、それ以上に自分が決めた道を、投げ出さずに歩む方が重要なの。あなたも、誰かにそんなことを言われたことはないかしら?」
「あ……」
 言われて、イリスは思い出した。ホミカの言葉を。

『大事なのは自分がどうしたいか、なにをしたいかってこと』

 思い出した。シズイの言葉を。

『自分の信念を、最後まで貫き通せよ』

「そう。あなたのポケモンは、あなたと一緒に戦ってきた、かけがえのない仲間。時には敗れ、すれ違ったりもする。それでも、トレーナーとポケモンの思い出は永遠に消えることはない。ポケモンたちも、あなたの思いを分かってくれるはず。そしてポケモンたちも、その思いに応えようとする。さあ、イリス君。次はあなたが、ポケモンたちの思いに応える番よ」
 イリスは手にしていたボールを降ろす。
 ディザソル。最初は指示も聞かないくらい手の付けられないポケモンだったけど、今では攻めの中核をなす、頼れる仲間だ。
「僕の、思い……」
 目を瞑って想起するのは、今までの旅路。ポケモンたちと共に戦った記憶。ジムリーダー、四天王、7P……一つずつ、思い出していく。そして、
「……そうだった。忘れてたよ。最初に君を見た時に決めたのに。最後まで一緒に戦い抜くって。なのに、ここ一番で君に任せないで、どうしろって言うんだろうね」
 降ろしたボールを仕舞い込み、イリスは違うボールを手に取った。
「うん、そうだよ。最後を任せられるのは、君しかいない。君が最後にいるからこそ、みんなが頑張れる。だから、今回も頼むよ。君の力で倒すんだ、シロナさんを、父さんを、そして、プラズマ団を。行こう、僕のエース——」
 そしてイリスは、最後のポケモンを繰り出す。イリスの最初のポケモン、そして、最強のポケモン。それは——

「——ダイケンキ!」



シロナ戦その六。今回は本編が長いのであとがきはほぼないです。それならいっそなくせよとか思うかもしれませんが、こも僕のこだわりです。では次回、シロナ戦決着です。お楽しみに。