二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 477章 イリスvsイリゼ ( No.696 )
- 日時: 2013/02/17 21:50
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
リバースマウンテン。
今ではもう噴火活動を休止している休火山で、周囲には水も溜まっている。だが火山の奥に進むとかなり高温で溶岩も噴き出しており、研究者の間では近いうちにまた噴火するのでは、とも囁かれる火山だ。
そんなリバースマウンテンの奥の奥の、さらに奥の最奥地に、イリスは来ていた。
「……来たか。早かったな」
「……うん」
そこにいたのは、イリゼだ。こちらに小さな背を向けているが、それだけでもかなりの威圧感があった。イリスはそれに押し潰されまいと、強く気を張る。
「甘ちょっろい考えは捨てて来たか?」
「いや。僕はエースに頼るよ」
「あぁ?」
かなり不機嫌そうな声を上げ、険しい顔つきでイリゼは振り返る。
「てめぇ、俺の話を——」
「うるさい」
イリスは、イリゼの言葉を強引に止めた。そして、続ける。
「誰がなんと言おうと、僕はダイケンキやリーテイルに頼る。でも、エースにだけ頼るんじゃない。みんなの力があって、だからこそ僕のエースは、全力で戦えるんだ。みんなの気持ちを、背負っているんだ」
「……だが、それはポケモンを差別してるようなものだぜ。極端な話、一番強い奴を贔屓して、他を蔑ろにしてるようなもんだ」
「うん、そうかもしれない。でもそれくらいの我儘なら、みんな分かってくれるよ。ともかく——」
すうっとイリスは大きく息を吸い込み、そして、
「僕は父さんの言うことなんて聞かない! あんたの言うことなんて知らない! 僕は自分の好きなようにする、信念を貫く! エースに頼り過ぎと言われても、甘えていると言われても、それが僕だ! 誰にも文句は言わせないし、言われたところで聞いてやるもんか! ウォーグルも、デスカーン、ズルズキンも、デンチュラも、チラチーノも、デンリュウも、フローゼルも、エルレイドも、メタゲラスも、ディザソルも、リーテイルもダイケンキも! みんな僕のことは分かっている、だからこそ一緒に戦ってくれるんだ! だから、たとえ父さんが否定しようとなんと言おうと、僕は僕の真実を最後まで貫き通す!」
すべて言いきって、イリスはぜいぜいと肩で呼吸する。イリゼはしばらく黙りこみ、息を吸うと、
「合格だ」
と、言った。
「それでいい。それが真実の英雄たる資格だ……やれやれ、冷や冷やしたぜ。もしこれで俺の言うことをほいほい聞くような大馬鹿野郎だったら、もう手の施しようがなかった。あのNって奴をアテにするしかなかったぜ」
一人で満足げに頷くイリゼ。イリスには事情はよく分からなかったが、しかし自分が揺さぶりをかけられ、その上で試されていた事だけは理解した。
「——さて。まあお前の考えは合格だ。自分の意志を貫くならそれでいい。だがな、それでも思想に力が付いてこなければ意味がねぇ。その辺は、どうなんだ?」
「今度こそ勝つよ。父さんを超えてみせる」
モンスターボールを出して、イリスはそう言い放つ。
「はっ、言うようになったじゃねぇか。いいぜ、受けて立ってやる。それでお前がもし俺に勝てれば、褒美をやろう」
「褒美?」
イリゼの言葉に、イリスは反応する。なにもそんなものが欲しいからバトルをするわけではないので、この場でその言葉は意外だった。
「ああ。まあ褒美っつうより、俺たち風に言えば『真実』だな。お前も詳しくは知らねぇんじゃねぇの? 英雄がどういう存在で、どういうシステムで動いているのか。そんでもって、気になってたんじゃねぇのか? お前が、自分自身がなんで英雄に選ばれたのかを」
「っ、それは……」
「じゃあ始めようぜ。方式は前回と同じだ。お前が俺に勝てれば、俺の知っていること、全部教えてやる。かかってきな」
イリスの返答を待たずして、イリゼは話を進める。そして、イリゼもボールを取り出した。
かくして、イリス対イリゼ。第三戦、イリスのリベンジマッチが再び行われることとなった——
「先に言っておくが、今回の俺のメンバーは前みてぇにお前を封殺するためのメンバーじゃねぇ。正真正銘、俺の最強のポケモンたちが集う六体だ。はっきり言って、前の六体よりも遥かに強い」
バトルが始まる前に、イリゼはそう前置きした。だが、イリスは動じない。どころか、
「いいよ。つまりその六体を倒せば、正真正銘、父さんを超えたって言うことになるわけだよね」
と、余裕の笑みを浮かべながら言葉を返す。それに対してイリゼも口の端を吊り上げる。
「……言うじゃねぇの。上等だ、行くぜ!」
イリゼはボールを構え、先発のポケモンを繰り出す。
「ぶちかませ! カンカーン!」
イリゼが繰り出したのは、日照りポケモン、カンカーン。体幹が球状に近いエイのような姿のポケモンで、燃える炎のようなカラーリングが特徴だ。
カンカーンが場に出ると、どこからともなく光が差し込んで来る。カンカーンの特性、日照りだ。
「別にお前のエース対策ってわけじゃねぇけどな。ただ、俺のポケモンはこうした方が強いんだ。さぁ、お前も早くポケモンを出せ」
「言われなくても……出て来い、メタゲラス!」
イリスが繰り出すのはメタゲラス。地面技でカンカーンの弱点を突くことができるが、鋼との複合タイプなので逆に弱点を突かれてしまうということもある。
「ほぅ、守りを捨ててメタゲラスか。だがメタゲラスの攻撃力は、その防御力があってこそだぜ。日差しが強い状態で炎タイプ相手に出しても、十分な活躍が見込めるとは思えないがな」
「そう思うなら思ってればいいよ。それで足元をすくわれるの父さんなんだから」
「言いやがるな、本当に……カンカーン、フレアドライブ!」
カンカーンは全身に燃え盛る爆炎を纏い、メタゲラスに突撃してきた。日照りで強化されたその炎の勢いは凄まじいの一言に尽きる。
「迎え撃て! 大地の怒り!」
メタゲラスも地面から大量の土砂を噴出してカンカーンを止めようとするが、カンカーンは土砂を突っ切ってメタゲラスに激突し、吹っ飛ばした。
「メタゲラスを吹っ飛ばすなんて、凄い攻撃力だな……」
「当然だ。カンカーンは俺のポケモンの中でも、攻めの中核だからな。そんじゃ一発かましたところで、戻れカンカーン」
「え?」
イリゼはなんと、フレアドライブを一回使用しただけで、カンカーンをボールに戻してしまう。
「なに驚いてんだよ。そもそもカンカーンは場に日照りを起こしてくれりゃ十分なんだ。威力が高すぎてフレアドライブも連発できないしな。だからこうして頻繁に入れ替えねぇと、すぐにスタミナ切れちまう。んでもって、交代先はこいつだ。ぶちかませ! リーフィア!」
交代で繰り出されたのは、新緑ポケモン、リーフィア。シロナが所持していたグレイシア同様にイーブイから進化するポケモンで、草タイプだ。
「草タイプなら……メタゲラス、メガホーン!」
メタゲラスは鋼鉄の角を構え、リーフィアに向かって駆け出す。メガホーンは虫タイプの技なのでリーフィアには効果抜群。大ダメージが期待できるが、
「かわせ、リーフィア」
リーフィアはいつの間にかメタゲラスの背後に回っており、メガホーンを回避していた。そして、
「リーフブレード!」
葉っぱとなった尻尾を振るってメタゲラスの装甲を切り裂く。ダメージはそれほど大きくないが、あまりのスピードにイリスは呆然としていた。
「速すぎる……まったく見えなかった」
メタゲラスはともかく、傍から見ていたイリスにすら視認が困難なスピード。それに対してイリゼが口を挟む。
「当然だ。なんたって、俺のリーフィアの特性は、葉緑素だからな。それに素早さを重点的に育ててある。攻撃に関しては、こっちで補強できるしな。剣の舞!」
リーフィアは数歩下がって、剣のような鋭く力強い舞を踊る。それにより、リーフィアの攻撃力は一気に二倍に膨れ上がった。
「リーフブレードだ!」
「メガホーンで迎え撃て!」
リーフィアが攻撃するより早く振り向き、メタゲラスは角を突き出すが、そこにはもうリーフィアはおらず、側面から葉っぱで切り裂かれた。
「もういっちょ行っとくか。リーフィア、剣の舞!」
再び剣の舞を行い、攻撃力を上げるリーフィア。
「だったらこれだ! 全方位にストーンエッジ!」
メタゲラスは周囲に鋭い岩を浮かべ、狙いを定めず全方位に射出する。これではリーフィアも避けきるのは難しいだろう。実際、リーフィアは襲い掛かる岩を避けようとしない。だがそれは、避けられないからではなく、避ける必要がないからであった。
「リーフィア、バトンタッチ」
突如、リーフィアはイリゼのボールの中に吸い込まれていく。
「っ! バトンタッチ……!」
ボールに戻されるリーフィアを見て、イリスは慄く。それはバトンタッチの効果、そして今のリーフィアがその技を使用する影響を理解しているからだ。
「おうよ。じゃあ行くぜ、俺の次のポケモン」
イリゼは戦慄するイリスをよそに、次のボールを構える。
イリス対イリゼ、親子対決は、まだ始まったばかりだ——
イリゼリベンジバトルその一。イリゼは見て分かるように晴れパです。しかも剣の舞を二回積んでバトンタッチというえげつないことをしています。さて、今回は文字数がちょっとヤバめなので、あとがきもこの辺で。それでは次回、イリゼリベンジバトルその二です。お楽しみに。