二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 480章 海龍 ( No.699 )
日時: 2013/02/18 16:58
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 イリゼが繰り出したのは、ドラゴンポケモン、カイリュー。ずんぐりとした巨体に似つかわしくない小さな羽と触覚、腕もやや短めだ。
「カイリューか……ドラゴンタイプの最終進化系ってことは、かなり強いんだろうな……」
 外見は優しそうな顔つきをしているが、警戒を強めるイリス。
「とりあえず、剣の舞もあるし、能力を上げてから攻めるよ。ウォーグル、ビルドアップ!」
 ウォーグルは筋肉を増強させ、攻撃と防御を高める。
「カイリュー、ドラゴンダイブ!」
 そしてカイリューも動き出した。カイリューは天井付近まで飛ぶと、龍の力をその身に纏い、ウォーグル目掛けて急降下してくる。
「かわしてブレイブバードだ!」
 ウォーグルは突っ込んで来るカイリューを避けると、カイリューの背後に回った。攻撃直後で動けないカイリューの後ろは隙だらけだ。
「行け、ウォーグル!」
 そのまま燃え盛る炎の如きエネルギーを纏い、勇猛果敢にウォーグルは突撃する。そして、ビルドアップを三回掛けしたブレイブバードが、カイリューの背に直撃するが、

「炎のパンチ!」

 カイリューはすぐさま振り向き、炎を灯した拳でウォーグルを殴り飛ばした。
「なにっ、ウォーグル!」
 日照りで威力が上がった炎のパンチでウォーグルは吹っ飛ばされ、壁に叩き付けられる。
 それよりもカイリューの反撃速度が異常だ。三回もビルドアップを使用したウォーグルのブレイブバードをまともに受けて、あれほど素早く反撃に出るなどおかしい。イリスがそう思っていると、
「一発限りだから教えといてやるよ。俺のカイリューの特性はマルチスケイル。初撃に限り、カイリューは如何なるダメージも半減する。だからビルドアップを三回掛けていようが、関係ねぇんだよ」
「そうなのか……」
 いやしかし、それでもビルドアップの強化はあるので、マルチスケイルがあったとしても十分驚きなのだが。
 けれどマルチスケイルが発動するのは体力が満タンの状態。つまり、二度目はないのだ。
「ウォーグル、ブレイククロー!」
 ウォーグルは頑強な爪を構え、カイリューに特攻する。カイリューの攻撃力は三倍に膨れ上がっているが、防御力に変化はない。なので、攻撃する側に立てばビルドアップで攻防共に上昇しているウォーグルの方が有利だ。
「甘いんだよ。カイリュー、十万ボルト!」
 ウォーグルが突っ込んで来る中、カイリューは超高電圧の電撃を放ってウォーグルを牽制する。十万ボルトは特殊技なのでビルドアップの影響を受けない。剣の舞の影響も受けないが、それでもウォーグルからしたらかなり痛手になるので、電撃の回避に努め、無理には攻めない。
「エアスラッシュ!」
 続けてカイリューは空気の刃を連続で飛ばす。一発一発が大きく、数もそこそこ。イリスのリーテイルとシズイのマンタインの中間と言ったところか。
「かわしてビルドアップ!」
 飛来する刃をかわし、ウォーグルはさらにビルドアップする。これで攻撃と防御は共に三倍。
「カイリュー、十万ボルト!」
「ウォーグル、かわして鋼の翼!」
 カイリューの放つ電撃を避けつつ、翼を鋼鉄の如く硬化させ、ウォーグルは突っ込む。
「ちっ、迎え撃て! 炎のパンチ!」
 ウォーグルが繰り出す翼に対し、カイリューも炎の拳を突き出す。
 能力の上昇値は共に同じなので、日照りの恩恵を受け、なおかつタイプ相性でも勝る炎のパンチが鋼の翼を押し切った。
「次だ! ドラゴンダイブ!」
 カイリューは天井付近まで上昇すると、龍の力を身に纏い、吹っ飛ばされつつあるウォーグル目掛けて急降下した。
「かわしきれない……ビルドアップ!」
 回避は不可能。ならばとウォーグルは筋肉を増強。ドラゴンダイブに備える。
 そしてウォーグルが背中から壁に激突した直後、カイリューもそこに凄まじい勢いで突っ込んできた。
「ウォーグル!」
 カイリューは飛び立ち、ウォーグルが取り残された状態で壁が崩れ落ち、ウォーグルはそれに巻き込まれる。
「今のは効いただろうが、どうだ……?」
 しばらく崩れた壁際を見ていた二人。そして突如、崩落した岩石の山が動いた。
 ガラガラと積み上がった岩が再度崩れていき、そして、ウォーグルが勢いよく岩の中から飛び出す。
「ウォーグル……! 無事だったか!」
 ビルドアップを五回も掛けた甲斐があった。三倍以上に膨れ上がったウォーグルの物理能力は、岩の崩落やカイリューのドラゴンダイブすらも耐え切るほど強靭になったのだ。
「よし、なら最後まで上げ切るぞ! ビルドアップ!」
「させるか! カイリュー、十万ボルト!」
 ウォーグルが再び筋肉を増強しようとすると、そこに電撃が飛び、やむなくビルドアップを中断し、ウォーグルは上昇した。
「これ以上ウォーグルの能力を上げられたらこちも困るんでな。マルチスケイルも種切れだし、あんまでかいのも喰らいたくねぇ。カイリュー、エアスラッシュだ!」
 ウォーグルを追いかけるようにカイリューは空気の刃を飛ばす。ウォーグルとてビルドアップの影響を受けない特殊技は喰らいたくないので、旋回するように刃をかわしていく。
「連続で十万ボルト!」
 カイリューは今度はあえて狙いを定めず、四方八方に電撃を飛ばしまくる。狙いを定めない攻撃というのは存外かわすのが難しく、ウォーグルも何発か少しだけ掠ってしまった。
「くっ、ビルドアップ!」
「させねぇつってんだろ! エアスラッシュ!」
 電撃が止んだ頃合いを見計らってビルドアップしようとするが、そこにカイリューの飛ばした空気の刃が飛来。ウォーグルは切り裂かれ、怯んでしまった。
「やばい……ブレイククローだ!」
 ダメ元でイリスはブレイククローを指示する。あわよくば頑強な爪で電撃を切り裂こうと思ったのだ。
 だがその淡い期待も功を奏す。ダメージを完全に零にすることは出来なかったが、ウォーグルの爪は確かに電撃を切り裂き、四方八方散らした。それにより、ウォーグルへのダメージも微々たるものだ。
「よしっ! いいぞウォーグル! 今のうちにビルドアップ!」
 電撃を捌き、ウォーグルは筋肉を増強させる。これでウォーグルの攻撃と防御はマックス四倍。生半可な攻撃や防御ではまず対応できないだろう。
「ちっ、結局最後まで上げられちまったか……まあいい。カイリュー、十万ボルト!」
「かわして鋼の翼!」
 カイリューは高電圧の電撃を放つが、ウォーグルはそれを回避。そのまま翼を鋼のように硬化させ、カイリューに突っ込む。
「迎え撃て! 炎のパンチ!」
 カイリューも拳に炎を灯し、ウォーグルの翼と激しく競り合う。
 鋼の翼の威力が四倍になっても、日照りとタイプ相性で押し勝つことは出来ない。しかしそれでも、今度は互いに弾き合った。そして、
「鋼の翼!」
 ウォーグルは弾かれた勢いを利用し、その場で一回転するようにもう片方の翼をカイリューに叩き付けた。
「なっ、カイリュー!」
 鋼の翼はそれほど高威力の技ではない。しかしビルドアップを六回も掛けた今は別。防御力を上げていないカイリューはその一撃で壁まで吹っ飛ばされた。
「これで決める! ウォーグル、ブレイブバード!」
 ウォーグルは全身に燃え盛る炎のようなエネルギーを纏い、勇猛果敢にカイリューへと特攻をかける。
 ウォーグルと同じように壁が崩れ落ちて岩の下敷きになったカイリューは脱出が遅れ、気付いた時にはもうすぐそこまでウォーグルが迫っていた。
「くそっ……ダメで元々、カイリュー、炎のパンチ!」
 カイリューはすぐに拳に炎を灯し、ウォーグルに向かって殴りかかる。しかしウォーグルのブレイブバードを、日照りがあるとはいえ炎のパンチで相殺できるはずもなく、カイリューはウォーグルの突撃を受け、地面にめり込んだ。
「カイリュー!」
 その上さらに壁が崩れ落ち、カイリューは戦闘不能となる。
「よくやったぜ、カイリュー。戻っとけ」
 イリゼはカイリューをボールに戻す。
 イリスにとって、ここでカイリューを倒したのもいいことだが、なによりビルドアップを六回も掛けられたことが大きいプラスだ。これなら相手がカンカーンだろうがリーフィアだろうが、有利に戦える。
「ふん、もう少しとっておきたかたんだが、しゃーねぇか。化けモンみてぇな攻撃と防御を手に入れたウォーグルを止めるには、こいつしかいねぇ」
 そしてイリゼが手に取った五つ目のボール。イリゼはそれを放り投げ、次なるポケモンを繰り出した。
「ぶちかませ! エルフーン!」
 出て来たのは、自身よりも大きな綿を背負ったポケモン。風隠れポケモン、エルフーンだ。
「エルフーン……?」
 イリスはその選出に疑問符を浮かべる。それはそうだろう。草タイプのエルフーンは、飛行タイプのウォーグルとは相性が悪いのだから。
 しかしイリゼは不敵な笑みを見せ、
「しっかり見てろ。バトルは力だけじゃ決まらねぇってことを、この俺がみっちり教えてやるよ」



イリゼ戦その四です。イリゼのカイリューは例によってマルチスケイルでした。それとイリゼの五番手はエルフーンです。いいですよねエルフーン。白黒も好きです。強いだけではなくあのもふもふが……まあそれは置いといて。次回はイリゼ戦その五。エルフーンのもふもふがどんな活躍をするか、お楽しみに。