二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 481章 綿毛 ( No.700 )
- 日時: 2013/02/19 22:39
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
バトルは力だけでは決まらない。
それはその通りだ。イリスだって分かっているが、その台詞はイリゼには似合わない。日照りや剣の舞といった攻撃重視のスタイルを貫いていたイリゼが、今更そんなことを言っても説得力に欠ける。
だがイリゼは構わず、
「エルフーン、宿木の種」
先に動いたのはエルフーン、というより、その瞬間移動の如きスピードにウォーグルがついて来れなかった。
エルフーンはいくつかの種を飛ばしてウォーグルに植え付ける。すると種はすぐに割れ、急成長してウォーグルに絡みつく。
「宿木の種……!」
宿木の種とは、植え付けられると体力を少しずつ吸い取る技だ。能力の上がったウォーグルに真正面から挑まず、じわじわと削るつもりらしい。
「だったら一気に決めるまでだ! ウォーグル、ブレイブバード!」
ウォーグルは全身に燃え盛る炎の如きエネルギーを纏い、凄まじい勢いでエルフーンに突っ込んでいく。
「エルフーン、身代わり」
ウォーグルはエルフーンに激突し、吹っ飛ばした。綿毛の体が壁に思い切り叩き付けられる。そこでエルフーンは戦闘不能になるはず、だったのだが、
「なっ、え?」
そこにあったのはエルフーンではないが、エルフーンだった。より正確に言うなら、デフォルメ化された小さなエルフーンであって、本物のエルフーンではない。エルフーンの身代わりだ。
「本物はどこに……?」
ウォーグルとイリスはきょろきょろ辺りを見回す。すると岩陰からなにかが飛び出した。
「こっちだ。ソーラービーム!」
飛び出したのは本物のエルフーン。エルフーンは太陽光を吸収した光線を発射し、ウォーグルを攻撃する。
「ウォーグル!」
直撃を受けたが、効果いまひとつなのでウォーグルへのダメージは小さい。それと、どうやらこのエルフーン、特攻はあまり高くないようだ。
「今度こそ! ブレイブバード!」
再び膨大なエネルギーを纏い、勇猛果敢に突撃するウォーグルだが、
「何度来たって同じだ。身代わり!」
エルフーンは再びデフォルメ化された身代わりを盾に、ブレイブバードを防御してしまう。
「だったらこれでどうだ! 鋼の翼!」
身代わりを吹き飛ばした直後、すぐさまウォーグルは翼を硬化させ、エルフーンに攻撃するが、
「コットンガード」
突如エルフーンの背負っている綿が一気に増量し、エルフーンを包み込む。鋼の翼は綿によって勢いを殺され、ほとんどダメージが通らなかった。
「ソーラービームだ!」
そして次の瞬間、綿の中から眩い光線が発射され、ウォーグルが吹き飛ばされる。
「ウォーグル!」
派手に吹っ飛んだウォーグルだが、ダメージは少ない。空中で宙返りをするように態勢を整えた。
「ウォーグル、ブレイククローだ!」
そして頑強な爪を構え、エルフーンに突っ込んでいく。しかし、
「効かねぇっつの。エルフーン、コットンガード!」
エルフーンは再び大量の綿に覆われ、ウォーグルの爪は表面の綿を少し削るだけに終わる。
「ほら行くぜ。ソーラービーム!」
そしてまたしても綿の中から光線が発射され、ウォーグルが吹っ飛ばされる。いくら一発のダメージが小さいとはいえ、宿木の種もあるのでダメージはかなり蓄積してきている。
「でも、ビルドアップがあるし、戻したくはないな……」
一回のバトルでビルドアップを六回も使用したのは今回が初めて。そうでなくても、ここまで強化した能力をリセットするようなことはしたくない。
「……戻れ、ウォーグル」
しかしイリスはウォーグルをボールに戻した。それに対しイリゼは、
「いい判断だな」
と称賛する。
「あんまり能力変化にこだわり過ぎると足元をすくわれる。強化された相手にはそれなりの戦い方があるんだ。それに嵌められると、ビルドアップも剣の舞も関係なくなる。だから交代させるときは交代させる。そういう思い切りも、トレーナーには必要なんだ」
ま、お前には釈迦に説法かもな、とイリゼは締め括った。
ともあれ、イリゼのエルフーン、相当厄介な相手だ。ウォーグルのスピードを簡単に追い越していたことを考えると、特性は恐らく悪戯心。変化技を使用するときに限って、必ず先制できる特性。
この特性に対抗するためには、同じ先制技を持ち、なおかつエルフーンより速くなくてはならない。もしくは、悪戯心以上の先制技を使うしかない。
「となると、君以上の適任はいないよね。頼んだよ、ディザソル!」
イリスの四番手はディザソルだ。怒りの炎なら弱点を突けるし、神速もある。素早さだってエルフーンには負けていないはずだ。
「やっぱディザソルで来たか。俺のエルフーンに対抗できる素早さを持つのは、そいつくらいだからな。エルフーン、宿木の種」
またしても先に動いたのはエルフーン。風のようにスゥッとディザソルに近付き、宿木の種を植え付けた。
「っ、辻斬り!」
「コットンガード」
先手は取られたが、ディザソルは反撃に漆黒の鎌を振るう。しかしエルフーンは綿に包まれ、攻撃が通らない。
「ソーラービームだ!」
そして直後、綿の中から光線が発射され、ディザソルを吹っ飛ばす。ディザソルはなんとか空中で態勢を整え、着地する。
「やっぱり速いな……ディザソル、怒りの炎!」
ディザソルは雄叫びをあげ、怒り狂ったように燃える業火をエルフーンへと放つ。
「エルフーン、身代わり!」
だが炎はエルフーンを捉えない。エルフーンが作り出した身代わりが、本体の盾となる。だが、
「神速!」
直後、エルフーンの本体にディザソルが直撃。エルフーンを吹っ飛ばし、壁に叩き付けた。これでやっと、エルフーンに一撃入れたことになる。
神速は先制して攻撃できる技で最も高威力かつ、最も速い。たとえ悪戯心で先制出来ようとも、それを超えて先制するのが、神速だ。
「でも、身代わりの代償も神速も、宿木で回復される。コットンガードもあるし、ただ神速を連発していればいいっていうわけでもないんだよな」
しかもこのエルフーン、攻撃を捨て、素早さは悪戯心に頼っているのか、何気に防御が高い。神速の直撃を受けてもまだ平然としている。
「とにかく攻めるか。ディザソル、神速!」
「エルフーン、コットンガード!」
エルフーンは綿を増量して身を守ろうとするが、それより早くディザソルが突撃し、コットンガードは失敗に終わる。
「やっぱダメかぁ。なら保険だ。エルフーン、身代わり」
エルフーンは体力を削り、デフォルメの身代わりを作り出す。一応、身代わりも動くことは出来るようで、本体の綿毛にぴっとりとくっ付いている。
「いざという時に盾にするつもりか……だったらすぐに燃やす。ディザソル、怒りの炎!」
ディザソルは憤怒の炎を発生させ、エルフーンへと放つが、
「身代わりを盾にしてソーラービームだ!」
案の定、小さいエルフーンが身代わりとなり、本体はソーラービームを発射。ディザソルを吹っ飛ばした。
「身代わり!」
そしてまたすぐに身代わりを生成。エルフーンの体力も身代わりで少しずつ削れていくが、宿木で回復しているので減りが遅い。
「くっ、ディザソル、神速だ!」
ディザソルは起き上がり、超高速でエルフーンに突撃。しかし身代わりが盾となり、本体に攻撃は届かない。
「もう一度!」
そこでディザソルはもう一度神速を使用。今度こそエルフーンに突撃し、吹っ飛ばした。
「辻斬りだ!」
「コットンガード!」
ディザソルは辻斬りで追撃をかけるも、コットンガードで防がれてしまう。
本来ならリーテイルを出したいが、そうすると確実にカンカーンと交代されるので、あまり状況は変わらない。エルフーンはディザソルで倒すしかないのだ。
「せめてあのスピードがなんとかなればな。あんなに大きな綿を背負ってるのに動きは軽快なんだから……ん? 綿……?」
そこで、イリスは閃いた。エルフーンを打破することができるかもしれない方法を。
「……なんか思いついたみてぇだが、それでも俺のエルフーンは倒せねぇぞ」
「いや、倒すさ。なんたって僕の仲間だからね」
ディザソルは姿勢を少し屈め、駆け出す態勢になる。
「ディザソル、辻斬り!」
「無駄だ! コットンガード!」
ディザソルは鎌を煌めかせて駆け出すが、すぐさまエルフーンも綿に包まって防御する。そこにディザソルの刃が繰り出される——はずだった。
ディザソルはエルフーンを攻撃する寸前で、技を切り替えた。
「スプラッシュ!」
イリゼ戦その五、もふもふエルフーンのバトルです。エルフーンのスタイルは、まあ予想していたかもしれないですが、やどみが型です。ゲームでも厄介ですが、小説でも厄介ですね、これ。全然攻撃が通りません。エルフーンとは少し離れますが、ウォーグル積み過ぎじゃないですかね。ビルドアップ六回って、普通ならこのまま無双してますよ。まあそれはさておき、エルフーンです。正直、白黒はエルフーンのもふもふのことならいくらでも語らいたいところですが、文字数制限というものがあるので泣く泣く断念です。では次回はイリゼ戦その六です。お楽しみに。