二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 484章 火山 ( No.705 )
- 日時: 2013/02/21 02:45
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
現れたのは、胴の短いトカゲのような姿のポケモン。溶岩のような体色を持ち、体の各所には金属の装甲、十字の爪を地面に喰い込ませ、こちらを睨み付けている。
火口ポケモン、ヒードラン。テツカブリの進化系であり、リバースマウンテンに住まう、伝説で語られてもおかしくないような力を持つポケモンだ。
「これが、父さんのエース……」
「おうよ。こいつは俺たちが今バトルをしているこの場所で出会ったポケモンだ。懐かしいぜ。俺がこの部屋にあった置き石を蹴り飛ばしたら、ゴキブロスみてぇに這い出てくんだもんな」
「ゴキブロス……」
イリゼの蛮行も大概だが、その例えもどうなのだろう。いや、確かに言われてみれば、ヒードランはゴキブロスと似ていなくもないが。
「まぁ、それから一悶着というか、一戦を交えたというか、なんやかんやあって、今は俺の、最大の相棒だ。そんじょそこらのヒードランと一緒にすんなよ」
イリゼの目つきが鋭くなる。同時にヒードランも姿勢を少し屈め、唸り声をあげ始めた。
それを見てイリスは、リーテイルに耳打ちする。
「……リーテイル、気を悪くしたらごめん。でも君じゃヒードランにはたぶん勝てない。炎と鋼の複合タイプなんて、君の天敵みたいものだ。相性が悪すぎる」
イリスの言う通り、リーテイルはヒードランと絶望的に相性が悪い。ヒードランは炎技でリーテイルの弱点を突けるだけでなく、リーテイルの技はすべてヒードランに対して半減以下に抑えられてしまうので、決定打に乏しすぎる。恐らくほとんどダメージは与えられないだろう。
「だから、捨て駒みたいで悪いけど、負ける前提で戦って、少しでもヒードランを削ってくれ。その後は、君の先輩がなんとかしてくれる。本当に悪いんだけど、頼めるかな」
イリスの言葉にリーテイルは、静かに頷く。
「……ありがとう。じゃあ行くよ、リーテイル。リーフブレード!」
リーテイルは尻尾に葉っぱを構え、高速で飛行しヒードランを切り裂く。
しかし威力は四分の一。ヒードランはほとんどダメージを受けていない。
「次はエアスラッシュだ!」
今度は後ろに回り、背中の葉っぱを羽ばたかせて空気の刃を無数に飛ばす。ヒードランは切り刻まれるが、これも威力半減で、ダメージは少ない。
「ドラゴンビート!」
続けてリーテイルは龍の鼓動の如き咆哮を放つ。この咆哮もヒードランに直撃するが、半減されてしまう。
「終いか? だったら次はこっちから行くぞ。ヒードラン、マグマアクセル!」
突如、ヒードランは激しい炎——否、超高温の溶岩、マグマに身を包み、高速でリーテイルへと突撃する。
「リーテイル、回避だ!」
リーテイルは上昇してヒードランの突撃を回避するが、
「それで避けたつもりか!? ヒードラン、追いかけろ!」
ヒードランは爪を喰い込ませながら壁を登り、上へ上へと逃げるリーテイルを追う。
この部屋はドーム状になっており、天井が高い。しかし頂点に近づくにつれ地面と平行な面積は狭くなっていき、いずれリーテイルは逃げ道を失ってしまう。
「その前になんとかヒードランを止めないと……リーテイル、ドラゴンビート!」
リーテイルは振り向き、龍の音波を発射。ヒードランに直撃させるが、ヒードランは構わず壁を登り続ける。減速すらしない。
「くっ、だったら急降下だ!」
袋小路に入り込む前に、リーテイルは急降下してヒードランを振り切ろうとするが、
「逃がさねぇよ! ヒードラン、加速だ!」
ヒードランは壁を蹴り、落下するようにしてリーテイルを追いかける。壁を蹴った勢いを考慮しても、そのスピードは先ほどよりも速い。
しかしギリギリ、リーテイルはヒードランから逃げおおせることが出来た。
「よし、いいぞリーテイル。エアスラッシュだ!」
地面に激突したヒードラン目掛け、リーテイルは空気の刃を飛ばして切り刻む。
「マグマアクセル!」
だが当然、ヒードランへのダメージは少ない。ヒードランは再びマグマを身に纏い、加速しながらリーテイルへと突っ込む。
「上に逃げればまた追い込まれるか……リーテイル、ヒードランの上を通過するんだ!」
リーテイルは高度を上げると、高さこそ違うがヒードランが向かってくる方向に対して一直線に飛ぶ。
ヒードランは四足歩行、それも這いつくばるような姿勢なので、真上に対しては攻撃が不可能だ。なのでリーテイルはヒードランの真上を通過することで、安全にマグマアクセルを回避する。
「ちょこまか逃げやがるな。だったらヒードラン、スターダスト!」
急停止してたヒードランは、部屋を震撼させるような咆哮をげる。すると天井から無数の鋼鉄が隕石の如く降り注いだ。
「リーテイル、とにかく回避だ! かわし切れないものはリーフブレードで切り裂け!」
隕石は標的を定めず、無差別に落下してくる。あるものは地面に埋まり、あるものは壁に突き刺さり、あるものはリーテイルに落ちていくが、リーテイルは持ち前のスピードでかわし、尻尾の葉っぱで切り裂くことでノーダメージでやり過ごす。
「それでかわしたつもりかよ。ヒードラン、ソーラービームだ!」
今度は太陽光を吸収した光る光線を発射するが、リーテイルはこれも回避する。直線的な攻撃なら軌道は読みやすく、回避も容易い。しかし、
光線は壁や地面に埋まった鋼鉄の隕石に反射され、リーテイルを背後から襲った。
「っ!? リーテイル!」
予想だにせぬ不意討ちに、威力が四分の一にも関わらずリーテイルは大きく態勢を崩してしまう。
「そこだ! マグマアクセル!」
そしてその隙を狙い、ヒードランが特攻。スピードはさらに上がっており、リーテイルでもかわすは難しそうだ。態勢が崩れた状態となればなおさらである。
「くっ、それでも当たるわけにはいかない。リーテイル、かわすんだ!」
態勢を崩しながらもなんとか上昇して逃げようとするリーテイル。だが完全にかわすことはできず、少しだけ掠るように攻撃を受けてしまった。
「浅いか……」
掠っただけではあるが、リーテイルへのダメージは大きい。弱点を突かれたこともそうだが、それだけヒードランの攻撃力は高いのだろう。
「そろそろリーテイルも限界か。こうなったら、せめて大技をぶつけて散ろう、リーテイル」
イリスの言葉に頷き、リーテイルは急上昇。背中の葉っぱを強く羽ばたかせ、空気の渦と、葉っぱを発生させる。
「リーテイル、リーフストーム!」
直後、大量の葉っぱを含む嵐の如き大竜巻がヒードランへと放たれる。特性、深緑で強化されたリーフストームの威力は相当なものだ。しかし、
「迎え撃て、ヒードラン!」
ヒードランも大きく咆号し、自身の周囲に溶岩の渦を発生させる。そして、
「マグマストーム!」
ヒードランもリーフストームのように、嵐のような大竜巻を放った。しかしヒードランの放つ嵐が含むのは鋭利な植物ではなく、燃え滾る溶岩、灼熱のマグマである。
リーフストームとマグマストーム、二つの嵐が激しくぶつかり合うが、勝敗は目に見えている。マグマストームがリーフストームを飲み込み、そのままリーテイルに襲い掛かった。
「リーテイル!」
マグマの嵐に飲み込まれ、リーテイルは地面に叩きつけられる。全身が真っ黒に焦げており、とても戦える状態ではない。戦闘不能だ。
「ありがとうリーテイル、戻って。後は任せるんだ」
イリスはリーテイルをボールに戻す。そして最後に残った、否、最後まで残しておいたモンスターボールを、手に取った。
「さあ、後は君だけが頼り……いや、違うな。頼るんじゃなくて、一緒に戦うのか。だからお願いかな。そういうわけで、君の後輩の分も頑張ってくれ。一緒に、父さんを超えよう。ヒードランが父さんのエースで相棒なら、僕の最大のパートナーは君なんだ。行くよ、相棒——」
今まで乗り越えてきた数々のバトル。挫折も敗北もあったが、それ以上の成長や勝利もあった。一時は離れていたこともあったが、ほとんどの時を共に過ごした。イリスの始まりのポケモンにして、最高のポケモン。それが今、呼び出される——
「——ダイケンキ!」
イリゼ戦その八。結局決着しなかったです。それはともかく、今回の終わり、シロナ戦と同じじゃないですか? いやいいんですけどね、イリゼがヒードランを出す場面と対比させただけですから。それはそうと、イリゼのエースはヒードランです。このバトルが終わったらトレーナー紹介を書くつもりなのでいずれ分かる事ですが、いつか出て来たテツカブリとは別個体です。あれが進化したわけではないですよ。白黒は専用技が格好良いのと、炎と鋼の複合タイプということでヒードランは結構好きなんですけど、巷ではゴキブロスと言われているらしいですね。いや、図鑑の説明とか見た目とか、そう言われても仕方ないとこもありますけど、ゴキブロスはないでしょう。しかもアルタイル・シリウス、ベガで出て来ましたしね、本物のゴキブロス。あれってどっちが先なんでしょう。ともあれイリゼ戦もいよいよ大詰め、それぞれのエースが出揃いました。いよいよ次回は親子対決、決着です。それではお楽しみに。