二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 487章 世代 ( No.710 )
- 日時: 2013/02/23 08:02
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: u.mhi.ZN)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「勝った……?」
ぽつりと、イリスは呟く。
目の前には、倒れそうになりながらも体を支えているダイケンキ。そのずっと先には、伏せた姿勢で目を閉じているヒードラン。
誰がどう見てもダイケンキの勝利だが、イリスにはその事実が呑み込めない。しかし、少しずつ、それを受け入れていく。
「勝ったのか、僕が、父さんに勝ったのか……ダイケンキ!」
ダイケンキも、いつもの貫禄のある表情ではなく、いつもよりも柔和な、優しげのある笑みでイリスに応える。
「……負けちまった。悪ぃ、ヒードラン。お前を負かしちまったのもそうだが、負けても俺、全然悔しくねぇわ」
イリゼはヒードランをボールに戻さず、歩み寄り、しゃがみ込んでヒードランに寄り添う。
「自分のせがれに超えられるっていうのも、存外悪くねぇ。ヒードラン、お前には血の繋がりもなにもねぇが、お前と激闘を繰り広げた奴は、れっきとしたお前の後継者だ。そいつに負かされるっつーのは、どういう気分なんだ?」
イリゼの言葉に、ヒードランは低く唸り声を上げる。
「ははっ、相容れねぇってか。やっぱ悔しいか。そうだよな、だったらリベンジしようぜ。この戦いが終わった後にでもな」
そう言ってイリゼはヒードランをボールに戻し、イリスの方へと向き直る。
「イリス」
「父さん……」
イリスもダイケンキをボールに戻し、自分よりもずっと背の低い父親に目線を向けた。
「約束だ。教えてやるよ、英雄っつーのがどういうもんかを、その真相をな」
「英雄の、真相……」
そして、イリゼは語り始めた。彼の言う、英雄の真相を——
さて、教えてやるとは言ったものの、どこから話せばいいのやら……そうだな。まずは英雄がどういう存在かを整理するか。
お前も知っての通り、大昔、イッシュでは争いがあった。その代表格が、初代英雄だ。この英雄は双子で、もともと一体だったポケモンを、レシラムとゼクロムというポケモンに分け、それぞれ従えた。兄は真実を、弟は理想を求め、戦い合ったんだ。
その後、二人は戦いを収めたが、その子孫が再び争ったせいで、レシラムとゼクロムは怒り、イッシュ全土を焦土に変えた……と、いうのがイッシュで伝えられている神話だな。ここまではいいか?
おう、いい返事だな。つまりだ、英雄には子孫が存在するんだが、実はこの子孫というのは血統ではなく、素質みてぇなもんのことを表しているんだ。
あ? どういう意味かって? それを今から説明すんだよ、ちっと待てよ。
英雄には選ばれる条件みてぇなものがあるんだが、それが英雄たる素質ってわけだ。この素質さえあれば英雄になることができるが、そんな奴はそういねぇ。
だが、一定周期ごとに『英雄の素質』を持つ人間が生まれてくることは確かだ。つまり、いつの時代も、英雄になれる人間は必ず存在していたんだ。お前も、その周期に合致したから、英雄になれた。
ん? いや、当然ながら周期だけで英雄になれるわけがねぇよ。お前の場合は、稀有なパターンだが血統が関係してんのさ。
そう、察しがいいな。俺が前世代の真実の英雄だよ。つまりお前は、俺の後継者ってわけだ。
ちなみに、理想の英雄はロキだ。笑っちまうだろ? あいつのどこが英雄なんだって言いたくなるよな。それでも俺とあいつは英雄だったんだ。
だがな、俺はお前みてぇに悪の組織とバトったことなんざねぇぜ? 普通にイッシュを旅してたさ。その途中でお前のかあさんと出会ったんだが……まぁ、その話は置いておくか。
えーっと、俺がなにを言いたいかっつーとだな、英雄は確かにいつの時代でも存在していたが、必ず英雄として活動していたわけじゃねぇっつーこった。つーかここまで大々的に英雄として戦ってんのはお前らくらいなもんだろ。
今までの話をまとめると、一定周期で『英雄の素質』を持つ人間が生まれることで、英雄という存在はいつの時代でも存在している。しかしその英雄たちが、英雄として戦ってきたかというとそうではない。火のない所に煙は立たぬっつーが、火の必要ない所には火気も必要ねぇんだよ。
俺は自分が英雄だと知れたのは、俺の親友……ロキと繋がりがあったからだ。ま、親友っつーか、幼馴染、いっそ悪友と言った方がいいかもな。俺とあいつはヤマジで育ったんだ。あ? 言ってなかったか? 俺はヤマジタウン出身だぜ?
それはともかく、以上が俺の知る英雄のシステムだ。俺は前世代の英雄で、お前は俺の息子だったからこそ、今世代の真実の英雄になりえたんだ。つっても、元々素質があったんだろうがな。特にあのNって奴は、ヤバいぜ。一歩間違えれば破滅寸前の理想を持ってやがる。通りでロキのせがれが選ばれないわけだぜ。ま、その辺はお前が矯正したんだろうがな。よくやったぜ。
とりあえず、俺の話はこんなもんだ。これが、英雄選別のシステムの全容だぜ。
イリゼの話を聞き終えたものの、イリスはいまだ納得しかねるものがあった。
「うん……父さんが前世代の真実の英雄だとか、英雄はどの時代にもいたんだとか、僕が英雄になれたわけとか、その辺はよく分かったけどさ……じゃあ、父さんは今までなにをしていたの?」
イリスにとってはそちらの方が重要だった。何年も家を空け、姿をくらませていた父。それほど事態の真実に近づいておきながら、今まで音沙汰がなかったのもおかしい。
そんなイリスに対し、イリゼは
「そうだな……いい機会だ。それも、今から話してやるか。俺だけじゃねぇ。俺やロキたちのことも……俺たちの、過去の話をな」
今回はバトルのない回です。そんでもって、かなり短いです。とりあえず英雄のシステムが判明、ついでにイリゼとロキについても判明ですが、ううむ、やっぱりバトルがないと上手く書けている気がしませんね。特に今幕はバトルが少なめになる予定ですので、これは由々しき事態です。では次回も恐らくバトルはないでしょう。次回語られる、イリゼやロキ、そしてもう一人、重要人物の過去とはなにか。お楽しみに。