二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 488章 真相 ( No.711 )
- 日時: 2013/02/23 08:05
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: u.mhi.ZN)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
過去というと、今からどれくらい時をさかのぼるのかな。ボクぐらいの歳になると、その辺の感覚がすれちゃってね。え? そんなのはボクぐらいなものだって? ははっ、ザキくんは厳しいねぇ。
まあともあれ、ボクとイリゼの昔話さ。でも、この物語にはもう一人の登場人物が出て来るんだよ。それはきみたちもよく知っている女性さ、当時は女の子だけどね……うん、そうだ。きみたちの母親で、僕の最愛の人、ユキちゃんだ。
ボクとイリゼはヤマジ出身だったけど、彼女はセッカの出身だったんだ。だけど彼女は両親の仕事の関係で、たびたびヤマジに足を運んでいたよ。その時、ボクらと彼女は知り合ったんだ。
ボクらの少年時代を語ってもいいけど、今はさして重要でもないから割愛しよう。
実は、何を隠そうボクらが『英雄の素質』を持つことに気付いたのは、ユキちゃんのお陰なんだ。彼女の家系は代々預言者でね。その力を持って、ボクらの『英雄の素質』を見抜いたんだ。
とはいえさっきも言ったように、ボクらは『英雄の素質』があったところで、特別なにをしたわけでもない。普通に旅をしていたさ。
でもある時、ちょうどミキちゃんが生まれたぐらいかな? そのくらいの時に、ユキちゃんは新しいことを予言したんだ。
ユキちゃん曰く、予言は感覚として言い渡されるらしいから、詳しい事は分からないみたいだったけど、近いうちにイッシュに戦争が起こると、彼女は予言したのさ。
うん、そう。今まさに、プラズマ団と戦っているよね。たぶんそのことだ。
ボクらはその戦いを止めようとした。未然に防ごうとした。手始めにボクらは、ライトストーンとダークストーンを隠したんだ。
でもね、聞いてくれよ。ボクはちゃんとリュウラセンの塔の最上階に安置したのに、イリゼときたら、リバースマウンテンの溶岩の中に投げ捨てたんだよ。
あの時はボクでも怒ったね。もしストーンが壊れて、レシラムが死んだらどうするんだって。
でも彼は格好良いね。その時なんて言ったと思う? 「戦の種になるくらいならレシラムも死んで本望だろうぜ。それにもし本当にレシラムが死んだのなら、俺が生涯をかけて償ってやる」だよ。いやはや、彼には恐れ入るよ。
ま、そんな彼でも、後でシッポウ博物館に展示されるとは微塵も思わなかったみたいだけど。
それからボクらは戦の種になりそうなことを片っ端から消していった。それは、ボクらの旅路を消すようなものだったよ。
それでも戦いは起こってしまったけどね。やれやれ、骨折り損のくたびれ儲けとはこのことだよ。でも、保険は役に立ったみたいだけどね。
なんのことかって? 今から説明するよ。
ボクは正直、この戦いを未然に防ぐなんて出来るとは思っていなかった。ユキちゃんの予言によると、相当大きな戦みたいだったからね。ボクらがちまちま小細工したところで、どうこうできるものとは思っていなかった。
ボクらの次の世代が戦うことは避けられないと、ボクは思っていたんだよ。次の世代、つまり、ミキちゃんやザキくん、そしてイリスくんなんかだ。
イリスくんはイリゼに任せて、ボクはザキくんとミキちゃんを、PDOに入れようとした。ユキちゃんには反対されたけど、プラズマ団が本格的に動き出す前に、プラズマ団を撲滅する組織で活動し、プラズマ団と関わることはきみたちにとってプラスになると考えたんだ。
特にミキちゃん、きみをイリスくんと一緒に行動させたのは正解だった。英雄に最も近い者ということで、きみの力の伸びは半端じゃない。正確には、素質の伸び、かな?
あまりまとまってなくてゴメンね。ボクはお喋りだけど、要領よく話すのが苦手でね。
え? イリゼはなにをしていたのかって? 彼もボクと大差ないよ。というか、ボクがお願いしたんだ。ユキちゃんを一緒に探してくれってね。彼もちょうど、イッシュから出ていく用があったみたいだし。
まあ、彼の場合は出ていく用というか、イッシュから出ることそのものに意義があったんだけどね。ユキちゃん曰く、イリゼは英雄としての影響が大きいらしいよ。それはイリスくんも同じだね。だからイリゼは、幼いうちからイリスくんに影響を及ぼすと、今後に支障をきたすかもしれないって言って、自らイッシュを出て行ったんだ。いずれ戻ってくる時に、息子の成長を確かめるためにね。
そうそう、言い忘れていたよ。ユキちゃんの所在についてだ。
って、おおぅ!? そんなにがっつかないでくれよ。ボクは今から期待外れのことを言うんだから。
はっきり言って、ボクはユキちゃんの所在を知らない。今まで姿をくらませていたのは、彼女を探すためなんだが、どのに言っちゃったんだろうね。
でも、彼女は生きてるよ。なにせあのプラズマ団の襲撃も、彼女は予言していたんだから。彼女は元々どこかに消えるつもりだったみたいだけど、きみたちがいたからいまいち踏み切れなかったんだろうね。
変な言い方だけど、絶好のタイミングでプラズマ団が襲ってきたお陰で、ユキちゃんはプラズマ団の襲撃という隠れみのを使い、姿をくらませた。彼女がどんな意図があってそんなことをしたのかはボクにも分からないけど、それでも彼女は生きている。
だから安心してよ。きみたちの行いは決して無駄じゃない。彼女を探す努力は、いずれ報われるんだ。いつか、家族四人で暮らす可能性も、そんな理想も、存在するんだよ。
ロキの話を終え、ミキとザキはしばし沈黙する。その沈黙を最初に破ったのは、ミキだった。
「お母さんは……生きてる……」
「うん、そのはずだよ。だから泣かないでおくれ。きみは昔からそうだったねえ。小さい時は本当に泣き虫だったよ」
「俺が泣かしてたんだけどな」
ロキに横入りするように、ザキは言葉を挟む。
「ザキくんは、なにもないのかい? ユキちゃんについて」
「ねぇな。母さんが死んでいると思って探す息子がいるかってんだ。言っとくが、俺は親の骨なんざ死んでも拾わねぇぞ。また母さんと、四人で暮らすんだからな」
そう言うとザキは立ち上がった。そして、
「だから、さっさとプラズマ団をぶっ倒す。そのためにももっと強くならなくちゃならねぇ。親父、これで特訓が終わったと思うなよ」
「勿論だよ。ほら、ミキちゃんも」
「……うん」
三人はみな立ち上がると、それぞれモンスターボールを手に取る。
母親を見つける。その一つの思いが、ミキとザキの原動力だった——
「以上だ」
イリゼはそう言って話を締め括る。
「はっきり言って、俺はなにをしていたと言われてこうしていたと言えるほど、なにかをしていたわけじゃねぇ。とりあえず、イッシュから離れることが出来ればなんでもよかったんだ。ま、その過程で色々あったけどな」
「……すべては僕のため、ってこと?」
「まぁな」
「…………」
両者の間で沈黙が起こる。
しばし経つと、イリゼが歩を進める。
「んじゃ、行くか」
「え? 行くって、どこに?」
唐突なイリゼの言葉にイリスがそう返すと、イリゼは、
「おいおい、どこにはないだろ。お前の目標は、俺を倒すことじゃないだろ。俺なんざただの通過点だ。お前が乗り越えなきゃいけないのは、ユキの予言したこの戦いだ。そしてこの戦いを乗り切るためには、今以上の力が必要だ。お前も、俺もな」
つまり、とイリゼは続け、
「修業だ。俺が今まで経験し、身に付けた事をすべて叩き込んでやる」
と、言い放った。
「ま、もっとも俺の特訓についてこれる根性があるならの話だがな。言っとくが、俺は見込みのない奴は切り捨てるぜ」
「……上等。僕はもう父さんを超えたんだ。修業くらい余裕さ」
「言ったな。途中でへばんなよ?」
そして二人は肩を並べ、リバースマウンテンから去っていく。新旧二人の英雄が行く先を知る者は、誰もいない——
やっと終わった……とりあえず、これで十六幕の第一節が終了、第二節に移行します。今回はミキとザキの母親の名前が明らかになりました。こうしてみると、男二人は即死呪文や神様みたいな名前なのに、女二人は普通の和名ですね。全員最後にキが付く二文字の名前ということにしたら、いつの間にやらこんなことに。ともあれ次回、第二節からはプラズマ団にスポットを当てていくつもりです。たぶん、六節くらいまで続くと思います。それでは次回、第二節 苦難。最初は氷霧隊からです。お楽しみに。