二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 490章 詮索 ( No.719 )
- 日時: 2013/03/04 20:54
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: u.mhi.ZN)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「やはり、ダメね……」
サーシャはプラズマ団の誇る資料に丸一日こもって7Pのデータを調べ尽くしたが、来歴や過去などは一切伏せられていた。フォレスのデータだけは何故か乗っていたが、どうでもよかったので無視した。
「となると、レイ様に直接聞くのが最も手っ取り早いですが……」
その方法は出来れば取りたくない。いくらフォレスが言ったことでも、それが嘘だとはサーシャには思えない。レイの過去は相当壮絶なもので、それを本人に直接聞くなど、正気の沙汰ではないだろう。
「なら、他に事情を知っている人に聞いてみましょうか」
サーシャは立ち上がり、資料室を後にした。向かう先は自室だ。
現時刻は夜中の十二時を回っている。とりあえず今日はもう寝て、明日から本格的に動くことにする。
翌日。
最初に向かったのは聖電隊の居住区域。内装は煌びやかかつ豪奢で、床には赤いカーペットが、天井には輝くシャンデリアが、他にも格調高そうな調度品が見て取れる。
これらの調度品はを用意したのはサーシャの目当ての人物、エレクトロだ。
「7Pを仕切るほどの方なら、レイ様の過去だって知っているはず」
という思惑から目を付けたのだが、これがなかなか見つからない。
エレクトロは見た目通り、直属部下クラス以上のプラズマ団が住まう区域の家事全般を担当している。そのため、涼しい顔をしていてもかなり忙しい。だから見つからないのも道理なのだが、
「厨房も廊下も隅々まで探したというのに、まったく見つからないとは……本当にどこにいったのでしょう」
こうなってくると、本人ではなく部下に場所を聞いた方が良いような気がしてくる。
と思った矢先、聖電隊に属するエレクトロ直属の部下。今日も今日にて真っ黒な服装に身を包む青年、ソンブラを見つけた。
「すいません、ちょっとよろしいでしょうか」
早速、サーシャは声をかける。
「ん? 君は確か、レイ様のとこの……えーっと」
「サーシャです。少し聞きたいことがあるのですが、よろしいでしょうか。本当に、少しだけですので」
「まあ、別に構わないけど……」
若干、面倒だと言いたげなオーラが見えるが、あえて無視する。サーシャは率直に、自分はエレクトロを探していて、エレクトロの居場所を聞いた。勿論、探している理由は伏せるが。
するとソンブラは、
「ああ、エレクトロ様なら広間にいるよ。けど」
「けど?」
「僕はついさっき呼び出されたんだよ、エレクトロ様に。大事な話があるとかで。なんだか、いつもと雰囲気が少し違ってた……」
「それは……そうですか」
あの重鎮エレクトロが大事な話ということは、相当なものなのだろう。サーシャはエレクトロの部下ではない、そうでないにしても、邪魔することは出来ない。
「分かりました、ありがとうございます。では、私はこれで」
とりあえず、エレクトロに話を聞くのは後回しにすることにした。
ソンブラと別れ、サーシャは次なる目的地へと足を伸ばす。
そして、サーシャが次に向かったのは、焦炎隊の居住区。ここは一室を除けばすべて和風のデザインで、床は板張り、扉も襖や障子となっている。
「相も変わらず、ここは土足で入るのに抵抗がありますね……」
と言いつつ、サーシャは土足で踏み入った。
次の目当ては察しの通りフレイなのだが、彼女はプラズマ団の基地の中を無駄に動き回るので、なかなか捕まらないのだ。
なのでまずフレイの部下から居場所を聞くことにした。その部下とは、
「失礼します」
「……また珍しい客人がきたものだな。拙者に何の用だ?」
襖を開いた先には、時代錯誤な忍装束を着た長身の男、ハンゾウが座禅を組んでいた。
「とりあえず座れ。茶くらいは出すぞ」
「結構です。用件もすぐに済みますので」
サーシャはソンブラの時と同じように、フレイの居場所を聞いたのだが、ハンゾウは首を横に振った。
「悪いが、拙者はフレイ殿がどこにいるのかまでは把握していない。拙者はフレイ殿の護衛が主な任務ではあるが、基地の中ではそれも意味はなかろう。なによりフレイ殿は、己の世話を他の方に任せている。拙者の出る幕ではないのだ」
「……その、他の方とは?」
「フォレス殿だ」
途端、サーシャは露骨に不機嫌そうな顔をする。
「貴方は……それでもいいですか? あのフォレス様ですよ? 何をしでかすか分かりませんし、むしろ心配では?」
「いや、心配無用だ。フォレス殿がフレイ殿に手をあげることはありえぬ。それに、フレイ殿はフォレス殿に世話を焼かれたがっている節がある。ならば拙者たちは、フレイ殿の意向に従うまで」
氷霧隊と焦炎隊は、どちらもトップのカリスマ性で動いているが、部下の意志というものは少し違うようだ。
氷霧隊はレイに対する憧憬。憧れのようなものがあり、そこには大なり小なり愛情に近い感情がある。
しかし焦炎隊は忠義。フレイの行いこそが絶対であり、彼女の行為こそが従うべき指針である。
上司のためならば単独行動にも出るのが氷霧隊、上司の自由を貫き従事するのが焦炎隊、ということである。
「……そうですか。では、お邪魔しました」
ハンゾウには色々言いたいことのあるサーシャではあったが、それはまた今度。ひとまず部屋を出て、焦炎隊の居住区域を後にする。
次にどうすればいいのかと悩みながら長い時間歩き回っていると、ふとあるものを見つけた。
「さて、どうしましょう……エレクトロ様もフレイ様もいないとなると……あ」
サーシャは足を止める。その視線の先にいるのは、今まさに自分が探している人物、フレイがいた。
だが、それだけではなく、
「レイ様……」
も、いたのだった。
レイはフレイを抱きかかえ、誰かと言い合っているのか、一方的に言われているのか、とにかく取り込み中のようであった。
「確かあれは、フォレス様のところの……ティンさん、でしたか」
正直サーシャは彼女の思考回路が理解できない。あのフォレスのことを好いている理由がまったく分からない。その点でも色々言いたいことがあるのだが、今はレイもいる。
三人の用件が終われば、フレイから話を聞こうと思っていたサーシャだが、なんとティンは二人をどこかへと引っ張って連れて行ってしまう。
「ちょっ……!」
せっかくのチャンスを潰されてしまい、動揺するサーシャ。追いかけようとするが、その時には既に、三人とも姿を消してしまっていた。
「……どうしましょう。他にレイ様の過去を知っている人なんて……あ」
ふとサーシャは思い出す。昨日、自分の要求を突っぱねた、憎っきフォレスの言葉を。
『確かに知ってるが、俺もアシドから聞いた話だしな……』
「アシド様……!」
フォレスはそう言っていた。プラズマ団きっての嫌われ者で異端者。7Pアシド、性悪のマッドサイエンティスト。
確かに彼なら、彼ほどの情報収集力があれば、レイの過去を知っていても不思議はない。しかし、あの捻くれ者がそう簡単に教えてくれるものだろうか。もし教えてくれるにしても、相当な代償を支払わなくてはないないのではないだろうか。
そんな悪い想像ばかりがサーシャの脳によぎるが、
「……ええい、ままよ。行くしかありませんか」
サーシャは歩みを進める。次なる行き先は、プラズマ団基地唯一の研究施設。毒邪隊の専用区域、プラズマ団研究実験開発部三代目室長、アシドの構えるラボ。
プラズマ団で最も訪れたくない場所と言われる魔窟へと、踏み入る——
うーむ……やっぱりバトルがないと書く楽しみが半減ですね。ともあれ、第二節その二。サーシャがせわしなく動き回っております。ちなみに最後に触れた研究実験開発部の二代目室長は、前作で一番に最弱の称号を得たお爺さんです。だったら初代は誰かというと……意外な人物であるとだけは言っておきます。まあ、覚えているかは甚だ疑問ですが。それにしても、この小説も大分進みましたね。この調子で行けば、三月末までに完結できるのでは? ……いや流石に無理か。でももうちょっとで終わりそうなんですよね。そしたらどうしよう、三作目を書こうかな……でも白黒は高校一年生時で既に一部の科目の成績が危ないので、続けられる自信があまりなかったり。部活もありますしね……。とりあえずそれは置いておくとして、次回、やっとバトルが書けそうな感じです。相手は誰にしようかな。それでは次回もお楽しみに。