二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 32章 救命 ( No.72 )
日時: 2011/08/03 19:24
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

海に沈んでいくイリスは、一人思う。レイカを抱えているので一人ではないが、思うのは一人。
(最初は息苦しかったけど、なんかだんだんと気持ちよくなってきたな……。よくあるけど、こういうのが死の前兆なのかね……? だとすれば、死というものは、案外すんなりと受け入れられるものなのかな……?)
イリスは薄れゆき、遠のいていき、沈んでいき、鎮められていく意識の中で、ふと思う。
(僕が死んだら、皆悲しむだろうな……。特にベルやミキちゃんは……。もしかしたらチェレンが一番大泣きするかも……)
死ぬ間際だというのに、随分と悠長な事を考えているな、と思わなくもないが。意外にもこれが普通の反応なのかもしれない。
(ポケモン達はどうなるかな……。ブイゼル以外はポケモンセンターに置いて来たから、Nあたりが世話をしてくれるかな……?)
そこでイリスは、ふと思い出す。
(そういえば僕、プラズマ団に沈められたんだっけ……。アシドだったかな……?)
そして自分の使命も思い出す。
(僕はプラズマ団を倒さなくちゃいけない。でも、こんな状態じゃ何もできないよな……)
イリスは自分の不甲斐なさを恥じるが、それももう手遅れ。イリスの意識は、いよいよ闇に沈んでいく。
(これが死か……。なんだか、闇ばっかりだと思ってたけど、そうでもないようだな……。チェレン、ベル、ミキちゃん、母さん、皆……)
そしてイリスは、闇に沈み込んでいく中、見覚えのない者を発見した。
(……この女の子、誰……?)
そしてその時、イリスが沈む闇に、一筋の光が差し込んだ。



ブイゼルはダンカンスのロケット頭突き、原始の息吹、ダイビングの三連コンボを喰らい、いよいよ生命的に危機に瀕してきた。
「ドサーモン、龍の波動!」
「ジバコイル、磁力線!」
そしてNとアシドはまだ戦っている。状況はNは劣勢で、アシドが優勢だ。
「おお? 向こうもいい具合に死にかけてるな。流石に見てて可哀想だから、ダンカンス、もう決めてやれ。ロケット頭突き!」
ダンカンスは力を溜め、ロケットの如き勢いでブイゼルに突撃する。
ブイゼルは終わったと直感した。これを受ければ、自分は戦闘どころか生命活動が不能になるだろう。
だが最後に思うのは自分の事ではなく、主人の事だった。
助けられなかったと、救えなかったと。
そしてブイゼルは——奇跡を起こす。

ブイゼルの体が、光り輝いた。

「な……!? これは……!」
「進化……!」
ブイゼルは光の中で姿を変える。
まず体格が発達し、人間並みの大きさとなる。それに伴って両腕のヒレもやや伸び、そして首周りの浮き袋も大きくなった。
海イタチポケモン、フローゼル。ブイゼルの進化系だ。
「くっ、こんな危機的状況で進化するとか、悪運が強い奴め!……だが、その程度じゃ僕のダンカンスを止めることなどできない!」
ダンカンスは今まさにフローゼルに迫る。そして
フローゼルは海に潜った。
「ああ? 避けんのかよ、腰抜けが……」
アシドはそう言うが、実際は違う。Nはシンオウ地方でフローゼルを見たことがあり、その特徴や性質などを知っている。

「フローゼルは高い泳力と浮き袋で人命を救助するポケモン……。イリスを助けに行ったのか……」

Nの言った事は、アシドには届いておらず、アシドは次の行動を起こそうとする。
「面倒だな。ダンカンスもやられるが、まあいい。まとめて感電させて、あぶりだすか。ジバコイル、電磁砲!」
磁場キルは電磁力を凝縮した球体を撃ち出す——
「ドサーモン、龍の波動!」
——前に龍の波動が直撃し、その攻撃は失敗に終わる。
「邪魔はさせないよ!大地の怒り!」
「ちっ、お前が邪魔なんだよ!磁力線!」
Nはフローゼルがイリス達を救助するまでの時間稼ぎに徹することにした。それが、今自分にできる精一杯の事だから。



闇に沈むイリスの所へと、一筋の光が差し込む。
それは、その光はオレンジ色のイタチのような姿だった。
(ブイゼル……? いや、違う。もっと、強くて優しげな……。…………。)
そこで、イリスの意識は途切れる。
光——フローゼルはイリスとレイカを掴むと、浮き袋を一気に膨らませ、二又の尻尾を高速で回転させて浮上する。
「…………。……ん……? ……あれ?」
イリスは浮上すると、自分が生きている事に気付く。
「僕死んだはずじゃ……。……ブイゼル? ……いや、違う」
イリスは自分を抱えているポケモンを図鑑で調べる。余談だが、この図鑑は耐水性で防水性なので海水に浸ろうが壊れる事はない。
「フローゼル……。……!ブイゼル、進化したのか!」
ブイゼル、否、フローゼルは力強く頷く。
「イリス君、大丈夫か!」
聞き覚えのある声が聞こえ、イリスは振り向く。
するとそこには、ミクリがいた。ミクリはオールガに乗っている。
「イリス君、乗ってくれ。ここは危険だ」
「ミクリさん……。……この人を頼みます」
イリスはレイカをオールガに乗せて言う。
「君はどうするんだ?」
「戦います」
イリスがそう言うと、後方より何かが浮上した。
ダンカンスだ。
「……分かった。無茶はするな」
ミクリはそう言い残し、オールガとレイカとともに浜へと向かっていく。
「さて、フローゼル、行くぞ。僕も君に乗って戦う。でも、僕の事は気にせず戦え」
イリスとフローゼル——トレーナーとポケモンは運命共同体。死ぬも生きるも一緒である。
そしてイリスとフローゼルは、生きるためにダンカンスと戦う。



今回はブイゼルが進化しました。それと、今回の執筆はなんだかおかしなテンションで書いてるな……と書き終わって気付きました。まあ、フローゼルは水タイプでは一位二位を争うほどに好きなポケモンですから、こんなのもたまにはいいでしょう。では、次回はイリスとフローゼルがダンカンスと戦います。お楽しみに。