二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 492章 悲愴 ( No.723 )
日時: 2013/02/28 15:53
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: u.mhi.ZN)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「グルック、マジカルリーフ!」
「オリ、熱風!」
 グルック(サーナイト)が飛ばす念力で操られた葉っぱは、オリ(オリバー)の放った熱風によってすべて焼け落ちてしまう。
「サイコキネシス!」
 グルックはすぐさま強力な念力を発してオリの動きを止め、地面に叩きつける。
「オリ、ローテーションです! ランと交代してください! ラン、ピッカリ球!」
 オリはすぐさまランと交代し。前衛として出て来たランは、光る球体をフラッシュさせ、グルックの目をくらました。
「ですが、目が見えなくともグルックにはこの技があります。マジカルリーフ!」
 グルックは念力を帯びた葉っぱを無数に飛ばす。葉っぱはグルックの意志に従い、すべてランへと向かった。
「ハイパーボイス!」
 だが葉っぱは、ランが吹く大音量のトランペットの音ですべて吹き飛んだ。
「続けてメガトンキックです!」
 ランはグルックとの距離を詰めると鋭いキックを繰り出し、グルックを蹴り飛ばす。
「まだまだ行きます、ピッカリ球!」
「っ、グルック交代! ヴォーナ!」
 ランが光る球体を投げた瞬間、グルックとヴォーナ(ラグラージ)は立ち位置を入れ替えた。
 しかしヴォーナは眠り状態。ピッカリ球こそ無効化したが、今は動けない状態だ。
「ラン、サイコパンチです!」
 ランはヴォーナが眠っているのをいいことに、念力を纏った拳でヴォーナを何度も殴りつける。
「メガトンキック!」
 猛烈なラッシュの締めに鋭いキックが放たれ、ヴォーナの体がぐらつく。今の一撃はなかなかのダメージだっただろうが、お陰でヴォーナも目が覚めたようだ。
「よし。ヴォーナ、瓦割りよ!」
 ヴォーナは拳を握り、攻め疲れたのか、息を荒げているランを殴り飛ばした。同時にキー(キーボン)が張っていたリフレクターと光りの壁も砕け散る。
「ランはもう疲れてしまいましか……では交代です! キー、頼みました。ハイパーボイス!」
 キーは攻め疲れたランと交代し、爆音を放ってヴォーナを攻撃。
「くっ、ヴォーナ、波乗り!」
 爆音を耐え切ると、ヴォーナは大波に乗ってキーを押し流す。さらに、
「怪力!」
 押し流されたキーを大きな手で掴み、地面に叩きつけた。瓦割りで壁が破壊されてしまったので、この連続攻撃は堪えるだろう。
「催眠波動です!」
「その手には乗りません。ヴォーナ、グルックと交代」
 ヴォーナはグルックとローテーションし、位置を入れ替える。グルックは催眠波動の直撃を受けたが、効果はいまひとつ。眠り状態にもならなかった。
「願い事!」
 グルックは合掌して何かを願う。すると、グルックから天井に向かって光が飛び出し、やがて消えた。
「続いてサイコキネシス!」
「キー、光の壁!」
 グルックは念波を放って攻撃するが、キーの光の壁に阻まれ、威力は半減してしまう。
「オリ、キーと交代です! バグノイズ!」
 オリはサッとキーと交代し、耳をつんざく騒音を放つ。グルックには効果抜群だ。
「ハイパーボイス!」
 続けてバイオリンを弾き、鼓膜を破るような爆音を発するが、
「それ、頂きます。グルック、リベルラとチェンジです!」
 グルックは素早くリベルラと入れ替わり、リベルラがハイパーボイスを受ける。
 しかしハイパーボイスのあまりの音量で、リベルラは目を覚ました。
「上手く行きましたか。リベルラ、騙し討ち!」
「……オリ、もう一度ハイパーボイス!」
 オリは爆音を発するが、リベルラはそれを突っ切ってオリに突撃。小さな体躯を吹っ飛ばした。
「ドラゴンクロー!」
「ローテーションです、キー! リフレクター!」
 追撃をかけるリベルラに、オリはキーとローテーション。キーはリフレクターを張ってドラゴンクローのダメージを軽減する。そして、
「催眠波動です!」
 流れるような動きでキーボードを叩き、眠気を誘う波動をリベルラにぶつける。その波動を受け、リベルラは目を閉じ、地面へと落ちてしまった。
「しまった……リベルラ!」
 しかしリベルラは起きない。さらに、
「キー、ランと交代です! ランはサイコパンチ!」
 ランはキーと立ち位置を入れ替え、念力を纏った拳でリベルラを殴りつける。疲労はもう回復したようだ。
「メガトンキック!」
 さらに強烈な蹴りを浴びせ、リベルラを宙へと打ち上げる。リベルラの体力ももう僅かだろうというところで、リベルラに一筋の光が差し込んだ。
「願い事……!」
 そう、この光はグルックが呼び込んだ願いの光。それにより、リベルラは体力を回復したのだが、
「連続でサイコパンチです!」
 ランの怒涛のラッシュがリベルラに叩き込まれ、回復した体力はすぐさま削られてしまう。
 いくら体力を回復したところで、眠っていては話にならない。何度も拳が叩き込まれ、遂にリベルラは目を覚ますことなく戦闘不能となってしまった。
「……戻って、リベルラ。次はヴォーナ、貴女が行きなさい」
 リベルラをボールに戻し、次に出て来たのはヴォーナだ。
「ヴォーナ、瓦割り!」
「かわしてメガトンキックです!」
 ヴォーナは力強い拳を突き出すが、サッと拳を避け、ランの強烈な蹴りがヴォーナに叩き込まれる。
「このまま行きましょう、ラン。サイコパンチ!」
 さらに念力を纏った拳もヴォーナの顔面に入り、ヴォーナはそのまま崩れ落ちる。こちらも戦闘不能だ。
「ヴォーナまで……後はグルック、貴女だけよ」
 ヴォーナを戻しつつ、グルックに後を任せる。が、シャンソンはまだ三体残っているので、勝ち目は薄い。
「サイコキネシス!」
「ピッカリ球!」
 グルックは素早く念力を飛ばすが、それより早くピッカリ球が炸裂し、グルックの視界を奪う。
「交代です、ラン! オリ、バグノイズ!」
 さらに攻め疲れたランとオリが交代し、オリの騒音が放たれる。
「くっ……今度こそ、サイコキネシス!」
 グルックはまだ視界が不明瞭ながらも念波を発してオリを吹っ飛ばす。しかし、

「オリ、ハイパーボイス!」

 カウンターでオリの爆音が放たれ、グルックも吹き飛ばされ、壁に叩き付けられる。オリは急所に当たったのか、今のサイコキネシスで戦闘不能になってしまったが、それはグルックも同じだった。
「グルック……!」
 両社戦闘不能、しかしシャンソンにはまだ二体のポケモンがいる。なのでこのバトルは、シャンソンの勝利だった。



 敗北こそしたが、アシドの提示した条件はバトルをすることであり、勝敗は関係ない。なのでサーシャはバトルが終わってすぐアシドのところへ向かった。
「おいおい、そんな焦んなって。急がなくとも、レイのデータだっけ? ならやるからよ。ほら、P・ターミナル出せ」
 P・ターミナルとは、7Pやゲーチスを除くプラズマ団の上層部に配布されている携帯端末だ。アシドが遊び半分の暇潰しで作った超多機能端末なのだが、機能が多すぎて持て余している感が否めない代物である。しかしこれを見るたびに、アシドは天才なのだと思い知らされるのだから腹が立つ。
 そんな苛立ちを押さえながらサーシャは端末をアシドに差し出した。アシドはそれを受け取ると、よく分からないコードに接続し、タッチパネルを操作する。数十秒後、アシドはコードを外し、端末をサーシャに返した。
「ほら、転送完了だ。用が済んだならとっとと出ていきな。僕の機嫌が悪くならないうちにな」
「……はい。失礼しました」
 そして、流れ流れで追い出されるように、サーシャはアシドのラボを後にした。



 なにはともあれレイのデータが手に入ったサーシャはまっすぐ自室に戻った。途中でフォレスと遭遇し、何か言っていたが、どうでもよかったので適当に返した。
 なにはともあれ、これで遂にレイの過去を知ることができる。端末を操作し、転送されたデータを起動。そこには確かに、レイの詳細な情報が記載されていた。
 そこには7Pとしての功績や持ちポケモンから、果てには身長体重血液型まで、明らかにプライバシーを無視しているようなことまで載っている。
(やっぱりレイ様スタイルいいな……)
 などと思いながら読み進めていくと、経歴の項目に辿り着いた。ここに、レイの過去が記されているはず。
 ここに来て少々躊躇うサーシャだったが、意を決し、さらに読み進めていく。すると、
「……? ……っ! !?」
 サーシャの顔が、みるみるうちに青ざめていく。まるでこの世の終わりを見たかのような、恐怖と絶望が入り混じったような、そんな表情を見せる。
「これは……こんな、酷過ぎる……! ……うっ」
 込み上げてくる吐き気と嫌悪に、サーシャは端末を落としてしまうが、今はそんな些細なことは気にならない。
 フォレスの言ったことは本当だった。いや、あれでもまだ控えめな方だ。事実は、それ以上に残酷なものだった。

『知っちまったが最後。お前がレイさんのことをどう見るか、その視点はあの人の過去を知るだけで180°変わっちまうぞ』

 フォレスのそんな言葉が、サーシャの胸中でこだまする——



とりあえず第二節、終了です。レイの過去はいまだ明かされず。まあ、相当持ち上げてますが、あまり期待しないようにしてください。では文字数がヤバめなので今回はこの辺で。次回は焦炎隊、第三節 忠義です。お楽しみに。