二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 498章 短絡 ( No.735 )
日時: 2013/03/05 23:26
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: u.mhi.ZN)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 プラズマ団の基地内を歩く二つの影——と言っても、二人の人間が歩いているわけではない。一人がもう一人に抱きかかえられている形だ。
「でさー、最近フォレス冷たくてさー。ぜーんぜんあたしに構ってくれないでやんのー」
「そうですか……」
 抱きかかえられているのは、浴衣を着た赤い総髪の少女。抱きかかえているのは、青いストレートロングヘアーの女性。
 7Pフレイ、そしてレイだ。
「時にフレイちゃん……少し気になっていたのですが」
「んー? なーにー?」
「いつもより……髪を結ぶ位置が高いような気がするのですが……」
 確かにフレイのポニーテールは、いつもより少し高い位置で括られている。
「あー、これねー。たぶんねー、ハンゾウがやったからじゃないかなー? さっき言ったみたいにさー、今日起きてもフォレスいなかったんだー。あたしは一人じゃ髪括れないしー、しょうがないからハンゾウにやってもらったのー」
「そうでしたか……」
「そーゆーレイもさー」
 フレイはグッと腕を伸ばす——が長さが足りず届かなかったので、身を乗り出してレイの肩に顎を置くような姿勢で、
「なんで髪切らないのー? 毛先が焦げたまんまで変だよー?」
 レイの髪をつまみあげる。
 レイの髪は以前のような異常な長さではなく、普通にありふれたストレートロングとなっている。本人はそうなった理由を頑なに言わず、毛先も切り揃えないまま放置しており、それはそれで異質だった。
「……たかだか髪です。放っておいても平気でしょう……」
「まーレイがそう言うならいいけどー」
 と言ってフレイはあっさり引き下がる。
 それから二人はしばらく他愛もない話を続け、廊下を歩く。すると、思いがけない人物に、呼び止められた。



「ちょっと! そこの二人!」
 ティンは迷いなく、フレイとレイの二人を呼び止めた。二人は意外そうな顔を——していなかったが、静かに足を止める。止めるのはレイだけだが。
「あなたは確か……フォレスさんのところの」
「てぃっちーだー。どしたのー?」
 てぃっちーというのは、ティンのことらしい。
 それはともかく、ティンが二人呼び止めたのには理由があるというか、どうやってフォレスとフレイを引き離すかの作戦を思いついたからだ。
 作戦というほど立派なものではないが、ティンにとっての障害はフレイだけでない。フォレスがレイを気にかけているのは流石のティンでも分かる。なのでレイの存在も、ティンにとっては邪魔になるのだ。しかしこの作戦なら、フレイだけでなくレイ諸共フォレスから引き剥がすことができる。
 そういうわけで、ティンは躊躇いなく二人に向かって叫んだ。

「私とバトルしなさい!」



 もう一度言うが、この時ティンは非常に疲れていた。精神的に追い込まれていた。その余裕なさが彼女のなけなしの思考力を低下させ、冷静な判断を奪っていったのだ。
 邪魔なものは排除すればいい、というのは短絡的な思考だ。特に相手が自分よりも格上の相手に対しては、作戦とも言えない作戦だ。
 しかしティンは過度のストレスにより精神的に疲弊していたため、7Pが自分よりも強いことを忘れている。自分よりも年下の少女と、自分と同年代の女が、自分よりも上の立場にいることを、完全に忘却していた。
 その可能性は非常に高いだろうが、仮にティンが負けるとするなら、敗因はそこになるのだろう。



 ティンはバトルを申し出ると、フレイとレイの二人を基地内のバトルフィールドへ連れてくる。
 勝負の方式は二対二のダブルバトル。使用ポケモンはフレイ&レイのペアが各一体ずつ、ティンは二体ということになった。
「それじゃあ出て来なさい! カンカーン! リザードン!」
 ティンが繰り出したのは、赤い球状の体を持ち、ヒレの付いたポケモンと、がっしりとした体つきの、翼の生えた龍のようなポケモン。
 日照りポケモン、カンカーン。と、火炎ポケモン、リザードン。ともに炎タイプで、リザードンは飛行と複合している。
「……なにゆえこのような状況になったのかは分かりませんが、まあいいでしょう……これも修行の一環だとでも思えばいいでしょう。おいでなさい……ヤミクラゲ」
「そーだねー。あたしとしちゃーいい暇潰しになりそうだしー、てぃっちーとバトんのもなかなか面白そうだしー、別にいいかなーってねー。そんじゃーノコウテイ、出番だよー」
 レイとフレイも、それぞれポケモンを繰り出した。レイは海月ポケモン、ヤミクラゲ。水・悪タイプ。フレイは土蛇ポケモン、ノコウテイ。ノーマルタイプ。
 四体のポケモンが出揃うと、フィールドには強い日差しが差し込む。カンカーンの特性、日照りだ。
「私から行くわよ! カンカーン、火炎放射! リザードン、エアスラッシュ!」
 先に動いたのはティン。カンカーンは日照りで強化された激しい火炎を放射し、リザードンは飛び上がって空気の刃を無数に飛ばす。
「……フレイちゃん、前衛は頼みました。私は、後ろから援護に回ります……」
「おっけー。そんじゃーノコウテイ、潜るだよー」
「ヤミクラゲ、吹雪です……」
 ノコウテイは地中に潜って炎と刃を回避。残ったものはヤミクラゲに襲い掛かるが、ヤミクラゲも吹雪を放って威力を減衰。ダメージを最小限に抑えた。
「だったら、カンカーン、ソーラービーム! リザードン、龍の波動!」
「させないよー」
 日照りの影響で溜めなしのソーラービームを発射しようとするカンカーンだったが、発射直後にノコウテイが地面から這い出てカンカーンを打ち上げる。
「ヤミクラゲ、悪の波動です……」
 ヤミクラゲは悪意に満ちた波動を放って龍の波動にぶつけるが、特性サンパワーで強化されたリザードンの特攻はヤミクラゲを凌駕する。龍の波動が悪の波動を撃ち破り、ヤミクラゲに直撃した。
「……吹雪です」
 しかし特防の高いヤミクラゲだ。減衰された龍の波動などものともせず、すぐさま猛吹雪を放って反撃に出る。
「やばっ……リザードン、大文字!」
 リザードンは大きく息を吸い、大の字の巨大な炎を放って吹雪を打ち消そうとするが、しかし、
「ノコウテイ、ドラゴンダイブだー」
 ノコウテイが飛び上がり、打ち上げられたカンカーン諸共リザードンに突撃。上から重圧をかけるように急降下し、二体を押し潰す。
 ノコウテイが離れると、直後には吹雪が二体を襲う。
「まだまだ行くよー。スピンテールだー」
「カンカーン、怪しい光!」
 回転しつつ尻尾を振りかざし、追撃をかけるノコウテイ。流石にこれ以上連撃を受けるのはまずいと判断したのか、カンカーンは怪しげの閃光を放ってノコウテイの動きを止めようとする。
 だがまたしてもカンカーンの攻撃は止められる。エネルギーの凝縮された球体がカンカーンを直撃したのだ。
「ヤミクラゲの、気合球です……」
 レイがそう申告した直後、ノコウテイの尻尾がカンカーンにに叩き付けられる。
「くぅ……! カンカーン、火炎放射! リザードン、大文字」
「潜るだよー」
 カンカーンとリザードンは同時に灼熱の炎を放つ。カンカーンは放射状に、リザードンは大の字に。
 しかしどちらの炎も、地面に潜ってしまったノコウテイには届かない。
「ヤミクラゲ、吹雪です……」
「それはもう見切ったわ! カンカーン、火炎放射!」
 ヤミクラゲが放つ吹雪を、カンカーンが火炎放射で相殺する。しかし、カンカーンの真下の地面が揺れ、ノコウテイが頭を出す。
「だから見切ったって言ったでしょ! カンカーン、右に移動! リザードンは龍の波動!」
 カンカーンはすぐに右へと体をずらし、ノコウテイの地中からの一撃を回避。さらにすぐさまリザードンが龍の波動を放ち、ノコウテイを吹っ飛ばした。
「おー、やーるねぇー。だったらノコウテイ、怒りの炎だよー」
 空中で態勢を立て直したノコウテイは怒り狂ったような炎を出現させる。その炎も日照りで強化されているので、視界を覆い尽くしてしまうほど大きい。
「レイー、後は頼むよー。ノコウテイ、潜るだー」
「分かりました……ヤミクラゲ、悪の波動です」
 怒りの炎を目くらましに、ノコウテイは地中へと身を潜める。ヤミクラゲも悪の波動を連続で放ち、攻撃に出た。
「当たんないわよ! カンカーン、大地の力で悪の波動を相殺! リザードンはダイヤブラスト! 炎を消し飛ばしなさい!」
 カンカーンは地面から土砂を壁のように噴射して悪の波動を防御。リザードンも煌めく白色の衝撃波で、炎を消し飛ばした。



やばい、かなり微妙な終わりになった……でも文字数の関係で、これ以上書けなさそうなんですよね。それはともかく、第四節その二、ティン対フレイ&レイのダブルバトルです。そういえば、最近は解放していない7Pのバトルを書いていないですね。いや、当然と言えば当然ですが。ともあれ、7P二人を相手にティンはどこまで善戦できるか……と書くとティンが負けることが確定しているようになってしまいますね。では次回、短いですが、たぶん第四節終了です。お楽しみに。