二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 502章 上書 ( No.743 )
- 日時: 2013/03/10 13:25
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「こんなところで何をしているのかな?」
「……っ」
ストレンジャーハウス地下一階。特訓するスペースを確保するためか、本棚がすべて寄せられ開けている中央に、二つの人影。
一つは、赤黒い髪に眼鏡をかけた、如何にも胡散臭そうな男、ロキ。
もう一つは、膨れ上がった銀色の服を着た、黒髪の男。ザンバ。その手には端末のような小さな機械と、ビデオカメラのようなものがある。
「人のバトルを覗き見るなんて、趣味がいいとは言えないよ。しかも、そんな妙なもの使ってさ」
「……残念ながら、それが仕事ですので」
それより、とザンバは返す。
「あなたは上で戦っている二人の父親ですね。名前は……ロキといいましたか」
「ははっ、こっちの情報は筒抜けかな? 別に構わないけどね。隠すつもりはさらさらないし」
「いえいえ、あなたのことは分からないことだらけです。正直、プラズマ団内ではあなたと、英雄の父親が最も厄介なのですよ。なにせ、データがない。我々、特に毒邪隊にとって、相手のデータがないのは許されざることなのです」
「ふうん、そうなんだ。それで?」
ロキが軽くそう返すと、ザンバはゆっくりとボールを持ち上げる。
「ちょうどいい機会です。ここで、あなたのデータをとらせていただきましょう」
「カミギリー、襲撃!」
「ハガネール、捨て身タックル!」
カミギリーは隙を見つけてはハガネールにちょこちょこと攻撃を仕掛けていたが、それも限界のようだ。背後に回り込んで攻撃した直後、ハガネールが身を捻ってカミギリーを吹っ飛ばし、壁に叩き付けた。
「ブーバーン、ジオインパクト!」
「ボスゴドラ、地震!」
ブーバーンも銀色のエネルギーを纏って突撃するが、ボスゴドラは地震を引き起こし、衝撃波でブーバーンを吹き飛ばす。疲弊していたカミギリーにも衝撃波が届き、二体は同時に戦闘不能。ハガネールにもダメージはあるが、防御が非常に高いからか、まだ倒れない。
「……やりにくい。戻れブーバーン」
「戻って、カミギリー」
二人はそれぞれポケモンを戻し、新たなボールを手に取る。
「次は殴って攻めるか。出て来い、エレキブル!」
「頼んだよ、カブトプス!」
ザキの二番手はエレキブル。相性は悪いが、物理技が中心の技構成なので、砂嵐の影響を受けずにボスゴドラを攻撃できる。
ミキが繰り出すのはカブトプス。こちらは逆に相手に対して相性が良く、また岩タイプでもあるので砂嵐の恩恵を受けられる。
「カブトプス、ステルスロック!」
真っ先に動いたのはカブトプスだ。しかし攻撃を繰り出さず、尖った岩を周囲にばら撒くだけだった。
「ストーンエッジ!」
続いて鋭く尖った岩を、二体に向けて連続射出。しかし効果はいまひとつなので、ほとんどダメージが通らない。
「ハガネール、ジャイロボール!」
「ボスゴドラ、諸刃の頭突き!」
ハガネールは回転しながら、ボスゴドラは凄まじい勢いでそれぞれ突撃してくる。どちらもまともに喰らえば大ダメージ必至だろう。
「ミキ、跳べ! エレキブル、地震!」
ザキは叫ぶ。ミキも言われた通りカブトプスに飛ぶよう指示する。
直後、エレキブルは地面を踏み揺らして大きな地震を引き起こす。地震は地を這う衝撃波となり、ハガネールとボスゴドラの二体を攻撃。ボスゴドラは吹っ飛ばされて戦闘不能となったが、ハガネールはまだなんとか持ちこたえている。
しかし、
「カブトプス、スプラッシュ!」
跳躍することで地震を回避したカブトプスが、鋭い鎌に水流を纏わせて落下する。鎌は水飛沫をあげながらハガネールに叩き込まれ、その一撃を受けてハガネールは地面に倒れ込む。戦闘不能だ。
「……戻れ、ハガネール」
「戻れ、ボスゴドラ……」
ツユサとウズメは、共にポケモンをボールを戻し、同時に次のポケモンを繰り出した。
「出て来い、キリキザン!」
「バーネッコ、出て来い!」
ツユサが繰り出したのは刀刃ポケモン、キリキザン。体の各所に銀色の鋭利な刃を備えた、怪人のような出で立ちのポケモンだ。刃のように鋭い表情をしている。
ウズメが繰り出すのは、根っこポケモンのバーネッコ。分類通り根っこの如き体を持っているポケモンで、顔の近くに手が生えており、意地が悪そうな顔だ。
二体のポケモンは場に出ると同時に、カブトプスの撒いた岩——ステルスロック——に襲われる。しかしあまりダメージは通っていないようだ。
「ケッ、あからさまにこっちに有利なポケモンを出してきやがったか」
とは言うものの、ザキのポケモンのほとんどは地面や岩タイプに弱いので、砂嵐を軸としたパーティーに弱いのは必然である。
「エレキブル、グランボールダ!」
エレキブルは地面から大小様々な岩石を浮かび上がらせ、それらを一斉にバーネッコへと叩き付ける。それによりバーネッコは、岩の中に閉じ込められてしまったが、
「砂嵐だ!」
ピキ、ピキと岩の塊にヒビが入り、やがて砕け散る。同時に中からバーネッコと、激しい砂嵐が飛び出した。砂嵐で内側から圧力をかけ、無理やりこじ開けたようだ。
「バーネッコ、剣の舞!」
「キリキザン、剣の舞!」
バーネッコとキリキザンは同時に剣のような鋭く激しく舞い、攻撃力を高める。
「キリキザン、辻斬り!」
「カブトプス、メタルニッパー!」
キリキザンとカブトプスは、お互いに刃をぶつけ合い、白兵戦を繰り広げている。攻撃範囲はカブトプスの方が広いが、その分技が大味になってしまい、逆にキリキザンは刃が小さいものの小回りが利く。
お互い相手の隙を突くような斬撃を何度も繰り出し、剣戟が鳴り響く。
「エレキブル、ウッドハンマー!」
「バーネッコ、かわしてウッドハンマー!」
エレキブルが樹木の力を込めた拳を振るうが、砂嵐で視界不良の中、砂に隠れたバーネッコに当てることは出来ず、逆に背後から攻撃されてしまった。
「だったら、グランボールダ!」
今度は無数の岩石を浮かべて一斉に放つが、これもすべて外れてしまう。
「ストーンエッジ!」
直後、砂嵐の中から鋭く尖った岩が飛び出し、エレキブルに突き刺さる。
「キリキザン、不意打ち!」
カブトプスとキリキザンが白兵戦を繰り広げている最中、突如キリキザンの姿が消えた。
「っ、後ろ——」
カブトプスの背後に回ったキリキザンは、鋭い一撃をカブトプスに叩き込む。さらに、
「アイアンヘッド!」
鋼鉄の頭で頭突きをかまし、カブトプスを吹っ飛ばす。
「カブトプス!」
カブトプスの吹っ飛ばされた先は砂嵐が立ち込めているので何があるのかは分からない。しかし、うっすらとカブトプスに向かっている影は、辛うじて視認できた。それは、
「バーネッコ、ウッドハンマー!」
バーネッコだ。
バーネッコは拳を握り、カブトプスを地面に叩きつける。四倍の弱点を突かれたカブトプスは、その一撃で戦闘不能となった。
「あぅ……戻って、カブトプス」
ミキはカブトプスをボールに戻し、次のボールを手に取る直前、キリキザンとバーネッコを一瞥する。
「……キリキザンとバーネッコ。なら、このポケモン。出て来て、フィニクス!」
ミキの最後のポケモンは、不死鳥ポケモン、フィニクス。鋼と草の弱点を突け、なおかつ地面技は浮遊の特性で当たらない。
「兄さん」
「任せろ。エレキブル、地震!」
二人は短く意思疎通をし、エレキブルが地震を引き起こす。
視界が悪くても、地震は地を伝う攻撃。砂に隠れても無意味だ。
「フィニクス、ハリケーン!」
そしてフィニクスも飛び上がり、翼を大きく羽ばたかせて嵐のような突風を放つ。突風は一時的だが、砂嵐ごと吹き飛ばして二体を攻撃する。
地震を受けて倒れるキリキザン。地震は耐えたが、直後に襲い掛かってきたハリケーンに吹き飛ばされるバーネッコ。
二体とも完全に目を回しており、戦闘不能だった。
地下一階では、ロキとザンバがボールを片手に向かい合い、バトルが行われる。
「行きますよ、バンギラス!」
「おいで、マイハニー、アメリシア」
ザンバが繰り出すのは、鎧ポケモンのバンギラス。対するロキは、雨乞いポケモンのアメリシアだ。
まずアメリシアが場に出ることで、特性、雨降らしが発動。室内に雨雲が立ち込め、雨粒が落ち始めるが、
「……っ」
直後、猛烈な砂嵐により雨雲がすべて吹き飛ばされる。
バンギラスの特性、砂起こしだ。
「残念でしたね。天候を変える特性が同時に発動する時、遅いポケモンの特性で、先に発動した天候が上書きされます」
「それは知ってるけど……話が違うなぁ」
ロキは少し困ったように頭を掻く。
「イリゼは、すばしっこいサナギラスだって言ってたのに、出て来たのは鈍足バンギラスかぁ」
「進化したのですよ。その際に素早さは落ちてしまいましたが、このような場面で役に立つとは」
ロキはしばらく唸っていたが、やがてパッと頭を上げ、いつもの糸目に戻る。
「ま、いいか。ボクはイリゼと違って、そこまで天候に固執してるわけじゃないし。それにボクの愛しのポケモンたちは、雨に濡れなくとも十分強い」
それを証明してあげるよ。と、ロキはうっすらと目を開くのだった。
第五節その二ですが……書くことないですね。文字数もギリギリなんで、今回はこれで終わりにしますか。では次回、ロキとザンバのバトルです。お楽しみに。