二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 507章 収縮 ( No.750 )
- 日時: 2013/03/13 18:04
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
六番道路とフキヨセシティを繋ぐ洞窟、電気石の洞穴の奥地。
そこには、三つの人影があった。
一つは全身真っ黒の男、ソンブラ。もう一つは赤髪に眼鏡をかけた少年、アキラ。そしてもう一つは、金髪の少女、リオ。
一触即発とでも形容すべき張りつめた空気感で、三人は睨み合っている。
「……こんなところまで来るなんて、プラズマ団てそんなに暇ななのか?」
そんな中、最初に口を開いたのは赤髪の少年、アキラだ。
「別に。暇どころかてんやわんやだよ……今回は、僕の独断だ。他には誰もいないよ」
とソンブラは言うものの、敵対している者からすれば鵜呑みにはできないだろう。必ず警戒するはず。
しかしソンブラからすれば、警戒されようとされまいと関係ない。今回ここに来たのは、もっと大きな意味がある。
「PDOヒウン支部統括、リオ」
「……私?」
「うん。エレクトロ様は君を意識していたみたいだけど、だからこそあの人は変わってしまったと僕は思っている。僕にはあの人の考えは分からない。あの人の気持ちなんて分からないさ。でも」
一旦言葉を区切り、ソンブラは続けた。
「君と戦うことで、何か分かるかもしれない。だから、リオ。僕と、ポケモンバトルで勝負だ」
唐突に怒ったソンブラとリオのバトル。
方式は四対四、交代なしのルールとなった。
「……アキラ、ちょっと向こう行ってて」
「は? なんでだよ? バトルの観戦くらいいいだろ別に。それにあいつが何をしでかすかも分からないし——」
「アキラがいると、シャンデラを出した時にホムロソクが出ちゃうでしょ? それでバトルがややこしくなったら困るからよ。それに、負けるつもりはないしね」
ホムロソクを理由に、強気な態度でアキラを追い払おうとするリオ。アキラはしばらく黙り、
「……大丈夫か?」
「うん、もう平気。だから行って」
「……分かった。けど、無茶だけはすんなよ」
リオに背を向け、手を振りつつアキラは闇の中へと消えていく。これでこの場には、ソンブラとリオだけになった。
「……これで二人きり。あの人と、ほぼ同じ状況になった」
ソンブラは周りを見渡し、本当に二人だけになったことを確認すると、ボールを構える。
「初っ端からだけど、行くよ。コモラゴン!」
ソンブラの一番手は、毒トカゲポケモンのコモラゴン。二足歩行の巨大なトカゲのようなポケモンで、通常のサイズよりもかなり大きい。倍はありそうだ。
「コモラゴンか。ここじゃあドラドーンは出しづらいから……出て来て、アスイーツ!」
リオが繰り出すのは、氷菓ポケモンのアスイーツ。アイスのような体を持つポケモンだ。
「氷タイプか、セオリー通りだね。でも、ドラゴンタイプを使い以上、その対策をしていないわけがない。コモラゴン、怒りの炎!」
コモラゴンは大きく吠えると、怒り狂ったように燃え盛る業火を放つ。業火はうねるようにアスイーツへと迫るが、
「アスイーツ、小さくなる!」
刹那、アスイーツの姿が消えた。いや違う、小さくなったのだ。
「……っ」
歯噛みするソンブラ。消えたと思うほど小さくなられては、どこにいるかも分からない。巨大なコモラゴンでは、攻撃を当てるだけでも困難だろう。
「霰!」
続いて洞窟の天井に暗雲が立ち込め、氷の粒を降らせる。霰は砂嵐に似た天候で、氷タイプ以外のポケモンはダメージを受けてしまう。その量は微々たるものだが、ソンブラにとって厳しいのはむしろ——
「続いて吹雪!」
突如、どこからともなく猛烈な吹雪が放たれ、コモラゴンを襲う。効果抜群なので、ダメージは大きい。
「やっぱり吹雪もあるか……!」
——厳しいのはむしろ、この吹雪だ。吹雪は命中率に何のある大技だが、霰状態の時だけはほぼ必中になる。氷タイプとしては常套手段だ。
「コモラゴン、地震!」
コモラゴンは地面を踏み揺らして地震を引き起こすが、アスイーツに当たった様子はない。どころか、
「アクアボルト!」
コモラゴンの顔面に電気を帯びた水流がかけられる。効果はいまひとつで麻痺状態にもならなかったが、どこから攻撃されたのかが分からない。小さすぎて、まったく姿が見えないのだ。
「……怒りの炎!」
とにかく一撃でも当てようと、広範囲に憤怒の炎を放つが、アスイーツに当たった感触はない。どころかまた水流を浴びせられた。
「吹雪よ!」
続けて吹雪も放たれ、大ダメージを受けた上にコモラゴンの下半身は凍り付いてしまう。
「くっ、ベノムクローだ!」
コモラゴンは猛毒を込めた爪で、纏わりつく氷を粉砕し、脱出する。しかし、
「アスイーツ、吹雪!」
また吹雪が放たれ、コモラゴンの反応より早く襲い掛かる。
特攻が低いのか、このアスイーツの吹雪は思ったよりも威力はないが、それでも何度も受けていればいつか力尽きる。そう何度も喰らいたくはない。
「……地震!」
「アクアボルト!」
コモラゴンは地面を揺らして地震を起こすが、直後に電気を帯びた水流が放たれ、地震が当たらなかったことが証明される。
「もう一度アクアボルト!」
再び水流が放たれ、コモラゴンを攻撃する。三度目の正直か、その一撃でコモラゴンは麻痺状態になってしまった。
しかしその代わりに、ソンブラも非常に有益な情報を手に入れることができた。
「……できた」
「……え? なに?」
「やっと特定できたよ、君のアスイーツがどこにいるか」
リオは少したじろぐが、すぐに平静を取り戻す。ミリ単位まで小さくなったアスイーツが、この薄暗い洞窟内でそう簡単に見つかるはずがない。しかも今は霰状態で視界も良いとは言えないのだ。加えてアスイーツの降らせる特殊な霰は甘い香りが含まれているので、集中力だって落ちているはず。そんなバッドコンディションで、アスイーツの位置を特定することは不可能に近い。
しかしそれでも、ソンブラは動き出す。
「コモラゴン、その身を焦がせ……怒りの炎!」
コモラゴンは大きく吠えると、轟々と燃え盛る憤怒の業火を出現させる。怒り狂うようにうねる炎はコモラゴンを囲うように現れ——
——コモラゴンに襲い掛かった。
「っ!?」
驚いたのはリオだ。理由は二つ。一つはコモラゴンが自分に向けて攻撃したこと。そしてもう一つは、
「アスイーツ!」
炎に包まれたコモラゴン。その中から元の大きさに戻ったアスイーツが弾けるように飛び出した。アイスのような体も半分ほど溶けてしまっている。
二つ目の理由は、アスイーツの位置を完全に特定されたこと。攻撃する方向には十分気を付けていたのだが、それでもばれてしまったようだ。
「小さくなって巨体のコモラゴンに纏わりつく、か。確かにそうすれば、普通の物理技じゃあアスイーツを攻撃することは困難だね。寄生虫みたいにくっ付いてちゃあ、手の出しようがない。だからこうして、肉を切らせて……いや、肉を切って骨を断つ手に出させてもらったよ」
今まで以上の炎を受けたコモラゴンだが、効果いまひとつだからか、ダメージはさほど大きくない。体を焦がし、まだ炎に包まれた状態でアスイーツに接近し、持ち上げる。
「これで終わりだよ、逆鱗!」
そしてパッと手を放すと、直後、猛烈な怒涛の連続攻撃をアスイーツに叩き込む。
最後に鉄鎚のような拳を振り下ろして地面に叩きつけると、アスイーツは戦闘不能となった。
しかしそれでもコモラゴンは止まらず、再び拳を振りかざすが、
「っ、戻って、アスイーツ!」
アクアボルトで受けた麻痺が発動してしまい、コモラゴンは動きを止めてしまう。その隙にリオはアスイーツをボールに戻す。
「……なかなか性格の悪いコモラゴンね」
「それでも僕の仲間だ。そういうポケモンだっているんだよ」
苦言を呈するリオだったが、即座にソンブラに返されてしまい、黙り込む。そして、次のボールを構えた。
「コモラゴンの体力も残り僅かなはず。頼んだわよ、プリン!」
リオの二番手は、風船ポケモンのプリンだ。
ソンブラはプリンを見ると、驚いたように声をあげた。
「へぇ、エレクトロ様のファントマを倒したのはプクリンと聞き間違えたのかと思ったけど、本当にプリンなんだ」
「そうよ。進化してなくっても、この子は十分に強いよ」
「ふぅん。まあ、相性が良かったとはいえ、あの人のファントマを倒すほどなんだ。弱いはずはないよね。コモラゴン、ベノムクロー!」
真っ先に動き出したのはコモラゴン。しかし間の悪いことに、またしても麻痺が発動し、コモラゴンは動きを止めてしまう。
「今よプリン、恩返し!」
その隙にプリンはコモラゴンに接近。思いのこもった一撃をコモラゴンに叩き込み、後方へと押し倒した。
その一撃で、コモラゴンは戦闘不能となる。
「……一体倒しただけでも上出来かな。戻って、コモラゴン」
ソンブラはコモラゴンをボールに戻す。そして、次のボールを構えた。
「それじゃあ、行くよ。僕の次のポケモン——」
ボールを放り投げて思うのは、相手のことでも、ポケモンのことでもない。自分が今戦っている理由についてだった。
(何か分かるはずなんだ。この人と戦えば、あの人の何かが、分かるはずなんだ——)
第六節その二、リオとソンブラのバトルが始まりました。今回は文字数もギリギリで書くこともないので、あとがきもこの辺で終わりです。では次回もお楽しみに。