二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 510章 大火 ( No.755 )
日時: 2013/03/14 16:56
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「フィニクス、ドラゴンビート!」
「シャンデラ、大文字!」
 龍の音波と大の字の炎がぶつかり合い、相殺される。
「シャンデラ、スタープリズム!」
「フィニクス、かわしてダイヤブラストだ!」
 霰と共に、シャンデラが冷気の込められたガラス球を降り注ぐが、フィニクスはそれらを掻い潜ってシャンデラに接近。翼を羽ばたかせて白色の爆風を放つ。しかし、
「サイコキネシス!」
 爆風がシャンデラを襲う直前に、シャンデラは念動力で爆風を止め、そのままフィニクスにぶつける。
「さらにシャドーボム!」
 続けて影の爆弾を発射し、フィニクスに直撃。爆発を起こしてフィニクスの態勢を崩した。
「もう一度!」
「させないよ! ドラゴンビート!」
 爆弾は再びフィニクスに迫るが、フィニクスも龍の鼓動の如き音波を発射し、爆弾を破壊。そのままシャンデラにも攻撃する。
「ダイヤブラストだ!」
 続けて翼を羽ばたかせ、煌めく爆風を放つが、
「それはもう読めた! サイコキネシス!」
 念動力によって爆風は止められ、そのままフィニクスに送り返される。擬似的な攻撃とはいえ効果抜群なので、ダメージは決して少なくない。
「シャドーボムよ!」
「かわしてドラゴンビート!」
 シャンデラは続けて影の爆弾を発射するが、フィニクスもそれを回避。上空からシャンデラに龍の音波をぶつける。
「接近だ! シャンデラを捕まえてダイヤブラスト!」
 そしてシャンデラに急接近。翼でシャンデラを覆って動きを封じてから煌めく爆風を放ち、シャンデラを吹き飛ばす。
「シャンデラ!」
 シャンデラは地面に叩きつけられる。効果抜群の攻撃を至近距離から喰らったのだ、ダメージは大きいだろう。
「追撃だよ、フィニクス。ドラゴンビート!」
 そしてフィニクスは、そのまま龍の咆哮を放ってシャンデラを追撃する。
「シャンデラ……」
 ゆらゆらと浮かび上がるシャンデラだが、かなりダメージが蓄積しているようだ。ラプラスの大洪水から始まり、その後はフィニクスの猛攻。普通のシャンデラならとっくに戦闘不能になっている。
「そろそろ決めるよ。フィニクス、テラブレイズ!」
 フィニクスは轟々と燃え盛る爆炎を、今度は上空にではなく、直接シャンデラに向けて放つ。その火力は、今のシャンデラの大文字を超えるほどだ。
「……!」
 すべてを燃やし尽くす爆炎に包み込まれるシャンデラ。この技の威力は既に見ている。雨のように降り注ぐだけでもかなりの威力があった技だ。効果いまひとつと言えど、直接ぶつけられればひとたまりもないだろう。
 そして、爆炎が晴れる頃——
「っ!」
「…………」

 ——シャンデラは、まだ倒れてはいなかった。

 いや、それだけではない。ソンブラはこの時、確かに勝ったとは思った。しかしそれは一時の感情に、一瞬流されただけ。ちゃんと考えれば、相手は幾度も修羅場を潜り抜けた強敵だ。この一撃を耐えることもあるだろうと、多少は覚悟していた。
 しかし、これだけは予想外だった。予想の遥か斜め上を行っていた。

「橙の、炎……?」

 シャンデラの炎は、通常の紫色ではなく、鮮やかな橙色に燃えていた。しかしすべてではない。腕の先と頭部、計五つの炎のうち、前の腕の二つが、オレンジ色に燃えている。
「……二つか」
 ぼそりとリオは呟き、シャンデラの指示を出す。
「シャンデラ、大文字」
 次の瞬間、シャンデラは大の字の炎を放つ。しかしの大きさは今までの大文字の比ではない。フィニクスが放ったテラブレイズに匹敵——ないしはそれを凌ぐほどの巨大さだ。
「……っ!?」
 驚き戸惑うソンブラ。こんな攻撃、避けることも相殺することもできるはずがない。
 そして、フィニクスは巨大な炎に飲み込まれるのだった。その光景を見て、リオはふぅと息を吐く。そしてシャンデラをボールに戻そうとする。
 しかし、
「まだ終わらないよ……!」
 刹那、炎の中からフィニクスが飛び出した。効果いまひとつとはいえ、莫大な炎を受けて大ダメージを受けたようだが、まだ戦闘不能ではないようだ。
「僕のフィニクスのテラブレイズを超える炎……こんなの初めて見たよ。でも、まだフィニクスには奥の手がある。この場合、戦うのがシャンデラで良かったよ。まだ、フィニクスは高みに上れる……!」
 フィニクスは上昇する。羽ばたくたびに、翼の炎が少しずつ大きくなっていく。まるで、シャンデラの炎を吸収しているかのように。
 いや、ようにではない。実際吸収しているのだ。シャンデラが放った大文字の炎を。吸収し、自分の力として取り込み、フィニクスもまた、強大な炎を燃焼する。

「フィニクス、テラブレイズ!」

 フィニクスは最初の一撃より、先のシャンデラの大文字より、さらに大きな爆炎を解き放つ。龍の如く荒々しい炎は、喰らうようにしてシャンデラを襲う。
「うっ……!」
「くっ……!」
 あまりの熱気に、トレーナーまでもが顔を歪める。しかし当のシャンデラはそれ以上の痛みを受けていることだろう。これだけ膨大な炎の直撃を喰らえば、伝説級のポケモンだって耐え切るのは難しいはずだ。効果いまひとつでも、リオのシャンデラがずば抜けた実力を持っていたとしても、この爆炎を受けてなお立ち上がることは絶望的である。
 ……だが、ポケモンは、時としてトレーナーの予想を超えて来るものだ。
「っ、まだ耐えるのか……!」
「シャンデラ……!」
 シャンデラは、まだ地に落ちてはいなかった。今の一撃で相当なダメージは受けたのだろうが、辛うじてまだ戦闘不能ではない。
 フィニクスもシャンデラも、もう限界。あと一撃でも入れられれば、戦闘不能は必至だ。
「……一撃入れれば、勝負が決まる」
「……これが、最後の一発になりそうね」
 フィニクスは上昇し、シャンデラは残る二つの炎も橙色に燃やす。両者はしばらく睨み合い、そして、

「フィニクス、流星群!」

 フィニクスは上空から、エネルギーで生成した無数の隕石を解き放つ。数多の流星は、群れとなってシャンデラへと襲い掛かる——

 ——が、直後フィニクスの体が爆発した。

「っ!? フィニクス!」
 黒い煙を上げながら、フィニクスは落下する。完全に戦闘不能だ。
「……シャドーボム」
 小さく、しかしソンブラに聞こえるように、リオは呟く。
「炸薬を最大まで凝縮した最小の爆弾を、超高速で発射したシャドーボムよ。弾速も威力も、通常の比じゃないわ……まあ、今のシャンデラじゃなきゃ、できないだろうけど」
 つまりシャンデラは、フィニクスが流星群を放つ直前に、超高速でシャドーボムを発射して攻撃していた。ゆえにフィニクスの攻撃はシャンデラには届かず、その前にシャンデラの攻撃がフィニクスに直撃した、ということだろう。
「……一歩及ばず、だったか。戻って、フィニクス。ありがとう」
 ソンブラはフィニクスをボールに戻し、違うボールを握り締めた。
「っ? なに、まだやるつもりなの? 勝負は四対四じゃ……」
「心配しなくてもいいよ。エレクトロ様の心情は、最後の最後まで分からなかった。もうここにいてもしょうがないから、帰るだけさ。ドンカラス」
 ソンブラがボールから出したのは、大ボスポケモンのドンカラスだ。ドンカラスはけたたましい大声で鳴いている。
「あの人は、もしかしたら変わってないのかもしれない。もしくは、変わったのは英雄とか君とかの影響じゃないのかもしない。あの人自身の問題なのかもしれない……それでも、やっぱり僕は、あの人の後継者になることは、できないよ」
 ソンブラが呟くように言うと、次の瞬間、どこからともなく大量のヤミカラスが洞窟の中に流れ込んできた。恐らく、先ほどドンカラスが鳴いていたのは、このヤミカラスたちを呼ぶためなのだろう。
 ヤミカラスたちはドンカラスとソンブラを覆うように旋回しながら飛び回る。
「じゃあね。エレクトロ様は、君と本当の決着をつけたがっていたよ。だからそれまで、腕を磨いておくといいよ——」
 やがてヤミカラスたちは消えていったが、同時にソンブラの姿も、そこにはなくなっていた。



第六節、その五。でれにて第六節は終了です。よって十六幕もこれで幕を降ろします——ということにはならないんですよね、これが。第十六幕は第七節で終わりを迎えます。なんだか六節が始まる前後にラストを飾るのは〜とか言っていた気がしますが、十六幕の終わりは第七節です。というわけで次回、第十六幕 第七節『浮上』です。お楽しみに。