二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 511章 集会 ( No.756 )
日時: 2013/03/15 18:39
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

『——基地の中にいる全ての団員、直属部下、7Pにお伝えします。これよりゲーチス様による浮上の儀式が執り行われますので、プラズマ団構成員の皆様は、ただちに儀式の舞台へとお集まりください……繰り返します。基地の中にいる全ての団員、直属部下、7Pに——』



 そこは、広間のような場所だった。しかし椅子やテーブルなどはなく、一番奥から二段ほど高くなっている。それ以外はだだっ広い平地がずっと長く続いているだけの空間。
 しかし今現在、その空間はおびただしい数の人間によって埋め尽くされていた。全員が同じ真っ黒な衣装に身を包み、マスクを付けている。胸には盾のような形が白と黒に二分され、青いアルファベットのPとSが重ねて描かれた紋章がある。
 奥の一段高くなっている所には、七人の人間がいた。こちらは皆、バラバラの格好をしている。
 左端にいるのは紫色の髪に白衣を羽織った男。少年のようなあどけなさの残る顔立ちではあるが、瞳の奥には邪悪そうな光が渦巻いている。
 プラズマ団きっての科学者。7Pアシド。
 右端には淡いピンク色の浴衣を着た、赤いポニーテールの少女がうつ伏せで寝そべっている。如何にも眠たげで、怠惰な眼はジッと正面を見据えていた。
 プラズマ団きっての麒麟児。7Pフレイ。
 その隣には、無造作に跳ねた緑髪、迷彩色の服に黒いコートを羽織った男。どこか達観したような眼差しは、別のものを見ているかのようだ。
 プラズマ団きっての工作員。7Pフォレス。
 さらにその隣、毛先は焦げているが美しい青色のロングヘアーに、簡素な水色のワンピースを着た女。鋭く凍てつくような視線を、どこかへと向けている。
 プラズマ団きっての美麗人。7Pレイ。
 左から二番目には、執事服を着た黄色い髪の男。柔和そうな目は今は細く鋭い。
 プラズマ団きっての大黒柱。7Pエレクトロ。
 その隣には、真っ黒なローブにフードまでかぶった、藍色の髪の人物。目どころか顔を全く見せないそれは、人間であるかすらも疑わしい。
 プラズマ団きっての異端者。7Pドラン。
 そして中央には、ベージュ色の軍服に灰色のコートを着た男。険しい眼差しにはどこか強い意志を感じられる。
 プラズマ団きっての求道者。7Pガイア。
 彼らの後ろには、彼らの部下が立ち、彼らの前には、彼らの頂点が君臨する。
 目玉模様のある、影のような漆黒のコートに身を包む男。頬は痩せこけているが、その瞳は野心に満ちており、ギラギラと黒く輝いている。
 プラズマ団の頂点に君臨する者、ゲーチス。
 この場には、すべてのプラズマ団構成員が、集まっている。
 ゲーチスは奥の最も高い段から、同胞たちを見下ろす。
「……皆の者、よく聞くのです。遂に時は満ちました。境界の水晶のエネルギーは十分、キュレムを復活させる準備が整ったのです」
 ゲーチスの言葉を受け、7Pやその部下たちは無反応だが、下っ端と思しき者たちは多少ざわめく。だがゲーチスはきにせず続けた。
「そして、我らの前に立ちはだかる憎き英雄たちとの、決着の舞台も整いました。これより我々は、ジャイアントホールへと向かい、キュレムを復活させます。しかしその途中で、奴らが邪魔をするのは目に見えています。いや、むしろこちらから誘いだし、叩き潰すのです。一年……いや、二年前。我らが王として君臨していたもう一人の英雄は、我々を裏切った。そしてあろうことか、もう一人の英雄に味方をしている」
 しかし、とゲーチスは繋げ、
「これは危機ではなく、むしろ好機です。二人の英雄をまとめて葬り去ることができる絶好の機会です。なに、案ずることはありません。二人の英雄など恐れるに足らない存在です。我々に味方をするのは、真実でも理想でもない。この二つから生まれた、虚無。白き炎の龍ではない、黒き雷の龍ではない。レシラムでもゼクロムでもない。灰色の——混濁の、氷の龍。その名も——」
 一拍置いて、ゲーチスは力強く、叫ぶようにその名を告げる。

「——キュレムです!」

 刹那、静寂がこの場に広がる。凍りついたように、全ての者の動きが、一瞬だけ停止する。
「……真実の英雄、理想の英雄。この二つの存在を超越するのは、混濁の使者、キュレムしかいません。かの史上最強と謳われた、氷の龍がいれば、奴らなど——世界など敵ではないのですよ!」
 顔を伏せて呼吸を整え、ゲーチスは再び顔を上げる。
「前置きが長くなりましたね。それでは始めましょう。英雄たちを葬る舞台を作り出す、浮上の儀式を——」
 言ってゲーチスはカンッ! と手にした杖の先端を地面に叩き付け、音を鳴らす。すると次の瞬間、三人の影が現れた。
 ダークトリニティ。ゲーチスの腹心三人衆。プラズマ団の、影。
 ダークトリニティは一つの淡く発光する石をゲーチスから受け取ると、さらに奥の台座へと向かう。
 機械的だが、どこか古めかしくも感じる不思議な台座。中央には石がちょうど収まるくらいのくぼみがあり、ダークトリニティはそのくぼみへと、石をはめる。

 すると刹那、世界が振動した。

 団員たちはよろめき、倒れまいとバランスを取っていた。しかしゲーチスは直立したまま、両手を広げて天を仰ぎ、邪悪な笑みを見せている。

「さぁ、浮上せよ……古代空中都市、プラズマ・シティ——!」



第七節、浮上です。次回は第十七幕、決戦へと移行します。お楽しみに。