二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 513章 霊獣 ( No.760 )
- 日時: 2013/03/16 19:29
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
PDOのリーダー、ジルウェ。そしてサブリーダー、シスタ。
今まで姿を現さなかったPDOのトップ2が今更ながら急に姿を現した。この事に驚く者は多かったが、しかしプラズマ団を打倒するための作戦会議の方が優先され、彼らが何故今まで姿を現さなかったのか、その理由は明らかにされなかった。
「——さて、まずは奴らのアジトだと思われる、古代空中都市プラズマ・シティだけど、これは今、上昇を停止し、ジャイアントホールに向かっている」
前でジルウェからバトンを受け取ったキリハが、空中都市についての説明をしている。
「ただ、スピードはかなり遅い。この空中都市のスピードなら、半日くらいはかかるだろう」
「半日……」
確かに、普通に考えればかなり遅い。しかし、世界の命運を決めると言っても過言ではない決戦で半日、と考えれば、それは長い時なのか、それとも短い時なのか。
「この空中都市だけど、都市の外壁に描かれている模様などから推察するに、イッシュ創世記のものだと思われる。イッシュ創世記の神話には、確かに空飛ぶ都市が記されている書物もあるけど、一般にこれは、後から誰かが脚色を加えたものだとして、真実ではないと思われていた。それが実際には存在していて、今もなお空を飛んでいるんだから、学者さんたちはてんやわんやだろうね」
確かに街が空を飛ぶなんて言われても、真実だとは誰も思わないだろう。
「次にこの都市が浮上した場所だけど、これは知ってる人もいるよね。サザナミ湾近海、海底遺跡のすぐ近くから浮上したんだ」
「ってことは、あの都市は海底遺跡が浮かび上がったものなの?」
リオがそう言うと、キリハは首を横に振る。
「いいや、それはない。海底遺跡は多くの学者が調査してるけど、あの都市とは構造がまるで違う。そしてこれは、シンオウ地方の考古学者の推測なんだけど、海底都市はあの空中都市をカモフラージュするものかもしれない。大昔の人々は空中都市が活動を停止する際に、海底都市の近くに空中都市を沈めて、空中都市の存在を隠したのではないか、って」
「でもよ、海底都市の近くに空中都市が沈んでんなら、空中都市も学者たちに見つかるんじゃねぇのか?」
「いや、空中都市が沈んでたのは、たぶん海底都市よりもずっと深いところだと思うんだ。あの辺は潮の流れの関係とかで、まだ調査が進んでいない。なにより近くに海底都市もあるから、ほとんど調査されていなかったんだ」
さらに、とキリハ続ける。
「あの空中都市がプラズマ団のアジトとするなら、奴らがサザナミタウンを襲ったのも納得できる。あそこを拠点にするとか言ってたけど、あんな目立つ場所を拠点にしていいことなんてないはずだ。だけど、そのすぐ近くに本命の拠点があるとしたら?」
「……! そうか、サザナミを占拠して拠点にすれば、近くの海に沈んでる空中都市をさらにカモフラージュできる」
イリスの言葉にキリハは頷き、
「うん。いくら調査があまり進んでないとはいえ、見つかる可能性も否定はできないからね。だからサザナミを襲うことで人々の目を海から陸に向けさせた。もし占拠に失敗しても、サザナミは復興のために、海底都市の調査どころじゃなくなる。実際、今もなお海底都市の調査は中断されているしね」
つまり、あのサザナミタウン襲撃は、プラズマ団の巧妙な隠ぺい工作ということだったのだ。
「……どうりで、いくら探しても奴らのアジトが見つからないわけだ。海の底に潜った挙句、そこまでして隠されちゃ、見つけようがねぇ」
だが今は、この目に見えている。空高く浮かび上がった都市として。
「……前置きが長くなったね。それじゃあ今からプラズマ団のアジト、空中都市に乗り込む作戦を立てるんだけど……」
一度そこで言葉を濁し、キリハは全体を見渡す。
そして、
「……作戦は、空から突入する、だ」
「……え?」
「は……?」
「それだけ……?」
などなど、似たような反応がそこかしこから飛んでくる。
「それって、作戦でもなんでもなくない?」
「そうだね。だけど、これしか方法はないんだ。まだ都市内部の構造がどうなっているのかも分からないし、とりあえず今は突入するしかない」
確かにキリハの言う通りかもしれないが、肩透かしを食らった感は否めない。そんなものでいいのだろうかと不安になる。
「そうと決まれば善は急げだ。プラズマ団がジャイアントホールに到達するまで、残り約十時間。それまでに、プラズマ団の親玉、ゲーチスを叩く」
キリハの声に応じて、全員立ち上がった。
突入して親玉を倒す。実に分かりやすい。作戦なんてないが、向こうは烏合の衆のようなものなので、ゲーチスさえ倒せば自然に瓦解するだろうことは目に見えている。
向こうは明らかにこちらを誘っている。だったら徹底的に邪魔をしてやろうと意気込むのだが、しかし、邪魔立てをするのはこちらだけとも限らない。
全員が飛び立つべく外に出た時、それは現れた。
「止まれ」
シュンッ、とまるで瞬間移動のように現れたのは、三つの影。その名も、
「ダークトリニティ……!」
「早速こう来るのか……!」
決着をつけようなどと言っていたが、ゲーチスはゲーチスだった。このタイミングでダークトリニティを送り込んで来るとは。
「英雄ども、我々の言わんとしていることは理解できるだろう。ここで消えてもらう」
言葉少なくダークトリニティは散開し、それぞれのポケモンを繰り出す。それも、
ボールからではなく、空から。
「う……!」
「な、なに……?」
突如、竜巻、稲妻、砂塵が発生し、暗雲から三体のポケモンが姿を現した。
「……! あれは……!」
イリスはその姿を見たことがある。二年前、ゲーチスを仕留めそこなった時に、ダークトリニティが使役していたポケモン。
旋風ポケモン、トルネロス。
雷撃ポケモン、ボルトロス。
豊穣ポケモン、ランドロス。
イッシュに災厄をもたらした二体と、それを鎮めた一体のポケモン。それら三体が同時に出現した。
「いや、でも……」
イリスは訝しげな表情を見せる。それはそうだろう。確かにイリスが見たのはトルネロス、ボルトロス、ランドロスだが、以前見た時とは、決定的に姿が違う。
トルネロスは鳥、ボルトロスは龍、そしてランドロスは虎。
それぞれ、獣のような姿をしている。
「……こ奴らの姿は、以前のような化身の姿ではない。今は映し鏡よってその力を解放した、霊獣。真の災厄を起こした姿だ」
ダークトリニティが静かに言う。確かに、荒々しさという点においては、以前の人に似た姿よりも強大だ。
(まずい……今から最終決戦って時に、消耗したくはないし、かといってこいつらは空を飛べる。無視して素通りすることもできない)
なによりここで時間稼ぎをされるのが一番厄介だ。親玉のゲーチスを倒せばこちらの勝利というのが突入作戦の前提だが、それにはゲーチスがキュレムを復活させるまでというタイムリミットがある。それを過ぎれば、今度はキュレムをどうにかしなければならないという問題が残ってしまう。
出鼻を挫くような危機に陥るイリスたち。しかしそこに、救世主のような光が差し込む。
“切り裂け、正義の刃!”
一筋の光は刃となり、ランドロスを切り裂いた。
「君は……」
スタッと舞い降りたのは、四つの影。
“待たせたな、英雄。なにやら嫌な風を感じ、馳せ参じた”
「コバルオン……!」
コバルオンだけではない、他にも、ビリジオン、テラキオン、そして前とは違う姿のケルディオ。三体の救世主とその愛弟子が、ここに現れた。
「なんで、君らがここに?」
“なんではないだろう、英雄。我々はお前たちに力を貸すと誓ったはずだ。今日が、イッシュの命運を左右する日になるのだろう? ならば我々も、最大限の助力をせねばなるまい”
テレパシーでそう伝えると、コバルオンは大きく吠える。
“行け! 英雄! 災厄の霊獣共は、我々が受け持つ。お前たちは、あの空に浮かぶ都市から感じられる邪悪を打破するのだ!”
コバルオンの咆号を合図に、四体は駆け出す。そして、空を支配する霊獣へと、牙を剥いた。
「……ありがとう、コバルオン」
礼を言い、イリスはボールからウォーグルを出した。
「どうやら、彼らが突入までの時間を稼いでくれるようだね。ここは甘えさせてもらおう」
そう言って、皆それぞれ飛行できるポケモンを出す。いない者はすべて、リオのドラドーンに乗せていくとのことだ。
「それじゃあ、行こう! あの空中都市に!」
そして、英雄一行は、空に浮かぶ大都市へと突入する。その姿は、いつかの大戦争を呼び起こすものだった。
一度に色々詰め込むのは流石に大変ですね。なにはともあれ、第十七幕 第一節その二。いまさらですが、この幕も節をつけることにしました。零節から八節までの計九節。零については、特に深い意味はないです。ただ一節を毒邪に、七節を地縛にしたかっただけです。ついでに言うと、今幕は二節以降から目次への追加の仕方が変わります。詳しくは次回くらいのあとがきにかきますので。それでは次回、たぶんジルウェたちについて触れ、そしてあの古生代ポケモンが……? ともかく、次回もお楽しみに。