二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 514章 古生代 ( No.761 )
- 日時: 2013/03/18 14:05
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
プラズマ団との最終決戦へ向け、プラズマ団の居城、古代空中都市プラズマ・シティへと乗り込む英雄一行。
しかしいざ出陣しようとリバティガーデン島を出た途端、ダークトリニティ率いるトルネロス、ボルトロス、ランドロスが霊獣の姿で襲い掛かる。
コバルオンを筆頭とする救世主の登場でその場は切り抜けた英雄たちだが、しかし彼らには、次なる関門が待っていた——
「——! 何か来る」
ウォーグルに乗り、空中都市が目前まで迫った時、イリスは何かを感じ取った。
漠然とした気配だが、確実にこちらに接近している。スピードは、恐らく速い。
そして次の瞬間、それは姿を現す。
「な、なに、こいつ……!?」
風を切る音と共に現れたのは、機械的なポケモンだった。
紫色の装甲に覆われ、関節部分は節となっている。最も目立つのは背中の砲台で、砲身には小さな機械がはめられている。
「ポケモン、だよね。でも……」
イリスはとりあえず図鑑を取り出して調べるが、一向にデータが出て来ない。イリスの図鑑はバージョンアップされており、発見されているポケモンのデータならほぼ全て表示されるはずだ。
ならば考えられるのは、新種のポケモンか、そもそもポケモンではないか。
しかし妙なのは、新種のポケモンにしろポケモンでないにしろ、そのような場合だとそもそも情報がないと図鑑には表示されるはずだ。けれど図鑑は今も、情報を探し出す作業を行っている。それはまるで、そのポケモンの情報があるのに、その情報と目の前の何かが一致しないかのようである。
ひとまずイリスは図鑑を仕舞い、目の前のポケモンらしきものを見据える。すると、砲台の上に画面のような光が照射された。
『ケヒャハハハ! よぅ、英雄。驚いてっか?』
「お前は……!」
照射された光の中から出て来たのは、7P、アシドだった。いつものような邪悪そうな笑みを浮かべている。
『とりあえずお前らも言いたいことあるだろうが、まずは僕から言わせてもらうぜ。まず先に言っとくと、今ここにいる僕は僕じゃない。ホログラムで表示された僕のイメージ映像ではあるが、実際の僕が喋っているわけじゃあない』
「どういう意味?」
まったく意味が分からなかった。自分は自分じゃないなどと、小説の中ならともかく実際に言われても反応に困る。だがアシドはそれを気にする風もなく、
『ケヒャハハハ! 頭かてえなぁ。答えを言っちまうとだな、つまりこの僕は、グレイトでジーニアスなアシド様が作り出した人工知能ってわけだ。だから僕の本体の意志とは関係ねえ。本体の性格を模してるだけで、本体が動かしてるわけじゃねえのさ……ここまでが、僕についての説明だ』
次に、とアシドは続ける。そして、指を下に向け、ポケモンと思しき何かを指差す。
『こいつだ。こいつはゲノセクトっつーポケモンでな、化石から復活させたのをプラズマ団が改造したんだ』
「改造って……!」
『怒るなよ。世の中には人工物から生まれたポケモンだっているんだ。人工的に作り出されたポケモンだっているし、それを言ったら化石から復活させることだって、人工の手が入っているだろ? それに、ポケモンを改造するってのも簡単なことじゃねえのさ。ポケモン自体、改造を拒否する本能みてえなのがあってな、ゲノセクトはそれが弱かったから改造できただけだ。それでも相当難しかったがね、本来ならゲノセクトを量産するつもりだったが、結局、何年もかけた研究と実験で成功したのは、こいつ一体だ。つっても、プラズマ団が誇る最終兵器だがな。ケヒャハハハ!』
調子が良くなると饒舌になるのか、ひたすら喋るアシド。その話を聞き、最も険しい顔をしていたのは、Nだった。
「ゲノセクト……そのポケモンの研究は、もう終わったはず。いや、僕が中止させたはずだ。なのに、なぜまだ……」
『あ? 決まってんだろ、僕が引き継いだんだよ。二年……三年? いや、もっと前か? なんにせよ、初代の研究実験開発部室長がゲノセクトについてのデータをほとんどまとめてたからな。そいつは削除されちまってたが、僕が復元して作り直したのさ』
ケヒャハハハ! とアシドは笑う。
外道だと思うが、しかし確かに人工的に作り出されたポケモンも存在する。ならば、人工的に改造されたポケモンが存在しても、いいのかもしれない。
『話が逸れたな。ともかく、今から僕は……いやさゲノセクトは、お前らの邪魔をする。こいつの試験運転も兼ねて、お前らが空中都市に侵入するのを妨害してやる。覚悟しろよ』
すると、ゲノセクトは砲口からエネルギー弾を発射する。威嚇のようで、イリスたちには当たらなかったが、その威力は相当なものだろう。下手に喰らえば撃墜される。
「……やるしか、ないのか」
しかしそれでも、奴がこちらの進行を邪魔するのなら、戦わざるを得ない。イリスはボールを取り出して、ポケモンを出そうとするが、
「待った」
それを止める者が一人いた。一人——いや二人だけ自家用の小型飛行船に乗ってここまで来た者。
PDOのリーダー、ジルウェだ。
「ジルウェさん……?」
「ここは僕らに任せてもらおう。今まで君たちの力になれなかった僕らだ。今くらいは、助力させてくれてもいいだろう?」
細い眼で見つめられるイリスはしばらく黙っていたが、やがてコクリと頷き、
「……分かりました。じゃあ、ここは任せます」
「うん、君たちも頑張ってね」
そんなやり取りの後、イリスたちは全速力で空中都市へと向かっていく。大空の真っただ中、残されたのはPDOのリーダーとサブリーダー、そしてゲノセクトだけだ。
「……随分あっさり行かせてくれたじゃないか。僕らの邪魔をするんじゃなかったのかい?」
『あんなの方便に決まってんだろ。あいつらと戦うのは、他の奴らだ。それに、僕の目当てはお前だけだしな』
口の端を吊り上げて、アシドはにやりと笑う。
『知ってるぜ、お前のこと。プラズマ団の裏切り者といやーNっていう理想の英雄が真っ先に上がるもんだが、他にも裏ぎった奴、離反した奴はいる。その中でも、惜しい人材ってのがいたんだな』
「…………」
『プラズマ団は本格的に動き出す前から、下地作りとして様々な研究をしていた。その中でも一番でかいのが、ゲノセクトの研究だ。今じゃNの野郎が中止にしたせいで、その時の様子を知る奴はほとんどいねぇ。だが、当時の研究実験開発部、それも室長クラスの奴なら、知ってて当然だよなぁ?』
高圧的に、見下げるようなアシドの態度。そして彼は、邪悪な笑みと共に、とある事実を告げる。
『PDO現総統括——旧プラズマ団研究実験開発部初代室長、ジルウェ!』
ケヒャハハハ! とアシドは笑い、
『そいつが、お前の肩書だったよなぁ? そっちの総統括補佐も副室長だった。ゲノセクトの研究データのほぼ全てを握ってたお前らは、研究が中止になると、データを全て削除して、そのままプラズマ団から消えた。そうだよなぁ?』
「……そうだね。否定はしないよ」
ジルウェはボールを一つ握り、静かに呟く。
「嫌気が差した、といえば分かりやすいんだけどね。実際はもっと複雑さ」
『はぁん。じゃ、なんで僕らと敵対するようなことしたんだ? お前ほどの奴なら、僕らがどんだけやばい集団か、分かってただろうによ』
「それは私利私欲というか、個人的で身勝手な理由だよ。リオちゃんやキリハ君たちには本当に申し訳ない限りだけどね」
そして、本当に悪びれたような表情で、ジルウェは語る。
「PDOなんて組織を立ち上げたのも、僕が悪の組織に肩入れしてたなんて事実を、この世から消し去りたかっただけだ。証拠隠滅というか、僕がプラズマ団にいた痕跡を跡形もなく消したかった。それだけさ」
でも、とジルウェは言い、
「この一年、僕らはプラズマ団について調べていた。そしてゲノセクトのデータが残っていて、また製造していることが分かったんだ。まだ、僕の研究成果が残っている。これだけは、なんとかしなくてはならない」
ジルウェ、そしてシスタもボールを握る。
「僕が残した負の遺産、それだけは、僕の手で消去する。それが、僕の償いだ」
『……いいぜ。こっちもいい試験運転の相手ができて好都合だ』
ゲノセクトは戦闘態勢に入り、ジルウェも、握ったボールを空高く放り投げる。
「さぁ、出て来てくれ。僕の勝利の星——」
第零節その三、古生代ポケモン、ゲノセクトが遂に登場です。それと、たぶんジルウェの最大の見せ場がここになると思います。正直、彼らについてはあまりに登場機会が少なすぎて、どう触れていいのか白黒にも分かりません。というわけで次回、ゲノセクトとジルウェたちのバトルです。お楽しみに。