二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 515章 開戦 ( No.762 )
日時: 2013/03/18 20:34
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「ビクティニ!」
 ジルウェが繰り出したポケモンは、小型の小物的なポケモンだった。ベージュとオレンジの体色に、愛嬌のある顔立ち。耳は大きく、V字型になっている。
 勝利ポケモン、ビクティニ。分類通り、勝利をもたらすポケモンと言われている。
「ゲノセクトは強い。虫タイプが有する超感覚に加え、鋼タイプの有する硬い装甲。そこにプラズマ団の改造によって施された機動力と攻撃力。戦闘には欠かせない要素をふんだんに詰め込み、徹底的に強化した兵器のポケモン。だけど、そのポケモンには穴がある」
 ビクティニを見遣り、ジルウェは口を開く。
「単純な話さ。いくら改造しようと、ゲノセクトは無視と鋼タイプ。炎には滅法弱いんだ。そして今、僕に味方をするのは勝利の星、ビクティニ……ここで、ゲノセクトを倒す」
『やってみろよ。このゲノセクトはただ改造したんじゃねえんだぜ? グレイトでジーニアスな僕が徹底的にチューンアップした特別製だ。ゲノセクトの目玉であるカセットにしたって、基礎となるカートリッジを全タイプ分集め、マルチカセットとして完成させた。今のゲノセクトは、全てのタイプの砲弾を撃てる……試してみるか?』
「できるものなら」
 ジルウェが即答すると、アシド——ゲノセクトもすぐに動き出した。
『上等! ゲノクセクト、テクノバスター!』
 ゲノセクトは砲台にエネルギーを集め、青色の砲弾をビクティニへと発射する。
「ビクティニ、サイコキネシス」
 対するビクティニは、念動力で砲弾の軌道を逸らし、攻撃を回避。そのままゲノセクトへと向かっていく。
「思念の頭突き!」
 様々な思念を頭に込め、ゲノセクトに頭突きをするビクティニ。直撃だが、効果はいまひとつだ。
『効かねえなぁ! シザークロス!』
「かわしてサイコキネシス!」
 両手の爪を交差させ、斬りかかるゲノセクト。ビクティニは後ろに飛んでかわすと、念波をゲノセクトへとぶつける。
『だから効かねえっつの! 追いかけろゲノセクト! シザークロス!』
 ゲノセクトは体を折り畳み、飛行形態となってビクティニへと一直線に飛行する。しかし、

「メロエッタ、サイコショック」

 直後、どこからともなく放たれた念波がゲノセクトに直撃。ゲノセクトは動きを止めた。
『……こっちにもいやがったか』
 念波を放ったのは、人型のポケモンだ。五線譜を思わせる長い髪をした、歌姫のような女性型のポケモン。
 旋律ポケモン、メロエッタ。そして、開いたボールを手にした、シスタの姿。
「お供します」
「シスタ……ありがとう」
 軽く言葉を交わすと、ビクティニとメロエッタは動き出す。
「ビクティニ、火炎弾!」
「メロエッタ、守る」
 メロエッタが結界を張った直後、ビクティニは火球を四方八方に飛ばす。メロエッタにも火球は飛んでくるが、守るでシャットアウト。実質ゲノセクトにだけ、火球は襲い掛かる。
『ちっ、守る!』
 ゲノセクトも結界を張って火球を防ぐが、
「古の歌!」
 直後、メロエッタの歌声がゲノセクトを攻撃。効果はいまひとつだが、体力が多いとは言えないゲノセクトにとってはあまり攻撃は受けたくない。
「ビクティニ、火炎弾!」
「メロエッタ、守るです」
 そしてまた、ビクティニの火炎弾が乱射された。メロエッタは守るで火球を防御。ゲノセクトにも火球が襲い掛かる。
『くっそ、守る!』
 ゲノセクトはまたしても守るで火球を防御するが、すぐにメロエッタがゲノセクト接近する。
「インファイト!」
『!?』
 メロエッタは踊るような動きで拳や蹴りを繰り出し、ゲノセクトを吹っ飛ばす。その姿はさっきまでとはちがい、歌姫ではなく踊子のようだ。
『そうか古の歌……! 面倒だな。ゲノセクト、マグネットボム!』
 ゲノセクトは磁力を帯びた爆弾を多数浮かべ、ビクティニとメロエッタに向けて発射する。
「ビクティニ、サイコキネシスだ」
「メロエッタ、サイコショックです」
 ビクティニとメロエッタはそれぞれ念波を放ち、爆弾を破壊する。しかし、
「テクノバスター!」
 直後に紺色の砲弾が二発連続で放たれ、ビクティニとメロエッタに直撃する。
「ゴーストタイプのテクノバスター……! 全タイプの攻撃が撃てるっていうのは、本当だったのか」
『たりめーだ。僕は自分の実験結果には嘘はつかねーぜ。ほらもう一発! テクノバスター!』
 今度は黒色の砲弾をビクティニ向けて発射する。おそらく悪タイプの攻撃だ。
「……いいよ。それじゃあこっちも、最大級の技で迎え撃とうか」
 刹那、ビクティニの耳に炎が灯る。炎は少しずつ勢いを増していき、やがて強大な爆炎となる。

「ビクティニ、Vジェネレート!」

 暗黒の砲弾と、勝利の爆炎が、ぶつかり合う——



「うわ、広……!」
 ひとまず空中都市まで辿り着いたイリスたちが漏らした一言は、それだった。
 ただひたすらに広い街だ。イリスらが降り立ったのは石作りの家が立ち並ぶ住宅街のような場所で、奥には森や塔、機械的な建物に、果ては城まである。恐らく、ヒウンシティよりもよりも大きいだろう。
「ゲーチスがいるとしたら、あの城かな」
「どうだろうな。もしかしたらあっちの研究所っぽい建物かもしれねえし、塔のてっぺんかもしれねえぞ」
「森の中という可能性も捨てきれませんね」
「案外、この街の中にいるんじゃない?」
 ともあれ、ゲーチスがどこにいるのかは現時点では不明だ。この広い都市を虱潰しに探していくしかないだろう。
「……まぁ、つっても。やっぱり邪魔は入るみたいだけどな」
 イリゼが視線を立ち並ぶ家々に向ける。風化しており、いつ崩れてもおかしくないような家だが、その中から何者かの気配を感じる。それも多くの家から多数の気配だ。今イリスたちは、かなりの大軍に囲まれているだろう。
「なら、こっちから引っ張り出す! メタゲラス、地震!」
 イリスは素早くボールからメタゲラスを繰り出し、技を指示。メタゲラスもすぐさま地面を揺るがす地震を放つ。
 この時イリスは、家ごと崩して一網打尽にするつもりだったが、家は思いのほか頑丈で、風化していながらも崩れることはなかった。
 しかし代わりに、大量の下っ端たちが雪崩れ込むようにして家々から飛び出し、イリスたちに襲い掛かる。
「これは多いねぇ、流石は敵の本拠地ってところかな?」
「呑気なこと言ってる場合か! 流石にこの量を相手にするのはきついぜ」
 皆それぞれボールを構えるものの、下っ端は相当数いる。全て倒すには、時間も労力もかかるだろう。
「ここは分散した方がいいかもね。この広さの街を全員で固まって動いていても非効率的だ。それなら散開して、個々人で動いた方がいい」
「そうね。皆そう簡単にやられはしないだろうし、まずは下っ端の大軍を突っ切って、それからゲーチスを探した方がいいかもしれない」
 というわけで方針は決まり、まずは大勢の下っ端片付けることとなった。
「とりあえず道を空ければいいんだろ? イリス、ロキ! お前らも手伝えよ。ぶちかませオニゴーリ、地震!」
「元からそのつもりだったけどね。頼むよディザソル、氷柱落とし!」
 イリゼとイリスはそれぞれポケモンを繰り出し、下っ端たちの動きを止める。
「イリゼは相変わらず人使いが荒いなぁ、ボクはこういう荒っぽい作業は苦手なのに……でもまあ、今はそんなこと言ってる場合じゃないよね。マイプリンセス、シャワーズ。ハイドロポンプ」
 そしてそこに、ロキのシャワーズが水流を放ち、多数の下っ端を押し飛ばした。だが、まだいたるところに下っ端たちが潜んでいる。
「ディザソル、辻斬り!」
 英雄たちのイッシュを救う戦いは、まだ始まったばかりである——



第零幕、これにて終了です。前作の伏線も、今回で回収し終えました。とはいえ、色々詰め込んだせいで内容は保証しかねますが。とりあえず次回から第二節以降に入るのですが、少し注意を。まず次に更新するのは第二節なのですが、その次の更新も第二節とは限りません。簡単に言えば、今までのプラズマ団基地での戦いのように、色々なバトルをオムニバス形式で更新していくのですが、目次にする場合は各節の主役となる人たちのバトルになります。なんだか上手く説明できている気がしませんが、まあ更新された後に目次を見れば分かると思います。そして次回以降は、文字数とか雰囲気とか諸々の関係上、あとがきは総カットです。たぶん白黒の作品では前代未聞です。というわけで次回、第二節以降のバトルとなります。明かされる7Pたちの過去や、英雄たちとの因縁の決着などを、お楽しみに。