二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 516章 イリゼvsアシド ( No.765 )
- 日時: 2013/03/19 02:09
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
下っ端の大軍を突き抜け、一人先走っていったイリゼが辿り着いたのは、古代の匂いが漂うこの都市で最も近代的なデザインの建物だ。
ガラス扉は自動で開き、内装も機械的。さらに奥に進むと、照明は暗くなり、床や壁、天井には幾重ものコードが伸びている。
どんどん奥へと進み、恐らく最深部と思われる部屋に、イリゼは到達した。何故そこが最深部だと思ったのかというと、それは単純明快。
この建物の主が鎮座していたからだ。
「ケヒャハハハ! ようこそ、僕のラボへ。歓迎するぜ、前代英雄」
高笑いながらイリゼを出迎えたのは、紫色の髪にGENIUSとプリントされたTシャツの上から白衣を羽織った男。首からは、プラズマ団の紋章が描かれたプレートを下げている。
毒邪隊統率、序列七位——7P、アシド。
「お前とはいっぺん戦ってみたかったんだよ。現英雄のデータは腐るほどあるが、父親であるお前のデータは全然なくてよー。だが、最後の最後でこうして直接対決ができるとは、夢にも思わなかった。ケヒャハハハ!」
ホログラムでも人工知能でもない本物のアシドは心底嬉しそうに笑うが、イリゼは全く笑っていない。むしろ不機嫌そうだ。
「……データが目的ってことは、実際に俺とまともな勝負をするつもりはねぇってわけか。くだらねぇ」
「そう言うなよ、前代英雄。データをとるのが目的だからって、本気でバトらないわけじゃない。むしろ、本気のお前のデータが欲しいんだよ」
言いながらアシドとイリゼは、それぞれボールを構えた。なんにせよ、アシドもイリゼも、やる気はあるようだ。
「勝負は分かりやすく三対三でいいか? あんまだらだらしててもしゃーねーしな」
「好きにしろよ。俺はお前をぶっ飛ばして、他の7Pとやらも潰すんだ。そんで次は雑魚狩りだ。スケジュールが詰まってんだよ」
「余裕だなぁ、僕に勝つのが前提かよ。確かに僕は7Pじゃあ一番弱い。その分をプラズマ団の科学力を上げることに努めたからな。だが、そんじょそこらの四天王は、余裕で薙ぎ払えるぜ?」
「だから、その程度なら余裕でぶっ倒せるつってんだよ! ぶちかませ、カンカーン!」
「そうかよ! なら、実験スタートだ、ダンカンス!」
イリゼが繰り出したのは、赤い球状の体にエイのようなヒレが付いたポケモン。日照りポケモン、カンカーン。
カンカーンが場に出ると、薄暗い室内は一気に明るくなった。カンカーンの特性、日照りが発動し、日差しが強い状態となったのだ。
対するアシドが繰り出すのは、石頭ポケモン、ダンカンス。異常に大きな球状の頭を持つ、シーラカンスのようなポケモンだ。
ダンカンスが場に出ると、突如、縁をなぞるように数十cmほどのガラスが出て来て、フィールドの四方を覆ってしまう。さらにフィールドには水が注ぎ込まれ、ちょうどダンカンスの高さ分の水が、フィールドに満たされる。
「……こっちは特性で下地作ってんのに、そっちは直接手ぇ出すんかよ」
「邪道か? だがそれが僕だぜ。ケヒャハハハ! それに、今回の戦いは戦争だ。卑怯とか汚いとか、言ってる場合じゃねえだろ」
「……それもそうか」
これはアシドの言うことが正しい。そもそも悪の組織に対して卑怯汚いと言う方が間違っているのだ。それに戦場がアウェーである以上、相手側に有利なのは致し方なのないこと。ここは素直に退くしかない。
「水と岩か。俺のデータはないとか言ってたが、どういうポケモンを使うのかは分かってるみてぇだな」
「あ? いやいや、これはまったくの偶然だよ。お前のデータは本当にねえんだよ。分かってんのは、お前が前代英雄で、現英雄の父親だってこと。あとは精々、最強メンバーは今まで使っていたポケモンとは別にいるってことくらいだ」
何気なくイリゼがそう呟くと、アシドは少し呆気に取られ、手を横に振って否定した。
「なんでもいいが、そろそろ始めようぜ。こっちは時間も押してんだ」
「ああ。お前のデータ、存分にとらせてもらうぜ」
そして、二人と二匹は、同時に動き出した。
「カンカーン、ウッドハンマー!」
「ダンカンス、諸刃の頭突き!」
カンカーンは水面すれすれを飛び、樹木の力を宿した拳を振りかざす。
ダンカンスは水面から顔を半分出した状態で、凄まじい殺気を発しながら突貫する。
両者の攻撃が激しくぶつかり合ったが、結果はあっさり決まった。
「カンカーン!」
カンカーンが大きく吹っ飛ばされて、ガラスに激突。その衝撃でひび一つ入らなかったことと、ぶつかった際の音からして、恐らくは強化ガラスだろう。
カンカーンとダンカンス。素の攻撃力ではどちらも同じくらいなのだろうが、やはり諸刃の頭突きという技の威力は凄まじい。しかもダンカンスは特性、石頭により、諸刃の頭突きの反動を受けないというのだから、恐ろしい限りだ。
「……カンカーン、サイコバレット!」
今度は遠距離から攻めるつもりなのか、カンカーンは念力を固めて作り出した銃弾を乱射するが
「弾き返せ! スターフリーズ!」
ダンカンスも巨大な星型の氷塊を飛ばそ、銃弾を弾いてそのままカンカーンに直撃させる。
「地震だ!」
「っ! ぶち壊す!」
続けてダンカンスは地面を揺るがして地震を放つが、カンカーンも素早く地面に拳を叩き付け、地震を相殺した。
しかし、
「スプラッシュ!」
直後にダンカンスが水飛沫を散らしながら特攻し、カンカーンを突き飛ばした。日照りで威力は半減だが、タイプ一致に効果抜群なので、ダメージはそれなりにあるだろう。
「もう一発スプラッシュ!」
「っ……調子に乗んな! カンカーン、ぶち壊す!」
再び特攻してきたダンカンスを、カンカーンは上から思い切りヒレを叩きつけることで強引に止めてしまった。
「ウッドハンマー!」
「スプラッシュ!」
続けて樹木の力を込めた拳を振り下ろすカンカーンだが、ダンカンスは身を捻ってそれをかわし、飛沫を散らしながら尻尾をカンカーンにぶつけ、吹っ飛ばした。
「追撃だ! スターフリーズ!」
さらに星型の氷塊も直撃させ、追撃をかける。
「くっ、最弱とか言うわりには、案外強えじゃねぇか……!」
「ケヒャハハ! 当然だ。今の僕のポケモンは、最高状態までチューンアップさせてっからよ。既に解放も済んでる。今ならフォレスの野郎にも負ける気がしねーよ。ダンカンス、地震!」
強気な態度のまま、アシドは技を指示。ダンカンスが強力な地震を引き起こす。
「かわしてサイコバレット!」
カンカーンも大きく飛び、地震を回避。そのまま念力の銃弾をダンカンスへと撃ち込むが、防御の高いダンカンスだ。まだまだ余裕の表情をしている。
「もう一発だ! サイコバレット!」
「突き抜けろ! 諸刃の頭突き!」
カンカーンは再び念力の銃弾を連射するが、今度はダンカンスもただ喰らうだけでなく、銃弾を受けながらも凄まじい勢いで突っ込んで来た。
「ちっ、もう避けられねぇか……ぶち壊す!」
もう回避は手遅れだと判断し、カンカーンはすべてを破壊する勢いで拳を突き出すが、ダンカンスの頭突きの方がずっと威力が高い。そのため、カンカーンはあえなく吹っ飛ばされ、強化ガラスに叩き付けられる。
「スプラッシュだ!」
そこにダンカンスが、飛沫を散らしながら特攻。カンカーンへと迫る。
「寄せつけるな! カンカーン、サイコバレット!」
対するカンカーンは念力の銃弾を乱射してダンカンスを銃撃。諸刃の頭突きよりも勢いの劣るスプラッシュでは突き抜けることができず、ダンカンスは中途で止まってしまう。
「今だ! カンカーン、フレアドライブ!」
そこでカンカーンは全身に燃え盛る爆炎を纏い、ダンカンスへと突撃。日照りで威力が増したフレアドライブは強烈の一言に尽き、如何に効果いまひとつでも、それなりのダメージは通る。
「終わらせろカンカーン! ウッドハンマー!」
最後にとどめとして、カンカーンは樹木の力を宿した拳を振り上げるが、
「そいつは食らいたくねーな。スターフリーズ!」
振り下ろす直前でダンカンスは星型の氷塊を発射し、カンカーンを押し戻した。よってウッドハンマーは、ダンカンスには届かない。
「ダンカンス、諸刃の頭突き!」
さらにダンカンスは、身を削るような凄まじい勢いでカンカーンへと突貫する。
効果抜群に加えてタイプ一致。なにより素の威力が高い諸刃の頭突きをまともに受ければ、戦闘不能は必至だ。しかしカンカーンは動かない。
「まだだ、まだ動くなよ」
ジッと強化ガラスを背にしてダンカンスを見据えるカンカーン。その距離はぐんぐんと縮まっていき、あと少しで触れる距離までダンカンスが迫った刹那、カンカーンは動いた。
「飛べ!」
イリゼから発せられる短い指示で、カンカーンは真上に飛ぶ。するとダンカンスは強化ガラスに勢いよく激突した。
凄まじい激突音が鳴り響くが、強化ガラスもダンカンスも、傷一つつかない。しかしダンカンスは勢いを殺され、完全に停止していた。
そこを、カンカーンが襲う。
「今度こそ決めろカンカーン! ウッドハンマー!」
真上から落下してくるカンカーンは、樹木の力を拳に宿し、勢いよく振り下ろす。
「っ、ダンカンス!」
如何に強固なダンカンスと言えど、四倍弱点を突かれればひとたまりもない。その一撃で、ダンカンスは戦闘不能となった。