二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 517章 ミキvsフレイ ( No.766 )
- 日時: 2013/03/19 03:04
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
下っ端の大軍を突き抜け、街の道から少し外れたミキは、広場のような場所に辿り着いた。
円形の広場で外周は段々に高くなっており、コロシアムのようだ。
とりあえず一番下まで降りたミキが見据えるのは、広場の向かい側。そこでミキを待ち構えていた、一人の少女。
華奢な体躯を簡素な淡いピンク色の浴衣に身を包み、赤髪のポニーテール。背中には、プラズマ団の紋章が描かれた団扇を差している。
焦炎隊統率、序列六位——7P、フレイ。
「やっと来たねー。待ちくたびれちゃったよー」
彼女はいつものように間延びした口調で、そんなことを言う。
いつもと変わらぬ雰囲気、変わらぬ眼の彼女だが、一つだけ相違点がある。いつもはうつ伏せで寝そべっているのに、今は広場の観客席と思しき段の上に腰かけている。
「……まるで、私が来るのを分かっていたみたいな口調だね」
「んー? まー、来るのが分かってたっていうより、君はあたしのとこに来るはずなんだよねー。だってミキちゃん、一回あたしにフルボッコされてるしー」
ゆるやかな口調で挑発するフレイだが、ミキは簡単に乗ったりはしない。ただ、少し顔をしかめるだけだ。
「リベンジ、したいと思ってたんでしょー?」
その一言が、とどめだった。
「……うん。次こそは勝つよ。絶対に!」
素早くボールを取り出し、ミキは強気に宣言する。フレイはそれを見ても、表情一つ変えない。
「かっこかわいいっていうのかなー。まーなんでもいいけどー。そんじゃー始めよっかー? 前は三対三だったけど、今回は四対四でー。ちなみにあたしはもう解放してるから、手加減とかできないよー?」
言って、フレイも側に置いてあったボールを手に取り、放り投げる。
「ニートン、出番だよー」
「出て来て、ハンタマ!」
フレイの一番手は、怠けポケモン、ニートン。ぬいぐるみのようなずんぐりした体に、如何にも物臭な雰囲気を醸し出すポケモンだ。
対するミキが繰り出すのは、半霊ポケモン、ハンタマ。二足歩行の白いオコジョのような姿で、体からは黒い魂が飛び出している。
「……あたしが最初にニートン出すこと読んでのハンタマかー。常々思ってたことだけど、君にはセンスを感じるねー」
「それはどうも。ハンタマ、シャドーパンチ!」
フレイの言葉を軽く流し、ミキは先制の指示を出す。ハンタマは拳に影を纏わせると、ニートンに急接近。ニートンを殴りつける。
「ブレイズキック!」
そしてそのまま足に炎を灯し、回し蹴り。
「ニートン、シャドーパンチだよー」
対するニートンは、遠心力で腕を振り、影の拳でハンタマを引き剥がすが、実際の攻撃はいなされてしまい、ハンタマへのダメージはほとんどない。
「もういっちょー」
ニートンは続けて腕を振り、今度は影の拳を飛ばす。
「サイコバレット!」
しかしハンタマの発射した念力の銃弾で拳は消滅、ニートンもそのまま撃ち抜かれてしまう。
「んー、これはまずいかもー。ニートン、一旦回復ー。怠ける」
ニートンはぐったりと体を地面に預け、怠けるようにして体を休める。すると、ニートンの受けた傷がみるみるうちに癒えていくが、
「シャドーパンチ!」
怠けている最中にハンタマのシャドーパンチがニートンにクリティカルヒット。この一撃で怠けるは中断。ダメージで回復量も微量となってしまう。
「ブレイズキック!」
さらにハンタマは炎を灯した足でニートンに正面蹴りを食らわせ、後方へと吹っ飛ばす。
「サイコバレット!」
続けて念力の銃弾を連射し、ニートンを撃ち抜いて追撃する。
ニートンは防御寄りのステータスではあるが、全体的にあまり強いポケモンとは言えない。ハンタマの猛攻をこれだけ受ければ、そう長くはもたないだろう。
「ニートンが鈍いからって速攻で決めにかかってるねー。だったら……ニートン、怠ける」
ニートンは再び怠け、体力を回復する。しかしそこに、すかさずハンタマが接近し、
「ハンタマ、シャドーパンチ!」
影を纏った拳を叩き込む。
ニートンの怠けるは中断されてしまったが、同時に一瞬だけハンタマの動きも止まる。そして怠けるが中断されたということは、ニートンはいまから動くことができるということになる。つまり、
「ニートン、大欠伸だー」
ニートンは大きく口を開いて欠伸をし、ハンタマの眠気を誘う。これでハンタマは眠り状態、ここからニートンの反撃が始まる——はずだった。
「ハンタマ、ブレイズキック!」
ニートンが口を開いた瞬間、ニートンの顎にハンタマのブレイズキックが炸裂し、大欠伸は中断。どころかニートンは舌を噛み、悶え苦しんでいる。
「んんー、今のは速い……流石にあたしもびっくりだー。ニートン、大丈夫ー?」
フレイはハンタマの反射神経に驚きつつも、ニートンに声をかける。ニートンはなんとか態勢を立て直すが、まだ苦しそうにしていた。
「噛んだ舌に染みるかもだけど、我慢してねー。ハイドロポンプ」
ニートンは大きく息を吸い、直後、大量の水を噴射する。
「ハンタマ、かわしてブレイズキック!」
対するハンタマは跳躍して水を回避し、そのまま宙返りしつつ、炎を灯した足でニートンの脳天に踵落としを決める。
「続けてシャドーパンチ!」
「引き剥がしてー。ハイドロポンプ」
ハンタマが影の拳を繰り出し、ニートンもそれを阻止すべく水流を発射しようとするが、やはりハンタマの方が速く、ニートンは拳を喰らって吹っ飛ばされた。
「やっぱ相性が悪いなー」
フレイの言うように、これは相性が悪すぎる。ただタイプだけを見れば、格闘タイプがある分、通らない攻撃のあるハンタマが不利に見えるかもしれないが、ハンタマは高い機動力から効果抜群の技をほぼ確実に当てられるのに対し、ニートンは鈍足なため攻撃がかわせない。攻撃のモーションも遅く、攻撃する前にやられる。そもそも攻撃が遅いので避けられる、などといった面が出てしまう。
つまり単純な話、遅いニートンは速いハンタマには勝てないのだ。
しかしそこを引っくり返そうとするのが、7Pフレイだ。
「ニートン、シャドーパンチ。二発ねー」
ニートンは遠心力で腕を振り、二発のシャドーパンチを飛ばす。しかし影の拳はどちらも明後日の方へと飛んでいき、ハンタマは捉えない。
「続いてー、ハイドロポンプ」
そして直後、大量の水を噴射。水は一直線にハンタマへと向かっていく。
「ハンタマ、かわして!」
ハンタマにとって、直線軌道で襲い掛かってくる水流など恐れることはない。跳躍して簡単に回避する。
「シャドーパンチ!」
そしてそのまま、拳に影を纏い、ニートンを攻撃しようとするが、
「後ろ、注意ねー」
「え?」
直後、ハンタマの背後から二発の拳が襲い掛かる。効果抜群なので、ダメージは大きい。
「っ、やっぱり……!」
ミキは呻く。今の攻撃のからくりは単純だ。シャドーパンチは必中技で、飛ばせば敵を追尾する。それを利用し、最初、適当な方向へと飛ばしたシャドーパンチが戻って来たのだ。
「大抵の生き物は背後が死角だからねー。後ろからの攻撃にはどうしても反応が遅れちゃう。それは君のハンタマも例外じゃないっぽいねー。そんじゃーニートン、ハイドロポンプだよー」
ニートンは大きく息を吸い、大量の水を噴射する。
「っ、かわして!」
ハンタマはシャドーパンチを喰らって地面に落ちたものの、すぐに態勢を立て直し、真上にジャンプして水流をかわすが、
「追いかけてー」
ニートンもそのまま顔を上げ、水流の軌道を真上に修正。垂直に跳び上がったハンタマへと水流を命中させる。
「ハンタマ!」
「まだまだだよー。ニートン、シャドーパンチ」
続けてニートンは影の拳を飛ばす。必中技なので、ハンタマでもこの攻撃はかわすことができない。
「……ハンタマ、サイコバレット!」
それに対してハンタマがとった行動は、相殺。念力の銃弾を乱射し、影の拳を打ち消したのだ。
「ブレイズキック!」
さらにハンタマは足に炎を灯してニートンへと突っ込み、前蹴りを繰り出そうとするが、
「ハイドロポンプ」
直前でニートンもハイドロポンプを発射。ハンタマの足がなんとか水流を散らすが、ブレイズキックでは相性が悪く、ニートン程度の特攻でも相殺が精一杯だ。そして、
「ニートン、シャドーパンチ」
遠心力で腕を振り、ニートンの拳がハンタマへと直撃する——
「マッハパンチ」
「……え?」
——寸前で、ハンタマが消えた。
気付いた時には、ハンタマはニートンの背後に立っており、拳を構えている。ニートンは拳を振り切った姿勢で、完全に無防備。
「ハンタマ、シャドーパンチ!」
そしてハンタマの影の拳が、追尾するニートンの拳よりも早くニートンを直撃し、吹っ飛ばす。
地面を転がり倒れたニートンは、戦闘不能となった。
「……背後は生き物の死角、なんだよね」
ミキは得意げに言い、フレイも今の現象を理解する。
格闘タイプの技はゴーストタイプには効かない。これは格闘技をゴーストタイプに当てようとしても、そのまま透過するからだ。
逆に言えば、格闘技なら確実にゴーストタイプのポケモンを素通りし、通過できる。その性質を利用し、ハンタマはニートンの背後を取ったのだ。
「……戻ってー、ニートン」
フレイはニートンをボールに戻す。