二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:519章  ザキvsレイ ( No.768 )
日時: 2013/03/19 06:03
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 下っ端の大軍を突き抜け、ザキが向かったのは城だった。他の仲間たちを置いて、ザキは一人先走って城に突入した。
 城に入ってから、ザキは素直に上を目指さず、下へと続く階段を探し、地下へと歩を進めていく。
 地下へと進んでいったのには、理由が二つある。一つは、普通なら親玉は城の上階にいるものだが、盲点を突いて地下にいる可能性もあると思ったため。そしてもう一つは、なにかしらの冷たい気配を察知したため。
 ザキはゲーチスが地下にいる可能性に賭けて階下へと進んでいったが、しかし当たったのは直感で感じた後者だった。率直に言って、見つけたのはゲーチスではない。
 辿り着いたのは牢獄だった。四方は鉄格子で囲まれ、床や壁、天井は凍り付いている。まるで極寒地獄だ。
 そんな中、一人佇む女の姿が一つあった。
 簡素な水色のワンピースを着て、毛先の焦げた青い髪をロングヘアーにした女だ。非常に整った顔立ちをしているが、その眼差しは酷く冷たくて鋭い。髪にはプラズマ団の紋章の付いたヘアピンを付けている。
 氷霧隊統率、序列四位——7P、レイ。
「……よくここが分かりましたね。わたしとしては、誰にも来てほしくないので、この場所を持ち場にしたのですが」
「よく言うぜ。お前の気配、ビンビン感じたっつーの。まるで誘ってるみたいだったぜ」
 冷たく凍てつくような声のレイに対し、ザキは乱暴で荒々しい口調で返す。
 まったく正反対の性格をした二人だが、しかしやることは同じだ。
「わたしはこの最終決戦で、あなたがたと戦うつもりはなかったのですが……こうして相見えてしまえば致し方ありません。再三、戦わせて頂きましょう」
「こっちは端からそのつもりだ。つーかてめぇ、戦うつもりはねぇとか言っときながら、やる気満々じゃねぇか。まさか、あれだけバトっときながら、俺には気付かれないと思ったか?」
「…………」
 ザキに指摘され、鋭い眼差しで睨み付けるレイ。しかしザキは逆に睨み返し、文字通りの睨み合いとなった。
「……まあいいです。あなたは感情的なところがあるようですからね。話し合いなど、最初から期待してはいません」
「お前も感情的だろうが。なんだったか、感情の制御が利かないと力が暴走するんだったか?」
 レイの言うことに対し、逐一揚げ足を取るようなことを言うザキ。それに対し、レイの眼差しはどんどん険しくなっていく。
「……もういいです、始めましょう。勝負は四対四でいいですか?」
「構わねぇ」
「そうですか、では」
 レイはボールを手に取り、一番手のポケモンを繰り出す。同時にザキも、ボールを放り投げた。
「おいでなさい、ヤミクラゲ!」
「出て来い、ヘルガー!」
 レイが繰り出すのは、海月ポケモン、ヤミクラゲ。暗青色の体に赤いコア、黄色い触手を持つポケモンだ。
 ザキが繰り出すのは、ダークポケモン、ヘルガー。黒い狼のような出で立ちのポケモンで、尻尾や角は悪魔を思わせる意匠、首元には髑髏がある。
「……相も変わらず初手にヘルガーですか。ヤミクラゲとの相性を考えていないのでしょうか」
「どうだかな。俺だって、まったく何も考えてねぇわけじゃないんだぜ」
「そうですか……ヤミクラゲ、悪の波動!」
 先に動いたのはヤミクラゲだ。ヤミクラゲは悪意を波動に乗せ、ヘルガーへと発射する。
「ヘルガー、かわして放電!」
 対してヘルガーは小さな動きで波動をかわし、四方八方に電撃を撒き散らす。ヤミクラゲにもヒットしたが、特防の高いヤミクラゲでは、効果抜群でもそこまでのダメージにはならない。
「やっぱ特攻を上げるしかねぇか……ヘルガー、悪巧み!」
 ヘルガーは足を止め、脳を活性化させることで特攻を急上昇させようとするが、
「させませんよ。ヤミクラゲ、危険な毒素です」
 そこにヤミクラゲが毒素の集合体を放って妨害する。ヘルガーもこの攻撃は受けたくないので、悪巧みを中断して大きく跳び退った。
「気合球」
 ヤミクラゲは気合を凝縮した球体を発射し、ヘルガーに追撃をかける。
「かわして火炎放射!」
 ヘルガーも横に跳んで気合球を回避し、すぐさま灼熱の火炎を放つ。
「ダークロアーだ!」
 そして続け様に闇の咆哮も放ち、ヤミクラゲを攻撃。しかしこの連続攻撃はヤミクラゲには効果いまひとつ。大きなダメージにはならない。
「……悪巧み!」
「危険な毒素」
 頃合いを見てヘルガーは悪巧みをしようとするも、ヤミクラゲの放つ危険な毒素で妨害され、中断してしまう。
「以前は悪巧みを許したせいで追い込まれてしまいましたからね。今回は徹底的に邪魔させて頂きます。ヤミクラゲ、悪の波動」
 ヤミクラゲは悪意に満ちた波動を連続で発射する。波動は全てカーブを描きながら、ヘルガーへと襲い掛かる。
「ケッ……ヘルガー、放電!」
 ヘルガーは四方八方に電撃を撒き、襲い掛かる波動を全て相殺する。
 耐久力が極端に低いヘルガーにとっては、効果いまひとつの攻撃でも大ダメージになりかねない。ヤミクラゲの特攻も決して低くはないので、ヘルガーはヤミクラゲの攻撃を受けたくはない。
「もう一度、放電だ!」
 ヘルガーは再び電撃を撒き散らし、ヤミクラゲを攻撃するが、
「気合球です」
 特に堪えたわけでもないヤミクラゲが、気合を凝縮した球体を放って反撃に出る。
「火炎放射!」
 ヘルガーも燃え盛る火炎を放射して気合球を相殺し、
「ダークロアー!」
 闇の咆哮を放ってヤミクラゲを攻撃。しかし、やはりダメージは薄い。
(どのタイミングで悪巧みすっか……向こうは必至で悪巧みさせまいとしてるようだし、無理に能力上げんのは控えるべきか?)
 とはいえ、このままだとヤミクラゲに大したダメージが与えられないのも事実だ。せめて一回でも特攻が上がればいいのだが、その一回を作り出すのも、難しそうである。
「ヤミクラゲ、危険な毒素」
 ヤミクラゲは多量の毒素を集め、凝縮してヘルガーへと放つ。
「考えても何も出ねえか……ヘルガー、かわしてダークロアー!」
 ヘルガーは横に逸れて毒素を回避し、そのまま咆哮を放ってヤミクラゲを攻撃。さらに、
「放電!」
 電撃を撒き散らしてヤミクラゲを追撃する。効果抜群でも特防の高いヤミクラゲにはもう一つ決定打にならない攻撃だが、ここではザキに運が味方をした。

 電撃を受けたヤミクラゲは体を痙攣させ、麻痺してしまったのだ。

「ヤミクラゲ……!」
 体が痙攣し、上手く動けないヤミクラゲ。攻めるなら今が好機だが、
「ヘルガー、悪巧み!」
 ヘルガーは攻めず、脳を活性化させて特攻を高めようとする。
「っ、ヤミクラゲ、危険な毒素です!」
 それを妨害しようと、ヤミクラゲは危険な毒素を放とうとするが、麻痺で体が痙攣し、失敗に終わった。
「もう一回!」
 ヘルガーは続けて悪巧みを使用。特攻をさらに上昇させる。
「今度こそ。ヤミクラゲ、危険な毒素!」
 今度は毒素を放つことに成功したヤミクラゲだが、ヘルガーに毒素は当たらないどころか、
「火炎放射だ!」
 打ち消され、そのまま炎がヤミクラゲを襲う。特攻が四段階も上がったヘルガーだ。その火力は相当跳ね上がっているだろう。
「ここまで来たら最後まで上げとくか。ヘルガー、悪巧み」
「させません。ヤミクラゲ、悪の波動です!」
 悪巧みをしようとするヘルガーに向かって、ヤミクラゲは強大な悪意を波動に乗せ、速く大きな一発を発射。ヘルガーを吹っ飛ばした。
「追撃です。気合球」
「打ち消せ! ダークロアー!」
 思わぬ一撃に態勢を崩したヘルガーだが、すぐに立て直すと闇の咆哮を放って気合球を消し飛ばした。
「悪巧み!」
 そして直後、ヘルガーはさらに悪巧みで特攻を上げようとする。それを見かねてレイは、
「そこまでするのなら、もう決めてしまいましょう。ヤミクラゲ、大洪水です!」
 ワンチャンスの大技を指示する。ヤミクラゲはどこからともなく大量の水を発生させ、洪水の如き勢いでヘルガーを押し流す——はずだった。
 しかし寸でのところで麻痺が発動し、ヤミクラゲは体が痙攣してしまったため、行動不能。その隙にヘルガーは特攻をさらに上げ、最大まで上昇させた。
「結局、最後まで上げさせてしまいましたね……仕方ありません。差し違えるつもりで攻めますよ。ヤミクラゲ、連続で気合球です」
 ヤミクラゲは気合を凝縮させたいくつもの球体をヘルガーへと放つが、
「放電!」
 ヘルガーは全身から電撃を解き放つ。電撃は球体をことごとく破壊し、そのままヤミクラゲにも襲い掛かる。今度の放電は、かなりダメージが通っているように見える。
「……ヤミクラゲ、大洪水!」
「ヘルガー、ダークロアー!」
 ヤミクラゲはどこからともなく大量の水を発生させ、大きな洪水の如く水流と共にヘルガーを押し流そうとする。
 対するヘルガーは闇の咆哮を放ち、襲い来る水を消し飛ばす。それでも襲ってくる水を、片っ端から消しては消し、どんどん消し飛ばしていく。
 大洪水はヤミクラゲの剣であり盾だ。この攻撃が決まればヘルガーは倒れるだろう。しかし逆に押し返されれば、今度はヘルガーの攻撃でヤミクラゲがやられる。
 大洪水の圧倒的な水量と、ダークロアーがどこまで水を消し飛ばせるかの根競べ。その競争に、打ち勝ったのは——