二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 523章 Nvsゲーチス ( No.774 )
日時: 2013/03/19 20:53
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 下っ端の大軍を突き抜け、Nが向かったのはやはり城。真っ先に城へと向かったものは多数いるが、そのほとんどは途中の下っ端などに阻まれたり、罠にはまったり、中で7Pと戦ったりなどで、最上階までは辿り着けていない。
 しかしNは道中でほとんど敵とは遭遇せず、城の最上階にして最深部まで到達する。
 如何にも重厚そうな扉を開けると、そこには——
「……最初にここを訪れたのはあなたですか、N」
 目玉模様のある漆黒のコートに身を包み、右目には赤いモノクル。左手にはプラズマ団の紋章が描かれた、特徴的な杖を携えている。
 階下で戦う者たちの頂点にして、組織を統べる者——プラズマ団ボス、ゲーチス。
「まあ、英雄はガイア——いえ、ザートが相手をしているようですし、となればあなたが来るのが必然ですか」
 ゲーチスはNをジッと見据え、静かに呟く。頬は痩せこけているが、野望に満ちた眼差しは、今もなお、暗黒に輝いている。
「ゲーチス……僕は、あなたを倒しに来た」
「そうですか。あなた程度に、ワタクシが倒せるとでも?」
「そのためにみんなと一緒に強くなったんだ。もう、前の僕じゃない」
 真剣な眼でNはゲーチスを見つめる。対してゲーチスは、目こそ合わせているものの、Nのことなどまったく見ていなかった。
「……まあよいでしょう。キュレムを復活させるまで、まだ時間はたっぷりあります。その間に、ワタクシも体を慣らしておく必要がありそうです。あなた程度でも、準備運動くらいにはなるでしょう」
 口の左端を吊り上げ、歪に微笑むゲーチス。その手には、既にボールが握られていた。
「勝負は三対三です。それ以上でも構いませんが、あなたと戦う程度なら、このくらいが丁度いいでしょう」
「なんでもいい。とにかく僕は、あなたを止める、ゲーチス!」
 Nの叫びを合図に、両者はポケモンを繰り出す。
「恐れる民に闘士の戦慄を! バッフロン!」
「僕に力を貸して……! カクレオン!」
 ゲーチスが繰り出すのは、頭突き牛ポケモン、バッフロン。
 頭部がアフロ状になったバッファローのようなポケモンで、闘争心が全身から溢れ出している。
 Nが繰り出すのは、変色ポケモン、カクレオン。
 緑色の直立したカメレオンのようなポケモンで、腹には赤いギザギザ模様がある。
「カクレオンですか。その程度のポケモンでは、ワタクシのバッフロンは止められませんよ。アフロブレイク!」
 バッフロンは姿勢を低くし、頭を突き出して凄まじい気迫を発しながらカクレオンへと特攻する。
「カクレオン、かわすんだ!」
 カクレオンは横に跳んでアフロブレイクを回避。そして、

「スキルスワップ!」

 次に瞬間、カクレオンとバッフロンが光に包まれ、光から一本の筋が飛び出す。筋はお互いの体内へと入り込み、同時に光も消えた。
「おや、スキルスワップ……小賢しい技を使いますね」
 スキルスワップとは、特性を入れ替える技だ。中には入れ替えられない特性もあるが、この場合、カクレオンの特性である変色と、バッフロンの特性である捨て身が入れ替わったことになる。
「バッフロン、地震です!」
 特性が入れ替わったことなど気にもせず、バッフロンは地揺れを起こしてカクレオンを攻撃する。
「くっ、カクレオン、ドレインパンチだ!」
 カクレオンは地面を蹴り、バッフロンに接近。淡く光る拳を、バッフロンに叩き込む。すると、カクレオンとバッフロン、双方に変化が起きた。
 まずカクレオンは、ドレインパンチの効果で先ほど受けたダメージが回復する。そしてバッフロンは、一瞬だけだが、体色が茶色に変化した。
「カクレオン、続けて燕返しだ!」
 カクレオンは間髪入れずに攻撃を繰り出す。鋭い爪で素早くバッフロンを切り裂いた。
 だがその威力が、かなり高い。いや、ダメージが大きいというべきだろう。まるで効果抜群の攻撃でも喰らったかのように、バッフロンは呻き声を上げる。
「変色、ですか」
 ぼそりと、ゲーチスは呟く。
 カクレオンの特性は、変色。攻撃を受けると、その攻撃と同じタイプに変化するという特性だ。つまりバッフロンはドレインパンチを受けて格闘タイプに変化、そのまま燕返しを受けたため、燕返しが効果抜群となったのだ。
 そして今のバッフロンは、飛行タイプ。
「カクレオン、岩雪崩だ!」
 カクレオンは虚空から無数の岩石を降り注ぎ、バッフロンを攻撃。これも効果抜群となり、バッフロンは三連続で効果抜群の攻撃を受けたこととなる。
「ふむ、厄介な特性です。さっさと決めてしまいましょう。バッフロン、馬鹿力!」
 バッフロンは凄まじい覇気を発しながら、またもカクレオンへと突っ込んでいくが、
「かわすんだ!」
 単調な攻撃のバッフロンでは、カクレオンのつかみどころのない動きには対応できない。またもカクレオンに攻撃をかわされてしまった。
「ストーンエッジです!」
「かわしてドレインパンチ!」
 続けて鋭く尖った岩を連射するバッフロンだが、カクレオンは飛来する岩を次々とかわしていき、バッフロンに接近。光る拳を叩き込む。
「地震!」
「燕返し!」
 カクレオンを吹き飛ばそうと足を大きく上げたバッフロンだが、直後、カクレオンの鋭い爪に切り裂かれ、攻撃は中断された。
「まだだ! 岩雪崩!」
 さらに今度は虚空から岩を落として追撃。毎回効果抜群の攻撃を受けては、流石のバッフロンもそう長くはもたないだろう。
「引き剥がしなさい、バッフロン! 馬鹿力!」
 バッフロンは体内のリミッターを外し、凄まじい覇気を発しながら角を振り回す。カクレオンも決して耐久力が高いとは言えないので、攻撃力の高いバッフロンから効果抜群の攻撃は受けたくない。ここは素直に退いて、バッフロンから距離を取る。
「バッフロン、アフロブレイク!」
 バッフロンは頭を突出し、凄まじい勢いで突貫する。しかし特性、捨て身が無くなったことにより、最初の攻撃よりも勢いは落ちている。
 だがそれでも破壊力は十分ある。まともに喰らえばひとたまりもないだろう。だが、
「かわしてドレインパンチ!」
 カクレオンは軽快な動きでバッフロンの突撃を回避。そして淡く光る拳をバッフロンに叩き込んだ。
 ここまで、バッフロンは効果抜群の攻撃しか受けていない。ローテーションで変化するタイプに合わせて、カクレオンは的確に弱点を突いてくるのだから当然だ。もうバッフロンの体力も僅かだろう。
「そろそろかな……」
 そしてNはそんなバッフロンの様子を見て、小さく呟く。
「バッフロン、ストーンエッジです!」
 バッフロンは周囲に鋭く尖った岩を無数に浮かべ、カクレオンに向けて一斉に発射する。とにかく当てることを重視したのか、岩は広範囲に放たれており、回避は難しい。
「カクレオン、岩雪崩で防御するんだ!」
 そこでカクレオンは、虚空から岩を落として壁にし、ストーンエッジを防御する。こうすれば全ての岩をシャットアウトできる——と考えたのだが、それは些か考えが甘かった。
 バッフロンが発射した岩は、雪崩れ落ちてきた岩を突き抜けてカクレオンに突き刺さる。数こそ少ない上、岩雪崩で威力も減衰したため、ダメージはそこまで大きくない。
「やっぱり早く決めた方がいいか……カクレオン」
 Nはカクレオンを呼び、技の指示を出す。
 それは、

「スキルスワップ!」

 カクレオンとバッフロンは再び光に包まれ、互いの特性を入れ替える。カクレオンは変色、バッフロンは捨て身の特性を手に入れ、元の特性へと戻った。
「これは……!」
 変色という厄介極まりない特性が消えたというのに、ゲーチスは厳しい顔をしている。だが、よく考えればそれは当然のことだ。
 スキルスワップで入れ替わるのは、そのポケモンの特性だけ。それ以外の状態はそのままである。
 つまり、バッフロンは変色で変化したタイプそのままの状態になっているのだ。
 バッフロンが最後に受けたのはドレインパンチ。今のバッフロンは格闘タイプだ。そして、カクレオンが格闘タイプのポケモンに繰り出す技は、
「燕返し!」
 だった。
 カクレオンは高速でバッフロンに接近し、鋭い爪で切り裂く。必中技なので、かわすことはできない。
「このまま必中技で削り落とすつもりですか……!」
 不愉快とでも言いたげに顔を歪ませるゲーチスだが、Nとカクレオンの攻撃は止まらない。
「もう一度、燕返し!」
 返す刀でカクレオンは爪を振るい、バッフロンを切り裂く。
「燕返しだ!」
 またしても燕返し。バッフロンには幾重もの切り裂かれた筋が浮かび上がり、バッフロンの限界を表していた。
「引き剥がすのです、バッフロン! 地震!」
 バッフロンは地面を踏み揺らして地震を起こし、カクレオンは吹っ飛ばす。それにより、カクレオンとバッフロンの間に距離ができた。
「どうせ倒れるのなら、共倒れにしてやりましょう。バッフロン、アフロブレイク!」
 捨て身の特性を取り戻したバッフロンは、最初と同じような凄まじい勢いでカクレオンへと突撃する。この攻撃を受ければ、防御の低いカクレオンでは耐え切れないだろう。
 しかし、
「カクレオン、燕返し!」
 カクレオンも爪を構えて同時に走り出し、バッフロンと交錯する。
 しばらく共に静止していたが、やがて、変化が訪れる。

 ——倒れたのは、バッフロンだった。