二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 529章 殻 ( No.780 )
日時: 2013/03/20 23:07
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「エルレイド、シザークロス!」
「カモドック、シャドークロー!」
 エルレイドの十字に構えた刃と、カモドックの影を纏った爪がぶつかり合い、カモドックがエルレイドを押し切った。
 やはり殻を破るで攻撃力が上昇したカモドックは強敵だった。スピードはエルレイドにも影討ちがあるのである程度は補えるが、パワーだけはどうしようもない。真正面からカモドックとぶつかっても、押し切られてしまう。
「カモドック、ダストシュート!」
 カモドックはゴミの塊を生成し、エルレイドへと投げつける。殻を破るで攻撃力が上がっているため、塊はかなり大きい。
「やるしかないか……エルレイド、サイコバレット!」
 エルレイドは念力を固めた銃弾を無数に生成し、マシンガンの如く連射する。
 銃弾を何度も受けたダストシュートはバラバラに散ってしまい、残った銃弾がカモドックに襲い掛かるが、
「アクアテールだ!」
 カモドックは尻尾に水を纏わせ、横薙ぎに振るって飛来する銃弾を払い落としてしまう。
「シャドークロー!」
 さらに今度は爪に影を纏わせて突貫。エルレイドへと飛びかかる。
「影討ちだ!」
 エルレイドとしても効果抜群のシャドークローは喰らいたくないので、影の中に潜り込んでカモドックの攻撃を回避。背後から這い出て、カモドックに刃の一閃を浴びせる。
「続けてシザークロス!」
「アクアテールで吹き飛ばせ!」
 十字に刃を構えて追撃をかけるエルレイドだが、カモドックは後ろを向いたまま水を纏った尻尾を振るい、エルレイドを払い飛ばしてしまう。
 このように、正面から攻めても押し返されるが、後ろから攻めてもアクアテールで迎撃されるのがカモドックだ。影討ちのスピードには流石に対応しきれないようだが、普通に攻撃してもカモドックには届かない。
「さて、どうするか……」
 サイコバレットも、ダストシュートで銃弾を削り、アクアテールで薙ぎ払われればそれで終わりだ。カモドックにどうやって攻撃を当てようかと考えを巡らせるイリスだが、ザートは思考の時間をくれはしない。
「カモドック、ダストシュート!」
 カモドックは巨大なゴミの塊を生成し、エルレイドへと投げつける。
「だったら、エルレイド、かわしてサイコバレットだ!」
 エルレイドは飛来するダストシュートを横に跳んでかわし、すぐさま念力を固めた銃弾を乱射するが、
「跳べ! カモドック!」
 カモドックは砂地にも関わらず大きく跳躍し、銃弾を回避する。そして空中で宙返りしつつ、
「アクアテール!」
 水を纏った尻尾をエルレイドの脳天に叩き付けた。渾身のアクアテールが直撃し、エルレイドは思わずよろめいてしまう。
「好機を逃すな! カモドック、シャドークロー!」
 カモドックは一直線にエルレイドへと駆け出す。爪には影が纏っており、喰らえば戦闘不能か致命傷。しかし回避は難しく、影討ちやシザークロスでは間に合わない。
「くっ、仕方ない……エルレイド、インファイト!」
 カモドックの爪がエルレイドを捉える直前、エルレイドは拳を振り上げ、カモドックを打ち上げた。
「っ!」
 そして跳躍し、空中でカモドックに怒涛の連続攻撃を浴びせる。拳による攻撃だけでなく、刃も使用した斬撃を絡めた、エルレイド独自のインファイト。最後は刃を振り下ろし、カモドックを地面に叩き落とした。
「カモドック!」
 砂煙が舞う。普通のポケモンなら、防御が二段階も下がった状態でタイプ一致のインファイトを喰らえばひとたまりもないだろう。しかし、砂煙が晴れるとそこには、四本足でしっかりと身を起こしたカモドックの姿があった。
「やっぱり駄目か……!」
 殻を破るで防御が下がっているとはいえ、カモドックは素の防御がとても高い。しかも格闘技であるインファイトは毒タイプのカモドックに対して効果いまひとつ。大打撃を与えるには至らなかった。
 しかも今のインファイトでエルレイドの防御は大きく下降してしまった。エルレイドはカモドックと違って素の防御が高いわけではないので、次にカモドックの攻撃をまともに喰らえば、戦闘不能は免れないだろう。
「今が攻め時と見た。カモドック、シャドークロー!」
 カモドックは爪に影を纏わせ、エルレイド目掛けて特攻する。
「エルレイド、影討ち!」
 対するエルレイドは影に潜り込んで影の爪を回避。カモドックの背に、刃の先端を突き込む。
「一旦退いてサイコバレット!」
 いつもならそこからシザークロスで追撃するのだが、カモドックが相手ではアクアテールが飛んで来かねない。エルレイドは一度後方へと下がって、念力の銃弾を乱射する。
「効かん! カモドック、ダストシュートだ!」
 カモドックは巨大なゴミの塊を投げつけて撃ち込まれる銃弾を防御。分散させて撃ったため、銃弾は突き抜けずにゴミの塊を相殺するだけで終わった。
「もう一度、ダストシュート!」
 一発目は防御目的。二発目は攻撃目的で、カモドックは二発目のダストシュートを発射する。
「かわしてサイコバレットだ!」
 その塊をかわし、念力の銃弾を生成。エルレイドはカモドックへと銃弾を撃ち込もうとするが、

「カモドック、シャドークロー!」

 いつの間にかカモドックはエルレイドに迫っており、影の爪を振りかざしていた。
「っ……!」
 一発目のダストシュートは防御。二発目のダストシュートは攻撃——と見せかけた目くらまし。本命はシャドークローだった。
 咄嗟に防御するエルレイド。固めている途中だった念力の銃弾も気休め程度の盾となるが、所詮は気休め。エルレイドは容易く引き裂かれた。
「とどめだ、ダストシュート!」
 続いてカモドックはゴミの塊を振り落すように投げつけ、エルレイドに直撃させる。
「エルレイド!」
 効果抜群の攻撃に、タイプ一致の大技。この連続攻撃を受け、エルレイドは戦闘不能となった。
「っぅ……戻って、エルレイド」
 イリスは悔しそうにエルレイドをボールに戻し、次のボールを取り出した。
「先手は取られたか……でも、ここから取り戻して、一気に巻き返す! 次は頼んだよ、ズルズキン!」
 続くイリスの二番手は、悪党ポケモン、ズルズキン。
 オレンジ色のトカゲ人間のような姿で、頭部には赤いトサカ。脱皮して弛んだ皮をそのまま着ており、目つきは不良のように悪い。
「ここでズルズキンか。そのような鈍いポケモンで、我のカモドックに追いつけると思ったか」
「カモドックだって素のスピードは言うほど速くないだろ。それに、スピードに関しては心配には及ばないよ」
 イリスはズルズキンを一瞥し、イリゼとの特訓を思い出す。そして、

「ズルズキン、龍の舞!」

 次の瞬間、ズルズキンは龍の如く力強く舞う。
「む……!」
 その様子を見て、ザートは少し顔をしかめた。
「父さんのカイリューとバトルを重ねて、ようやく覚えた技だ。攻めるよズルズキン。ぶち壊す!」
 ズルズキンは地面を蹴り、全てを破壊してしまうかのような凄まじい勢いで拳を振りかぶる。
「まずいな。カモドック、跳べ! アクアテール!」
 カモドックは跳躍してズルズキンの拳をかわし、水を纏った尻尾を振り下ろそうとするが、
「遅い! 跳び膝蹴り!」
 カモドックが尻尾を振り下ろすよりも速く、ズルズキンの膝がカモドックを捉え、吹き飛ばした。
「カモドック!」
 数秒後、カモドックは砂漠のど真ん中にドサッと落下する。効果いまひとつでも、能力に二段階分の差がついていたため、耐え切れずに戦闘不能となった。
「むぅ、撤退だ。戻れカモドック」
 ザートは戦闘不能となったカモドックをボールに戻す。
「ズルズキンを相手にするならば……こいつだ」
 そして次なるボールを構えた。
「出撃! トノッパー!」
 ザートの二番手は、バッタポケモン、トノッパー。
 こちらは分類通り、緑色のバッタのようなポケモンだ。頭部には卵の殻をかぶっている。
「トノッパー? ガルラーダじゃなくて……?」
 イリスはザートの選出に、疑問符を浮かべる。格闘タイプを持つズルズキンに対しては、飛行タイプガルラーダの方が有利なはず。なのにザートは、ここでトノッパーを繰り出した。
「我がガルラーダは、物理攻撃一本なのでな。ズルズキンとは、接近戦ではやり合いたくない。ゆえに特殊攻撃を得意とするトノッパーなのだ」
 ザートはイリスの疑問に答えた。それはミスではなく、余裕と自信の表れだろう。
「それに、トノッパーでもズルズキンの弱点を突くことくらいはできる。エアスラッシュ!」
 トノッパーは空気の刃を無数に飛ばす。その数はかなり多く、イリスのリーテイルにも匹敵するかもしれない。
「ズルズキン、龍の舞だ!」
 対するズルズキンは、龍の如く舞い、飛んでくる刃をひたすらかわす。そして、
「諸刃の頭突き!」
 姿勢を低くし、頭を突き出してトノッパーへと突っ込んでいく。龍の舞で攻撃も素早さも二倍になっているので、途轍もない勢いだ。しかし、
「トノッパー、殻を破る!」
 突如、トノッパーの頭部にある殻が砕け散った。
「っ! こいつも殻を破るを……!」
 先ほど殻を破ったカモドックに先勝されたので、イリスは歯噛みする。
「行くぞ、トノッパー! 攪乱飛行!」
 そして次の瞬間。トノッパーが動き——消えた。