二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 531章 激突 ( No.782 )
日時: 2013/03/20 23:09
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「ノコウテイ、出番だよー」
 フレイの三番手は、土蛇ポケモン、ノコウテイ。
 黄色と水色の明るい体色の巨大なツチノコのような姿をしたポケモンで、腹には四対の足、背中には一対の羽が生えている。
 ノコウテイはノーマルタイプ。攻撃するにしても防御するにしてもハンタマとは相性が悪い。
 しかし、
「戻って、ハンタマ」
 ミキはハンタマをボールに戻した。
「へぇー……」
 それを見てフレイは、含みのある笑みを浮かべる。
「戻すんだー。ノコウテイには相性いいのにー」
「二連戦でハンタマも疲れてるからね。それに……」
 それ以上ミキは言わず、次のポケモンを繰り出した。
「出て来て、カブトプス!」
 ミキが交代させるのは、甲羅ポケモン、カブトプス。
 シャープな体躯のポケモンで、銀色に煌めく両手の鎌など、カマキリに似たシルエット。頭部には甲羅の面影があり、外骨格に覆われた体をしている。
「カブトプスかー、まーノコウテイには有利っちゃ有利だけどさー」
 それはノーマル技が通りにくいと言うだけの話だ。それならまったく通らないハンタマの方がいいはず。疲れているという理由を考慮しても、わざわざ交代するほどのことだろうかと、フレイは思う。
「カブトプス、ステルスロック!」
 先に動いたのはカブトプスだが、すぐに攻撃を仕掛けはせず、周囲に鋭く尖った岩を撒き散らすだけだった。
 だがその行動で、フレイは何かを察したらしい。
「ふーん、へぇー、そーゆーことねー。だったらこっちも攻めた方がいいかなー。ノコウテイ、アクアテール」
 ノコウテイは跳ねるように飛び上がり、尻尾に水を纏わせてカブトプスに振り下ろすが、
「かわしてメタルニッパー!」
 カブトプスはバックステップでアクアテールを避けると、鈍色に光る鎌を振るい、ノコウテイを三連続で切り裂く。
「スプラッシュ!」
 そして四発目に、水纏った鎌を叩きつけた。
「もう一度スプラッシュ!」
「潜る」
 続けて五発目の攻撃を繰り出すカブトプスだが、ノコウテイが地中に潜ってしまったために避けられてしまった。
 直後、ノコウテイは地面から飛び出し、カブトプスを吹っ飛ばす。
「うっ、カブトプス、ストーンエッジ!」
「怒りの炎だよー」
 カブトプスは吹っ飛ばされながらも鋭く尖った岩を無数に浮かべ、ノコウテイ目掛けて一斉に発射する。ノコウテイも怒りの炎で相殺を試みるが、岩は炎を突き抜け、ノコウテイに突き刺さった。
「メタルニッパー!」
 着地したカブトプスは、地面を蹴ってノコウテイに急接近。鎌を三回振るい、ノコウテイを切り刻む。
「スプラッシュ!」
「アクアテール」
 続けて水流を纏った鎌を振るうカブトプスだったが、ノコウテイも尻尾に水を纏わせて薙ぎ払い、カブトプスを吹っ飛ばした。
「追撃だよー、潜る」
 さらにノコウテイは地中に潜り、追撃を狙う。
「カブトプス、ノコウテイが出て来た瞬間に迎え撃つよ。集中して」
 カブトプスはなんとか着地し、すぐさま目を閉じて精神を集中させる。ノコウテイは巨体なので、地中での動きが読みやすい。今どこにいるのか、どのタイミングで攻撃を仕掛けるのかを先読みし、迎撃態勢を取って、
「今だよカブトプス! スプラッシュ!」
 ノコウテイが飛び出て来た瞬間、カブトプスは水を纏った鎌を振るってノコウテイを吹っ飛ばした。
「ストーンエッジ!」
 そしてすぐに鋭く尖った岩を連射。ノコウテイに連続で突き刺し、追い打ちをかける。
「うー、まさかノコウテイの動きを読まれるとはねー。だったら、これだー、怒りの炎」
 ノコウテイは怒り狂うように燃え盛る憤怒の炎を放つ。炎はうねるようにカブトプスへと襲い掛かり、その身を焼いていくが、威力は四分の一。ダメージはほとんどない。
「カブトプス、一気に攻め込むよ。メタルニッパー!」
 炎が消えるのを待たずして、カブトプスは駆け出す。そして両手の鎌で、ノコウテイを切り裂こうとするが、
「っ!? いない……?」
 炎を抜けた先に、ノコウテイはいなかった。軽く周囲と、上にも視線を向けるが、目立つはずの巨体はどこにもない。となると、
「……っ! 下——!」
 ミキが気付いた時には、もう遅かった。
 ノコウテイが地面から飛び出し、カブトプスを吹っ飛ばす。受け身も取れず、カブトプスは地面に叩き付けられた。
「もう一発、怒りの炎」
 ノコウテイは再び怒りの炎を放つ。炎は倒れているカブトプスに追い打ちをかけるが、やはりダメージはほとんどない。
「カブトプス、スプラッシュ!」
 カブトプスは、今度は全身に水流を纏い、飛沫を散らして炎を消しながら駆け出した。だが、その先にノコウテイはいない。
「また潜る……ってことは下から——」
 と、ミキが視線を地面に落とした直後、カブトプスに影が差す。
「アクアテール」
「え……?」
 直後、上空から振り下ろされたアクアテールの直撃を受け、カブトプスは吹っ飛ばされた。
「カブトプス!」
 一回目は潜るで地中から。二回目は最初の潜るで地中からと思わせておいて、上空からアクアテール。カブトプスも決して耐久力が高いわけではないので、そろそろ限界も近いだろう。
「……戻って、カブトプス」
 そんな状態のカブトプスを見て、ミキはポケモンを交代させる。
「また交代? 一匹で突き進んだりはしないのかなー?」
「いつもならそうするんだけど、今回だけは負けられないからね。こうでもしないと、たぶん勝てない」
 最後に控えるポケモンには、とミキは心の中で付け足す。
(あの子の最後のポケモンから考えて、カミギリーは不利。シルドールも、鬼火は効かないから……やっぱり、このポケモンかな)
 逡巡し、ミキは三番目のポケモンが入ったボールを手に取った。
「頼んだよ、ポリゴンZ!」
 ミキが交代で出すのは、バーチャルポケモン、ポリゴンZ。
 かなりエキセントリックな容姿をしたポケモンだ。アヒルのようなデザインだが、手のような部分は切り離され、足は一本。体は球状で、頭には嘴のようなものとアンテナのような突起がある。濃い色のピンクと青というカラーリングも特徴的だ。
「ポリゴンZかー……確か特性はダウンロードだったよねー。となると、ノコウテイは特防の方がちょっとだけ低いから、上がるのは特攻かー」
 ただでさえトップクラスの特攻を誇るポリゴンZの攻撃力がさらに上乗せされるというのは、かなり恐ろしいものがある。だがフレイは、にへらーとした緩い笑みを浮かべるだけで、全く動じていない。
「とりあえず攻撃かなー。ノコウテイ、まずはアクアテール」
 大きく飛び跳ね、ノコウテイは水を纏わせた尻尾をポリゴンZに振り下ろそうとするが、
「ポリゴンZ、ハイドロポンプ!」
 ポリゴンZも直前で大量の水を噴射し、落下の勢いもあるはずのノコウテイを押し返した。
「おー、やーるねー。だったらノコウテイ、潜るだよー」
 落下したノコウテイはすぐに地面に潜ってしまう。また地中から奇襲を仕掛けるつもりなのだろう。だが、
「地面にハイドロポンプ!」
 ポリゴンZは地面に向けて大量の水を噴射する。それも長時間、地面がぐちゃぐちゃにぬかるむほどの水流を発射し、ポリゴンZの周囲は水浸しになる。
 しばらくしてノコウテイが這い出てくるが、地面がドロドロに液状化しており、上手く出て来れない様子。じたばたともがいて少しずつ地上に出て来るが、その鈍い動きは、ポリゴンZの格好の的である。
「ポリゴンZ、破壊光線!」
 ポリゴンZはもたもたしているノコウテイに容赦なく極太の赤黒い光線を発射する。その一撃で地面は抉れ、ノコウテイは空高く吹っ飛ばされる。
「すっげー威力……」
 ダウンロードの特性を考えても、今の破壊光線の威力は凄まじかった。流石のフレイもいつもの調子を保っていない。
「でも……そっちのノコウテイも、人のこと言えないよ」
 驚嘆するに値するポリゴンZの破壊光線だが、それ以上に驚くべきはノコウテイだった。至近距離と言うほどではないが、比較的近距離で、防御もせずに特攻の上がったポリゴンZの破壊光線の直撃を受けてもなお、まだ戦闘不能には至らない。
「言ったっしょー。あたしのポケモンはみんな耐久よりだってさー。それにノコウテイは体力が多いからねー。硬さも随分長く保ってくれてたよー」
「……? 硬さを、保つ……?」
 フレイの言葉に首を傾げるミキ。だが、フレイは何も言わずに場を進める。
「さて、と。確かにノコウテイは破壊光線を耐えたけど、そんでもあと一発なんか喰らったらもうダメそうだしー、こっちも決めさせてもらうよ」
 フレイの言葉を皮切りに、ノコウテイは力を溜めるかのようにグッと身を縮める。
 そして、

「ノコウテイ、ギガインパクト!」

 ノコウテイは莫大なエネルギーを纏い、地面を砕きながらポリゴンZへと突撃していく。その威力は、破壊光線にも匹敵するだろう。
 ノーマルタイプの大技を繰り出すノコウテイに対し、ポリゴンZの返しては決まっている。この技を止められる技は、一つしかない。

「ポリゴンZ、破壊光線!」

 再び、ポリゴンZは赤黒い極太の光線を発射する。
 凄まじい破壊力の技がぶつかり合い、空気は揺れ、地面は割れる。