二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 533章 圧政 ( No.783 )
日時: 2013/03/21 18:11
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「……戻ってくれ、ランターン」
 ロキは戦闘不能となったランターンをボールに戻す。
「まさかマイフィアンセまで倒されるとは、正直予想だにしなかったよ」
 と言いつつ、ロキは次のボールを手に取った。
「でも、ここからは遠慮も容赦も手加減もなしだ。後に控えるクイーンとエンプレスは、ストッパーが利かないからね」
「……端っから加減してもらえるなんざ思ってねえけどな」
「ふふ、そうかい。まあいいさ。このまま押し切らせてもらうよ」
 そして、ロキは手にしたボールを放り投げる。
「さあ、君の圧政を見せておくれ。マイクイーン、キングドラ」
 ロキの三番手は、ドラゴンポケモン、キングドラ。
 2mほどの巨躯で、タツノオトシゴに似た姿をしたポケモンだ。体色は水色、目つきは鋭い。
「さあ、マイクイーン、統治の時間だ。君に逆らう輩は問答無用で処刑だよ。ハイドロポンプ」
 キングドラは細い口から大量の水を噴射する。先のランターンが放ったハイドロポンプよりも遥かに強大だ。
「ちっ、かわせサンドリル!」
 サンドリルは大きく横に跳んで、ひとまず水流を回避するが、
「逃がさないよ。キングドラ」
 すぐに軌道を修正し、水流はサンドリルを追いかけ、捉えた。
 様々な要因で強化されたハイドロポンプの直撃を喰らい、サンドリルは吹っ飛ばされて木の幹に激突。見るまでもなく戦闘不能になっていた。
「戻れ、サンドリル」
 フォレスはサンドリルをボールに戻す。そして次のボールを手に取る前に、キングドラを一瞥した。
「さて、キングドラか。今の動きを見るからに——って、そうでなくとも雨を軸にしたメンバーなら特性はすいすいか。だとすると……」
 しばし悩んで、フォレスはボールを一つ掴んだ。
「とりあえずこいつで行ってみるか。出番だ、コクジャク!」
 フォレスの三番手は、惑わしポケモン、コクジャク。
 壺のような丸っこい体から首と足が飛び出すように生えており、広げた翼には無数の目が潜んでいる。
「コクジャク、エアスラッシュ!」
 コクジャクは翼を羽ばたかせ、無数の空気の刃を飛ばすが、
「キングドラ、吹雪だよ」
 キングドラが放つ吹雪により、空気の刃はすべて打ち消され、コクジャクにも吹雪が迫る。
「やっぱ普通に撃ってもダメか……かわせコクジャク!」
 コクジャクは急上昇し、吹雪をかわす。そして、
「悪巧み!」
 脳を活性化させ、特攻を一気に上昇させる。これでコクジャクの特攻は通常の二倍だ。
「今度はどうだ? エアスラッシュ!」
 そして再び空気の刃を飛ばす。その数は初撃よりも多く、大きさも鋭さも段違いだが、
「全て撃ち落とすんだ。ハイドロポンプ」
 横薙ぎに払うようにして発射されたハイドロポンプによって、空気の刃は全て撃ち落とされてしまう。
「一回じゃ無理だったか。だったらもう一度だ。コクジャク、悪巧——」
「させると思うかい? キングドラ、吹雪」
 コクジャクが悪巧みを使用する直前、キングドラは凍てつく猛吹雪を放つ。コクジャクは急いで悪巧みを中断し、急上昇して吹雪を回避した。
「マイクイーンのことだ。悪巧みで特攻が最大まで上がっても押し負けるとは思わないけど、この女王様は野心家が許せないのさ。変な企みは早めに潰したがる」
「……要するに、特攻は上げさせねえって言いたいのか。だったら正面から突っ込んでやるよ。コクジャク、エアスラッシュ!」
 コクジャクは翼を羽ばたかせ、無数の空気の刃を飛ばすが、
「ハイドロポンプ」
 キングドラが発射する横薙ぎのハイドロポンプで、全て撃ち落とされてしまう。
「突っ込めコクジャク!」
 だがコクジャクは攻撃を止めない。キングドラに向かって一直線に突っ込んでいく。
「吹雪だ」
 対するキングドラは凍てつく猛吹雪で反撃に出るが、
「サイコバーン!」
 吹雪が放たれた瞬間、コクジャクも念力で爆発を起こし、衝撃波を放つ。衝撃波は吹雪と激しくぶつかって一部を相殺し、コクジャクが突っ切るための穴を空けた。
「今だコクジャク! 電磁波!」
 キングドラへの接近に成功したコクジャクは、キングドラに微弱な電磁波を浴びせる。それにより、キングドラは麻痺状態になってしまう。
「これはこれは……キングドラ、吹雪」
「サイコバーンだ!」
 キングドラは吹雪でコクジャクを引き剥がそうとしたが、コクジャクも念力の爆発起こしてそれを相殺。そのまま衝撃波でキングドラを攻撃する。
「もう一発!」
 連続で爆発を起こし、コクジャクはキングドラを攻撃。特攻が二倍になっているため、キングドラへのダメージも大きいだろう。
「まだだ! もう一発サイコバーン!」
「キングドラ、ハイドロポンプ」
 三発目のサイコバーンを放とうとしたところで、キングドラのストップがかかった。キングドラは大量の水流を噴射し、コクジャクを押し飛ばしてしまう。
 至近距離からのハイドロポンプ直撃だが、コクジャクはサイコバーンの追加効果で特防が上がっている。大ダメージは受けたものの、まだ戦闘不能ではない。
「キングドラ、ハイドロポンプだ」
 キングドラは追撃のハイドロポンプを発射しようとするが、そこで麻痺が発動。キングドラは体が痙攣し、攻撃を繰り出すことができなかった。
「コクジャク、エアスラッシュ!」
 その隙にコクジャクは空気の刃を無数に飛ばし、キングドラを切り刻む。
「やってくれるねぇ。キングドラ、吹雪」
 今度は凍てつく猛吹雪を放とうとするが、またしても麻痺が発動し、キングドラの攻撃は失敗に終わる。
「悪巧み!」
 コクジャクも今回は攻撃せず、悪巧みで特攻を上げる。これで三倍だ。
「エアスラッシュだ!」
 翼を羽ばたかせ、コクジャクは空気の刃を飛ばす。数も大きさも、さっきのものとは段違いだ。
「ハイドロポンプで撃ち落とすんだ」
 薙ぎ払うような軌道でハイドロポンプを放つキングドラだが、襲い掛かる空気の刃を全て撃ち落とすことは出来なかった。何発かは残ってしまったものの、運良くそれらはキングドラには当たらなかった。
「うーん、思ったよりも特攻が高いんだねぇ、君のコクジャク。だったら早めに決めた方がいいかも。キングドラ、吹雪だよ」
 ロキはそう指示を出すが、不運にもまた麻痺が発動。キングドラの動きが停止する。
「コクジャク、悪巧み!」
 その隙にコクジャクは悪巧みで特攻を急増。これで四倍。コクジャクの特攻は、最大まで高められた。
「キングドラ、今度こそ吹雪だ」
「突き破れコクジャク! サイコバーン!」
 キングドラは今度こそ凍てつく猛吹雪を放つ。しかしコクジャクは真正面から吹雪向かって突っ込んでいき、吹雪と接触する寸前で念力の爆発を起こす。それによって生じた衝撃波を盾に、キングドラへと接近する。
「喰らいな。サイコ——」
 コクジャクは翼を広げ、念力を爆発させる準備に入る。これだけ至近距離から放てば、流石のキングドラもひとたまりもないだろう。
 だがこの時、キングドラは既に攻撃態勢に入っていた。ハイドロポンプでも吹雪でもない、もっとモーションの短い技を放つ寸前。そして、

「キングドラ、クリアスモッグ」

 キングドラの口から透明な煙が放たれる。
「なっ……!」
 その攻撃に、フォレスは驚愕の表情を見せる。威力に驚いたのではない。むしろ、クリアスモッグでコクジャクが受けたダメージは微々たるものだ。だが、攻撃を喰らったことが、フォレスの驚愕の原因ではあった。
「知ってるよね、これがどんな技かくらいは」
 クリアスモッグ。それは、攻撃したポケモンのステータスを元に戻す技だ。つまり、悪巧みで最大まで上がった特攻も、サイコバーンで高められた特防も、コクジャクの上昇した能力は全てリセットされてしまった。
「ハイドロポンプ」
「っ! かわせ!」
 煙に紛れ、キングドラは大量の水を噴射するが、コクジャクは急いで羽ばたき、間一髪のところでその攻撃を回避する。
「悪巧み!」
「させないよ。吹雪」
 コクジャクが再び特攻を上げようとするところを、キングドラは吹雪を放って妨害する。特防も下がっているため、コクジャク上昇しては吹雪をかわした。
「さて、麻痺もあるし、また隙を突いて悪巧みされたんじゃたまらない。なによりマイクイーンはお怒りのようだから、もう決めさせてもらうね」
 ロキがキングドラを一瞥すると、キングドラは口の先を真っ黒な雨雲へと向ける。そして、

「キングドラ、流星群」

 直後、大空に向けて一発のエネルギーが打ち上げられた。空高く上げられた球状のエネルギーは、雨雲の中で弾け、散り散りとなって地上に降り注ぐ。
「コクジャク——!」
 数多の流星が降り注ぎ、避け切れなかったコクジャクは、流星の直撃を何発も喰らい、地面に叩き落とされる。
 流星の群れに押しつぶされ、見るまでもなくコクジャクは戦闘不能だ。
「……よくやったコクジャク。相手に大技を出させただけでも上出来だ。戻ってろ」
 フォレスはコクジャクをボールに戻す。これで、フォレスの手持ちは残り一体。
「これで、終わりか……」
 最後のボールを取り出し、目を瞑って握り締めるフォレス。思い出すのは自分の過去だった。
 たった一人の少女と出会った記憶と、最も7Pから遠い存在の自分が7Pになりえた理由となる一人の女性を、フォレスは想起する——