二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 541章 自然 ( No.793 )
日時: 2013/03/23 17:57
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「クレセリア、サイコキネシス」
「アルデッパ、自然の力!」
 クレセリアは強力な念力を念波として発射し、アルデッパは大口を開けて大量の水を噴射する。
 双方の技がぶつかり合い、激しく競り合う——かに思われたが、結果は水流が念波を容易く突き破った。
「……いくらクレセリアが攻撃向きじゃなく、雨も降っているとはいえ、ここまで簡単に破られるとは思わなんだ。これはどういうことかな?」
 今の結果に納得がいかなかったらしいロキは、そんな事を言い出す。それは単にアルデッパの特攻が高かったの一言で片づけられるのだが、しかしフォレスが返した答えは違った。
「俺も伊達にトラップマスターなんざ自称してるわけじゃねえんだよ。自然地形は俺の味方、草も水も砂も岩も泥も雪も氷も光も雨も、自然界に存在するもの全ては俺に味方をする。そういうこった」
 そんなフォレスの返しに、ロキは疑問符を浮かべながら首を傾げた。フォレスの言っていることが理解できないのだろう。
「? えーっと、よく分からないんだけど、つまり……君のポケモンは自然に関わる攻撃をする場合、その攻撃が強くなるって意味なのかな?」
「たぶんな。何分、最近になってアシドが計測した中途半端なデータから導き出したことだからな、俺もよく分かってないんだ。だが、俺は自然を味方につける、それは確かな事実だ」
 最後はきっぱりと断定するフォレス。対してロキは、わざとらしく肩を竦ませた。
「自然が味方、ね。それは怖いけど、マイエンプレスには、あんまり関係ないかな。なんたって彼女は月の化身なんだ、自然界とは無縁だよ」
「だった俺が叩き込んでやるよ。アルデッパ、自然の力!」
 アルデッパは自然から力を取り込み、無数の種子をクレセリアへと飛ばす。
「地形が複合してれば他の技も出せるんだ……クレセリア、サイコキネシス」
 クレセリアは強力な念力で種子を止めようとするが、止まったのは半数ほどで、残り半分はクレセリアに直撃し炸裂した。
「自然の力!」
 アルデッパはまたも自然の力を利用し、大口から大量の水流を噴射する。
「瞑想だ」
 今度は攻撃を止めようとせず、クレセリアは目を瞑って精神を集中させ、特殊能力を高める。水流は直撃したが、特防の上がったクレセリアへのダメージはそれほど大きくない。
「まだ続けるよ、瞑想」
 クレセリアは瞑想を止めず、そのまま精神を研ぎ澄ませ、さらに特殊能力を高める。能力を上げてから一気に攻めるつもりなのだろう。
「だったら速攻で決めてやる。アルデッパ、パワーウィップだ! クレセリアを引き寄せろ!」
 アルデッパは触手を伸ばしてクレセリアを絡め取り、そのまま力ずくで引っ張り込む。力では勝てないクレセリアは、簡単にアルデッパに引き寄せられてしまった。
「噛み砕く!」
 そして次の瞬間、クレセリアの体にアルデッパの牙が喰い込む。効果抜群で、普通なら致命傷を負ってもおかしくない威力の技だが、
「クレセリア、サイコキネシス。アルデッパを引き剥がすんだ」
 防御の高いクレセリアにとって、タイプ不一致の効果抜群の攻撃程度なら余裕で耐えられる。クレセリアは瞑想で威力の上がっているサイコキネシスで、アルデッパの顎を強引に開かせる。
「シグナルビーム」
 そしてクレセリアはカラフルな光線を発射。クレセリアとは対照的に、至近距離から瞑想で威力の上がった効果抜群の攻撃を喰らい、アルデッパは大ダメージを負ってしまうが、
「アルデッパ、スプラッシュ!」
 大ダメージを受けたとは思えない切り返しで、アルデッパは水流を纏った腕をクレセリアに叩き付ける。思わぬ反撃に、クレセリアの態勢が少し崩れた。
「もう一発叩き込め! スプラッシュ!」
 アルデッパは続けてもう片方の腕をクレセリアに叩き込む。態勢を崩されていたので、クレセリアは飛沫を散らしながら吹っ飛ばされた。
「追撃だ、自然の力!」
 フォレスの指示を受け、アルデッパは怪物が叫ぶような咆号を上げる。が、それだけで何も起きない。
「……? 不発かな?」
「違う。そろそろ来るはずだ」
 ロキの言葉をフォレスが否定した直後、暗雲からは雷鳴が鳴り響き、激しい稲妻がクレセリアへと襲い掛かる。
「っ、サイコキネシス」
 咄嗟にクレセリアは念動力を放とうとするが、時既に遅し。クレセリアの抵抗は間に合わず、稲妻に貫かれた。
「……雷って、自然の力にはないはずの技だけど?」
 ロキは引きつった笑いを浮かべる。
 自然の力は、発動する地形によって効果の変わる技。例えば水上で使用すればハイドロポンプ、草原などで発動すれば種爆弾、といった具合に、発動時の自然地形に左右される技だ。その技の種類はパターン化され、数が決まっている。
 だが、そのパターン化された技の中に、雷は存在しない。つまりフォレスのアルデッパは、自然の力では使えないはずの技を使用したことになる。
「だから言っただろ、自然は俺の味方だってな。お前が降らせた雨も自然の一部。雨の恩恵を受けるのは、お前だけじゃねえ」
 天候が雨だから、それになぞらえた自然現象である雷が使用できる。それが、フォレスの言い分だった。
「はぁ……もう、なんでもありみたいだね」
「なんでもってほどじゃねえよ。あくまで俺が味方につけられるのは自然だけだ。それ以外のもんに関しちゃ、専門外だな。つっても、お前も察しているように自然現象を操るだけでも十分強いがな。雨なら雷、水上ならハイドロポンプ——だが、他にこんなこともできる。アルデッパ、自然の力!」
 アルデッパは自然から力を取り込み、咆号をあげる。すると次の瞬間、湖の水面が揺れ、湖底の泥を巻き上げながら大波としてクレセリアに迫る。
「濁流……同じ水上でも、技を使い分けられるのか。クレセリア、サイコキネシス」
 今度はクレセリアの念動力も間に合い、襲い掛かる濁流をシャットアウト。ノーダメージでやり過ごすが、
「アルデッパ、パワーウィップ!」
 次の瞬間、アルデッパの触手がクレセリアに叩き付けられる。
「自然の力だ!」
 続いてアルデッパは自然の力を利用し、雨雲から激しい稲妻を落とす。雨中での雷は必中なので、クレセリアは回避できず稲妻に貫かれた。
「やれやれ、これは参った。地形を利用して戦うというか、これじゃあ自然そのものが敵だよ。イリゼ相手ならソーラービームが飛んできそうだ……クレセリア、シグナルビーム」
 クレセリアはなんとか態勢を立て直し、カラフルな光線を発射。鈍重なアルデッパは光線を避けることができず、直撃を受けてしまう。
「確かに攻撃は強力だけど、攻撃一辺倒な感は否めないね。これは、耐え切ってから攻め込めば勝機はあるかな? クレセリア、瞑想だよ」
 クレセリアは静かに目を閉じ、精神を研ぎ澄ます。だが、そこにアルデッパの魔手が伸びる。
「耐え切れればな! アルデッパ、パワーウィップ!」
 アルデッパの触手がクレセリアに巻きつき、そのまま勢いよく引っ張り込まれる。
「噛み砕く!」
 そして大口を開けたアルデッパは、クレセリアに齧り付いた。クレセリアの防御が高いと言っても、いつまでも耐えられるわけではない。クレセリアの体力も削られてきた頃だろう。
「スプラッシュで吹き飛ばせ!」
 一旦クレセリアを解放すると、アルデッパは水流を纏った腕をクレセリアに叩き付け、水飛沫と共に吹き飛ばす。
「やってくれるねぇ。クレセリア、サイコキネシスだ」
「自然の力!」
 クレセリアは空中で態勢を立て直すと、強力な念波を飛ばす。アルデッパも自然の力を借りて大量の水を噴射するが、流石に瞑想で特攻が二倍以上に膨れ上がったクレセリアのサイコキネシスは止められず、多少威力を減衰させるだけで直撃を喰らった。
「くっ、ならもう一度だ! 自然の力!」
 砲号を上げ、アルデッパは地面から植物を成長させる。ぐんぐん伸びていく植物はクレセリアに絡みつき、体力を吸い取っていく。
「ギガドレインか。クレセリア、サイコキネシスで剥がすんだ」
 幸いクレセリアは特防が上がっているので、ダメージはほとんどない。念動力で絡みつく植物を引き千切り、束縛から脱する。
「瞑想」
 そして目を瞑り、精神を集中させて特殊能力を高める。これで特攻、特防共に通常の三倍だ。
「また瞑想かよ、流石にそろそろきついな……アルデッパ、自然の力」
 アルデッパはまたしても自然界の力を取り込んで、自身の体を成長させる。
 その様子を見てフォレスは、やや落胆したように溜息を吐いた。
「やっぱ雨じゃあ成長が限界か。欲を言えば蛍火が良かったんだが、高望みし過ぎか」
「蛍火なんて発動されたらボクが困っちゃうよ。それにしてもその自然の力、攻撃から回復から補助まで発動するなんて、随分といろんなことをこなすじゃないか。その汎用性の高さは反則級だよ?」
「伝説のポケモンで来るお前には言われたくねえよ」
 本音か軽口か、そんな言葉を交わす二人。お互いのポケモンはかなりダメージを負っており、この戦いもじきに決着だろう。
「ふふ、それじゃあ、雨の中マイエンプレスに戦い続けさせるのも悪いし、そろそろ終わらせてもらおうかな」
「やってみろ。そう簡単にやられてやる俺とアルデッパじゃ、ねえけどな」
 そして二人は雨の中、それぞれのポケモンに指示を出す——