二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 1章 新出 ( No.8 )
日時: 2013/01/22 03:30
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 イリスはマーケットに飛び込む。マーケットではオークションをしているようで、人々は悪い意味で賑わっていた。
「イリス!」
 チェレンも入ってくる。それに続いてベルとミキも。
「師匠、どうしたんですか?」
「呼んでるんだ……」
 言うより早く、イリスは駆け出した。
「イリス、どこ行くの!?」
 ベルが叫ぶも無視し、イリスは人々を掻き分けてオークションの品が晒されているステージに上る。
 いきなりの闖入者に、人々は唖然とし、目を丸くしていた。
 オークションにかけられていたのは、ポケモンだった。
 黄緑色の体色の爬虫類のような姿で、手には大きな葉っぱを持っている。
 発芽ポケモンリープン。草タイプのポケモンだ。
 イリスは檻に閉じ込められているリープンを檻ごと抱え上げ、走って外に出る。
 つまり、これは
『窃盗だ!』
 会場にいた全員の声が重なり、喚き、騒ぎ立てる。会場内はあっという間に騒乱の渦中となった。
 そして当然、イリスはこの後、追われることとなる。



 なんでこんな事をしたのかは自分にも分からなかった。
 ポケモンの売買はどう考えても悪い事だが、自分だってポケモンを奪うという罪を犯している。
 でも、声が聞こえたんだ。
 このポケモンは、助けを求めていた。救いの手を求めていた。
 何故そんな声が聞こえたのかなんてどうでもいい。
 僕はこのポケモンを助けたい、救いたい。
 これは、この気持ちは、罪ではないはずだ、許されるはずだ。
 許されずとも、僕はこのポケモンを救う。それが英雄の本能という奴かもしれない。
 だったら今は、その本能のまま、流れてみるのもいいかもしれない——



「さあ、追い詰めたぞ窃盗犯。そいつをこっちに渡しな」
 イリスは逃げ回っているうちに行き止まりにぶつかってしまい、そこを追手に見つかってしまったため、追い詰められた。
 今までの行いはほとんど無意識化のうちにやっていたことだが、流石のイリスもそろそろ状況を把握していた。言われるがままにポケモンを差し出しても、恐らくイリスの身体は無事では済まないだろう。
「くっ……こうなれば、ダイケン——」
 ベルトからボールを取ろうとしたところで、イリスはふと気付く。腰にボールがセットされいなかったのだ。
「そういえば、ポケモンは家に置いてきたままだった……!」
 イリス、痛恨のミス。袋小路に追い込まれたこの状況では身一つで切り抜けられそうにはない。かなりピンチだ。
「そのポケモンは俺が落札する所だったんだ。それを邪魔してくれやがって……お前にはちょっと痛い目見てもらおうか。出て来い、カイロス!」
 男が繰り出したのはクワガタポケモンのカイロスだ。棘の付いたハサミのような角は、いかにも強力そうである。
「さて、お前にはこのはさみの餌食になってもらう。なあに、ここは無法地帯のブラックシティだ。殺傷障害くらいなら、軽く流れるさ」
 男はそう言い、カイロスは角をハサミを鳴らしながらイリスへと詰め寄ってくる。
「くっ……。……!」
 とそこで、檻から解放され、イリスの腕の中にいたリープンが地に降り立ち、カイロスの前に立ちはだかる。
「なんだあ? 邪魔だな。カイロス、居合い斬り!」
 カイロスは角を振るってリープンに切りかかるが、リープンはそれを風のような動きでかわす。
「リープン……やってくれるのか?」
 イリスの言葉に、リープンは頷く。
「よし、分かった」
 そう言ってイリスは図鑑を取り出す。図鑑にはポケモンの覚えている技を知る機能もある。そして余談だが、この図鑑は出発前にアララギ(父)にバージョンアップしてもらっている。
「あのカイロスは強力そうだ、だからまずは能力を上げる。リープン、成長!」
 リープンは体を活性化させて細胞を成長させ、攻撃と特攻を高める。
「連続切り!」
 そして葉っぱを振るい、カイロスを切り裂く。しかし効果はいまひとつなので、大きなダメージにはならない。
「へちょい攻撃だな。カイロス、挟むだ!」
 カイロスは角をハサミのように使い、角でリープンを挟み込もうとする。しかしリープンはそれをジャンプで避ける。
「リープン、風起こし!」
 そしてリープンは葉っぱを振って風を起こし、カイロスを攻撃。風起こしは飛行タイプの技なので、虫タイプのカイロスには効果抜群だ。
「ちっ、カイロス、気合パンチ!」
「リープン、連続切り!」
 カイロスは拳を構えて気合を溜めるが、その隙にリープンが葉っぱでカイロスを切り裂いて集中力を途切れさせ、気合パンチは失敗する。
「気合パンチは威力は高いけど出が遅い。そしてその隙に攻撃すれば止まる。リープン、葉ッぱカッター!」
 リープンは無数の鋭い葉っぱを飛ばし、カイロスを切り刻む。
「ぬぐぅ、調子に乗るな!カイロス、シザークロス!」
 カイロスは角を交差させてリープンに切りかかる。その勢いと気迫は凄いものだった。
「リープン、風起こしだ!」
 リープンは葉っぱを振って風を起こし、カイロスの動きをできる限り止めようとする。
「その程度で俺のカイロスが止まるかよ!」
 男が叫ぶと、カイロスは一気に前進してリープンを切り裂いた。
 しかし、

「リープン、深緑の葉っぱカッターだ!」

 リープンはまだ倒れておらず、反撃の葉っぱカッターを飛ばす。しかもその量もスピードも、普通の葉っぱカッター以上だった。
「なっ……カイロス!」
 カイロスは無数の葉っぱに切り刻まれ、戦闘不能となる。
「特性深緑。ピンチになれば草タイプの技の威力が上がる特性だ。まあ、それを発動させて勝つためとはいえ、リープンに悪い事をしたけどね」
 イリスはシザークロスを受け、十文字の裂傷ができたリープンを抱き抱えながら言う。
 これをきっかけに、イリスには新しい仲間ができたのであった。



 その後、イリスはチェレン達に助けられた。正確に言うならば、ミキのバルジーナが飛んできて、それに乗ってブラックシティから脱出したのだ。
「全く君は。窃盗罪で追いかけられてポケモンを忘れてそのうえ盗ったポケモンでバトルするなんて、何を考えているんだ……」
 チェレンは怒りを通り越して既に呆れていた。
「まあ、いいんじゃない。そのポケモンもあのままオークションで落札されたら、酷いトレーナーの所に行っちゃうんでしょ? だったらイリスの仲間の方が絶対にいいよ。イリスも喜んでるし」
 ベルの言う通り、イリスはかなり上機嫌だった。そしてリープンもまた、イリスによく懐いている。
「これからよろしくな、リープン」
 イリスは腕の中で眠るリープンに語りかける。
 何はともあれ、イリスに新しい出会いがあり、新しい仲間ができたのであった。



今回は非公式のポケモン『ポケットモンスターアルタイル・シリウス、ベガ』のポケモン、リープンが出てきました。ちなみにこれらのポケモンはURLを張っていますので、参考にしてください。では、次回はホワイトフォレストです。お楽しみに。