二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 560章 深淵 ( No.818 )
日時: 2013/03/28 19:31
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「眠れる民に悪夢の深淵を! ネメア!」

 ゲーチス最後のポケモンは、獅子ポケモン、ネメア。
 がっしりとした体つきと四の足。紫と紺の体をもち、頭には赤い一本角。
 深淵を見せると言われる伝説のポケモン、ネメアだ。
「来たか……!」
 Nは緊張を走らせる。相手は伝説のポケモン、一筋縄でいく相手ではない。
「コーシャン、フレアドライブ!」
 コーシャンは駆け出し、全身に膨大な炎を纏ってネメアへと突っ込む。
 しかし、
「ネメア、鉄壁です」
 ネメアは体を鋼鉄とほぼ同じ強度まで硬め、コーシャンの攻撃を防御。しかもその場から動かないどころか、逆にコーシャンを弾き飛ばしてしまった。
「メタルブラストです」
 続けてネメアは鋼の光線を発射し、宙を舞うコーシャンに直撃させる。その一撃を受け、コーシャンは地面へと落ちた。
「コーシャン!」
 キリキザン戦でのダメージもあり、コーシャンは戦闘不能だ。
 Nはコーシャンをボールに戻すと、こちらも最後のポケモンを繰り出す。
「相手はネメア。なら、最後は君だよ、ルカリオ!」
 Nの最後のポケモンは、波導ポケモン、ルカリオ。
 人間に近い体つき。犬のような頭部を持ち、手の甲と胸に棘のような突起がある。
「ほぅ、ルカリオですか。大方、ワタクシのネメアに相性が良いからという理由でしょうが、それだけでやられる伝説のポケモンではありませんよ」
「そんなことは分かってる。それでも、勝つんだ! ルカリオ、波導弾!」
 ルカリオは波導の力を凝縮させ、球状に固めてネメアへと放つ。
 波導弾はまっすぐにネメアへと向かっていき、そのまま直撃した。効果は抜群だが、
「この程度ですか?」
 ネメアは身じろき一つせず、超然と佇んでいた。
「くっ、だったらこれだ! ブレイズキック!」
 ルカリオは地面を蹴り、一瞬でネメアとの距離を詰める。そして炎を足に灯し、鋭い旋風脚をネメアへと叩き込む。
「鉄壁です」
 が、ネメアも体を硬化させてその一撃を防御。コーシャンと同じように、ルカリオを弾き飛ばす。
「次はこちらからですよ。ネメア、メタルブラストです」
 ネメアは鋼のエネルギーが凝縮された光線を発射し、ルカリオに直撃させる。効果はいまひとつだが、やたらと威力が高い。
「もう一度、メタルブラスト」
「くっ、バレットパンチだ!」
 再びメタルブラストを放つネメア。ルカリオは弾丸の如き速度で光線をかわし、ネメアに拳を突き込む。
「ブレイズキック!」
「鉄壁」
 続けて炎の蹴りも繰り出すが、これは鉄壁で弾かれてしまう。
「無駄ですよ。鉄壁がある限り、ネメアに生半可な物理技は効きません。ネメア、メガホーンです」
 ここで初めてネメアが前に出た。ネメアは真っ赤な角を構え、ルカリオを突き上げる。
「ルカリオ、波導弾だ!」
 空中に放り出されたルカリオは、波導を凝縮した球体を生成し、ネメアへと発射する。
「ふむ、ネメアと言えど効果抜群の攻撃を何度も受けるのはよろしくないですね。ネメア、ぶち壊す」
 ネメアは全てを破壊するかの如き勢いで飛来する波導弾にぶつかっていき、それを消滅させてしまう。
「メタルブラストです」
 そしてすぐさま、まだ空中にいるルカリオ目掛けて鋼の光線を発射する。
「っ、龍の波動!」
 ルカリオも咄嗟に龍の力を込めた波動を放つが、メタルブラストの方が威力が高く、突き破られてしまう。
「ルカリオ!」
 狙い打たれ、撃墜されたルカリオ。だがネメアの攻撃は、まだ止まらなかった。
「ぶち壊す」
 凄まじい勢いで駆けだすネメアは、起き上がろうとするルカリオを突き飛ばし、壁に激突させる。
「メタルブラスト」
 さらに鋼の光線を発射して追撃。効果いまひとつでも、ネメアほどの攻撃力では何発も喰らってられない。
「ルカリオ、反撃だ! 波導弾!」
 なんとか態勢を立て直し、ルカリオは波導弾を発射して反撃する。ネメアは鈍重で、攻撃直後だったためか、高速で飛来する波導弾に対応できず直撃を受けた。
「むぅ、ネメア、メガホーンです」
 だがそれでも、ネメアは角を構えてルカリオに突っ込んで来る。
「バレットパンチ!」
 ルカリオは弾丸の如きスピードで駆け、角の一撃を回避。そのままネメアに拳を叩き込む。
「ブレイズキックは効かないから……後ろに下がって波導弾!」
 拳を叩き込むと、ルカリオはバックステップで後退し、波導弾を発射。直撃させ、ネメアを攻めたてる。
「鬱陶しいですね。ネメア、メタルブラストです」
 ネメアはすぐにルカリオの方を向くと、口から鋼の光線を発射する。
「っ、龍の波動だ!」
 ルカリオもすぐに龍の波動を放つが、龍の波動はメタルブラストのエネルギーを多少削ぐだけで、相殺できない。ルカリオは光線の直撃を喰らってしまう。
「ぶち壊す」
「かわすんだ!」
 よろめくルカリオに向かって、ネメアは凄まじい勢いで駆けだすが、ルカリオは横に跳んで攻撃を回避する。
「龍の波動!」
 そしてすぐさま龍の波動を発射し、ネメアに命中させる。だが効果はいまひとつなので、ダメージは少ない。
 しかし、ルカリオの攻撃はまだ止まらない。
「ルカリオ、波導弾だ!」
 ルカリオは波導弾を放つ。波導弾は一直線にネメアへと飛んでいき、その強固な体に直撃した。ここまではさっきまでと同じだ。
 だが今回は、ネメアの体がグラついた。急所に当たったのか、それとも他の要因なのかは分からないが、なんにせよネメアに攻撃が通っているのは確かだ。
「攻めるなら今だね。もう一度、波導弾!」
 ルカリオは二発目の波導弾を放ってネメアに直撃させる。その一撃で、またしてもネメアの動きは止まった。
「バレットパンチ!」
 ルカリオは続けて弾丸のような拳を繰り出し、ネメアに叩き込む。
「ブレイズキックだ!」
 ルカリオの猛攻は止まらず、さらに炎を灯した上段蹴りをネメアの顎に叩き込み、そのまま空中に飛ぶ。そして、
「ルカリオ、波導弾!」
 最後に至近距離からの波導弾を放つ。この距離で決まれば、流石のネメアでも大きなダメージを受けるはず。そう思っていた。
 実際、その考えは正しい。正しいが、Nは失念していた。至近距離で攻撃すればダメージが大きい。その理屈は、ゲーチスも同じであると。

「ネメア、メタルブラスト」

 直後、ネメアはカッと目を見開き、鋼のエネルギーが凝縮された光線を発射する。
 今まさに攻撃するという瞬間に撃たれたため、ルカリオはその一撃を避けることが出来ない。結果、ルカリオは至近距離からメタルブラストの直撃を受け、吹っ飛ばされて壁に叩き付けられた。
「ルカリオ!」
 その一撃で、遂にルカリオは戦闘不能となる。つまり、

 Nの負けだ。

「……まあ、こんなところでしょう。あなたとワタクシでは根本が違う。あなたでは、ワタクシには勝てないのですよ」
「……くっ」
 返す言葉もないN。今の戦い、ルカリオとネメアのバトルは、戦略や駆け引きなどはなかった。つまり、Nは地力でゲーチスに負けたことになる。
「でも、僕は——」
 負けたが、それでも何かを言おうとしたN。しかし、その言葉は最後まで続かなかった。

がくん

「っ!?」
「おや、もう着きましたか。思ったよりも早かったですね」
 急に、妙な揺れがNたちを襲った。まるで今まで動いていたものが底止するかのような揺れだ。
「着いた……? まさか、もうジャイアントホールに着いたのか……!? だって、この空中都市のスピードじゃ、到着は半日って——」
 確かに下っ端や空中都市の広さから、様々な場所と要因で時間は喰ってしまった。だがそれでも、まだ半日も経っていないはず。まだ、ジャイアントホールには着かないはずだ。
 しかし、ゲーチスは、
「半日? 誰がそんなこと言ったのですか? それはどんな計算方法で求められたのですか? 確かにワタクシは気が長い方ですが、それでもキュレムの復活が間近に迫って、半日もかけて移動するほど悠長ではありませんよ」
 言って、ゲーチスはさらに言葉を放つ。
「空中都市の初期速度は確かに遅いですが、少しずつ加速するようになっているのですよ。大方、最初の速度から算出した時間なのでしょうが、もう少し考えを巡らせるべきでしたね」
「——っ!」
 なにはともあれ、英雄たちにとって事態は悪い方向へと進行している。
「さて、ジャイアントホールに着いた以上、ワタクシはあなたなどに付き合っている暇はないのです」
 ゲーチスはネメアをボールに戻すと、違うボールを取り出し、ポケモンを出す。
 三つ首の龍、凶暴ポケモン、サザンドラだ。
 ゲーチスはサザンドラに乗り、城の壁を破壊しながら、外へと出る。

 ——遂に、ゲーチスはジャイアントホールへと足を踏み入れた。
 キュレム復活までの時は、残り僅かである——