二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 最終幕 始動——の前に ( No.825 )
日時: 2013/03/29 04:38
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「やっほーみんなー。『ポケットモンスターBW 混濁の使者』夢のドリームマッチ、はっじまるよー」
「……なにこれ」
「さあ……?」
 妙に広いバトルフィールド。そこには、三人の少年少女がいた。
 一人は背格好も普通で帽子ぐらいしか特徴のない少年、イリス。
 一人は金髪を三つ編みにした少女、リオ。
 一人は簡素な浴衣で地べたに寝転がった少女、フレイ。
 フレイは一人だけノリノリだが、イリスとリオは何が何だか分からないというような表情をしている。
「ていうか、僕らさっきまで7Pと戦ってた気がするんだけど……あれ? これ、どうなってるの? それ以前にここはどこ?」
「バトルフィールドっぽいけど……広さが中途半端ね。こんな場所、イッシュにはなかった気がするけど……」
「まーまーイリスンもりおっちも細かいこと気にしないのー」
「なんだよイリスンて……お前、僕のことそんな風に呼んでたっけ?」
 そんなイリスの発言を無視して、フレイはずるずるとバトルフィールドの一角に匍匐前進で移動する。
 よく見れば、このフィールドは三角形に近い。面積だけで見れば普通のバトルフィールドの1.5倍ほどであろうか。
「なんだかまるで、三人でバトルをするために作られたみたいなフィールドね……」
「三人でバトル? まさか。そんな変なルール、聞いた事ないですよ」
 リオが憶測で言ったことを、イリスは一笑に付すが、
「ところがどっこい、そのまさかなんだなー。あたしとイリスンとりおっちの三人で、同時にバトルをする。このフィールドは、そのために特別に用意されたものなんだよー」
「……マジかよ」
 頭を押さえるイリス。まだ現状がどうなっているのかは分からないが、どうやらここはバトルをしなければいけない流れのようだ。
「そんじゃー二人とも位置についてー。ルールはポケモン一体でー、最後まで生き残ってれば勝ちー。普通のバトルと同じルールだよー」
「でも、相手が一人増える分、脇からの攻撃も考慮しなきゃいけなくなる、か……」
 すぐに場に適応したらしいリオは、そんな風にバトルを分析する。まだついて来れていないイリスだけが、やや置いて行かれ気味だ。
「はぁ……なんかよく分かんないことに巻き込まれたけど、さっさと終わらせて帰るか。行くよ、ダイケ——」
 イリスはダイケンキの入ったボールを取ろうとするが、その手が空振る。確認してみれば、いつもはそこにあるはずのボールがなくなっており、あるのはディザソルのボールだけだった。
「え……なんで……!?」
「あー、言い忘れてたけどー、イリスンとりおっちはポケモンも一位になったから、使用ポケモン制限されてるからねー」
「一位ってなに……?」
 そう言うリオも、現在所持しているボールは一つだけのようだ。使用ポケモンは一体ということなので、一体でもいればバトルは出来るが。
「……しょうがない。別に負けてもデメリットがあるわけでもなし、やるだけやるか。行くよ、ディザソル」
「出て来て、シャンデラ」
「ストータス、出番だよー」
 三者三様にポケモンを繰り出す。
 イリスは流線型のなめらかな肢体を持つ災害ポケモン、ディザソル。
 リオは灯火を燃やすシャンデリアのような姿をした誘いポケモン、シャンデラ。
 フレイは巨大な陸亀のような石炭ポケモン、ストータス。
「……二人がエースポケモンなのに対して、僕だけディザソルか」
 一人そんなことを呟き、バトルは開始される。
「んじゃーあたしから行くねー。ストータス、地震だよー」
 ストータスは前足を思い切り地面に叩きつけ、フィールド全体に激しい地震を引き起こす。
「ディザソル、かわして氷柱落としだ!」
 ディザソルは跳躍して自身を回避し、虚空から無数の氷柱を落下させ、ストータスに突き刺す。
「あれ? 効いてる……?」
 フレイのストータスは圧倒的な防御力を誇るポケモンだったはずだが、タイプ不一致で弱点も突けない氷柱落としが効いている大ダメージでこそないが、イリスは軽く驚く。
「ここではそういう仕様だからねー。チートが利かないんだー。ストータス、怒りの炎だー」
「意味分かんないけど、攻撃は通るってことだよね。ディザソル、こっちも怒りの炎!」
 ストータスとディザソルと炎が同時に放たれ、ぶつかり合う。その時だった。
「シャンデラ、スタープリズム!」
 いつの間にか——恐らく初撃の地震の時——空高くまで浮遊していたシャンデラは、虚空から冷気を内包したガラス球を無数に降り注ぐ。
 ガラス球は冷気で怒りの炎を鎮火させ、そのまま二体を攻撃する。
「シャドーボム!」
 そしてその隙に影の爆弾を発射。空中で身動きも取れないため、爆弾はディザソルに直撃し、ディザソルは撃墜された。
「おおー、りおっちさんきゅー。ストータス、ジャイロボールだよー」
 落下するディザソルに向かって、ストータスは高速回転しながら突っ込み、弾き飛ばす。
「僕だけ集中攻撃……!?」
「一時的な共闘ってやつかなー。ストータス、ストーンエッジだー」
 ストータスは鋭く尖った岩を広範囲に向けて発射する。その攻撃先は、ディザソルとシャンデラの両方だ。
「っ、ディザソル、神速!」
「シャンデラ、サイコキネシス!」
 ディザソルは神がかったスピードで鋭い岩を回避し、ストータスに突撃。シャンデラは強力な念動力で襲い掛かる岩を全て粉砕してしまった。
「辻斬りだ!」
 ストータスに突っ込んだディザソルは続けて鋭い鎌を振るい、ストータスを切り裂くが、
「甘い甘い、ジャイロボールだよー」
 ストータスはその場で高速回転し、ディザソルを弾き飛ばした。
「……イリスンつーかディザソルが中、近距離からの技しか持ってないのは仕方ないにしてもさー、ちょっとあからさまに距離を置きすぎじゃないかなー、りおっちー?」
「…………」
 フレイの指摘に、リオは黙り込む。
 この三つ巴戦、三体の中で最も不利なのはディザソルだ。タイプ相性どうこうではなく、技の相性が悪い。
 まずディザソルは接近して攻撃する技が多く、氷柱落としや怒りの炎にしても、遠距離攻撃とは言い難い。精々中距離だ。
 次にストータスは、近距離、中距離、遠距離と、全ての距離に対応した技を覚え、加えてディザソルとシャンデラを同時に攻撃する技まである。
 最後にシャンデラは、基本的には単体攻撃だが、スタープリズムなら二体に攻撃可能。そして遠距離からの技が多い。
 接近しないと戦えないディザソルに、遠距離からでも攻撃できるシャンデラ。どちらでも戦えるストータス。この中では、行動が制限されるディザソルが一番不利だ。
「……なら、矛先を変えるまでだ」
 イリスは視線をリオとシャンデラに向ける。彼女も容赦なくディザソルを攻撃してきたので、加減する必要はないだろう。
「ディザソル、辻斬り!」
「シャンデラ、大文字!」
 ディザソルは素早く地面を駆け、シャンデラが放つ大文字を潜り抜けてシャンデラを切り裂く。効果抜群なので、ダメージは大きいだろう。
「っ、シャドーボム!」
「氷柱落とし!」
 シャンデラはすぐさま影の爆弾で切り替えし、ディザソルも氷柱を落として防壁を張ろうとするが、そこに襲い掛かる影が一つ。
「ストータス、地震だよー」
「っ!?」
「しまっ——!」
 唐突にストータスは地面を揺らし、衝撃波を放ってディザソルとシャンデラを同時に吹っ飛ばす。
「続いてー、ストーンエッジだー」
 さらに続けて鋭く尖った岩を連射。ディザソルとシャンデラに突き刺す。
 この時点でシャンデラは効果抜群の攻撃を連続で受け、戦闘不能。ディザソルの体力も残り僅かだ。
「くぅ、ディザソル、神速!」
 遠くからの連続攻撃を止めるべく、ディザソルは超高速で駆け、ストータスに突撃。しかし、
「怒りの炎だよー」
 直後、ストータスは怒り狂うような業火を放つ。攻撃直後で反応が遅れ、ディザソルはあえなく業火に飲み込まれた。
「っ、ディザソル!」
 炎が鎮火すると、そこには戦闘不能となったディザソルが横たわっていた。
 つまり、
「いえー、あたしの勝ちー」
 ディザソルが動かないのを見て、フレイは気の抜けた歓声を上げる。イリスとリオはそれぞれのポケモンをボールに戻すが、どこか腑に落ちない表情をしている。
「……なんか納得いかない」
「そうね、アウェーで何も知らずに負けたって感じ」
 苦言を呈する二人だが、フレイはどこ吹く風で、
「誰が何と言おうとあたしの勝ちだもんねー」
 とのたまう。
 そのままゴロゴロと蠢くフレイは、唐突に顔を上げると、
「そろそろ時間かなー。それじゃーみんなー、番外編はこれでお終い、次回からは本編再開だよー。英雄君たちとゲーチスの最終決戦、楽しみにしててねー」
 ふるふると手を振るフレイ。後ろではイリスとリオが何か言っているが、それが耳に届く前に——世界は暗転した。



久々、というか今作では初めての番外編です。一話にまとめようと色々詰め込んでいるので、クオリティは保証しません。それと今回シャンデラを書いていて違和感を感じたのですが、読み返してみると十七節の五節でエレクトロの過去の直後、ドラドーンがまだやられていないのにすぐにシャンデラが出ていますね。後で修正しておきます。さて、三人同時という初めての形式のバトルでしたが、非常に書き難かったです。僕の考えているものは四人同時に戦うので、これにさらに一人追加されると思うと、気が滅入ります。この案は没ですかね……それでは次回からは本編再開。この小説のクライマックス、最終章 混濁、始動です。お楽しみに。