二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 566章 再戦 ( No.834 )
日時: 2013/03/31 16:36
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「……またしてもあなたが来るのですか、N」
 ゲーチスとNは向かい合い、真正面から相対する。それまで邪悪に微笑んでいたゲーチスも、元の表情へと戻した。
「ゲーチス、今度こそ僕があなたを倒します。そして、キュレムもあなたの野望も止めてみせる」
「あなたにそれが出来るのでしょうかねぇ。二年前は真実の英雄に敗れ、少し前はワタクシに敗れ。あなたにはトレーナーの才能がないのでは?」
 ゲーチスの挑発染みた発言に、Nは力強く叫んだ。
「才能なんて、力なんていらない! 僕には、ポケモンとその絆があれば十分だ! 英雄なんて役目も、本当なら投げ出したい……でも、イッシュを救うまで、あなたの野望が潰えるまで、僕は英雄として戦う!」
 Nの真摯な叫びを聞き、ゲーチスは眉根を寄せる。
「……ふん。まあいいでしょう。ワタクシもそろそろあなたが目障りになってきましたからねぇ。ここで、きっちりと引導を渡して差し上げましょう」
 と言って、ゲーチスはボールを一つ取り出した。
「使用ポケモンは六体、交代はなしです。わざわざワタクシに戦いを挑んできたのですから、メンバーの入れ替えくらいは済んでいるのでしょう?」
「当然。僕の、最高のトモダチたちだ」
 Nもボールを構え、それぞれが初手のポケモンを繰り出す。
「デスカーン! 生ける民に死者の手向けを!」
「僕に力を貸してくれ、バイバニラ!」
 ゲーチスが繰り出すのは、棺桶ポケモン、デスカーン。
 分類通り純金の棺桶のような姿をしており、中から影のような触手状の四本の腕を伸ばし、顔には赤い眼と鋭い牙が覗いている。
 Nが繰り出したのは、ブリザードポケモン、バイバニラ。
 ダブル盛りのソフトクリームのような姿をしており、一つの氷の台に二つの顔があり、片方は筒状の角があって笑みを浮かべている。
「行くよバイバニラ。冷凍ビーム!」
 先に攻撃を繰り出したのはバイバニラ。バイバニラは筒状の角から凍てつく光線を発射するが、
「ふん、効きませんよ。デスカーン、守るです」
 デスカーンは結界を張って冷凍ビームを完全に防御してしまう。
「しかし、初手で出してくるのがバイバニラですか。ならば、こちらの技を覚えさせて正解でしたな。デスカーン、毒々」
 デスカーンは四つの腕にそれぞれ毒液を溜めこみ、それらをバイバニラ目掛けて噴射する。
 しかし、

「バイバニラ、マジックコート!」

 突如バイバニラが身に纏った光る膜に、デスカーンの毒液は跳ね返された。
「ぬぅ、マジックコートだと……!」
 跳ね返された毒液を受け、デスカーンは猛毒状態となり、ゲーチスも険しい表情で歯噛みする。
 マジックコートとは、状態異状を発生させる技を反射する技。なのでこの技があれば、デスカーンが主に使用する鬼火、毒々、汎用性の高い電磁波、草タイプの常套手段、宿木の種などが全て跳ね返されてしまう。
「あなたが先発にデスカーンを出すことは読めていました。だからこそ、僕の一番手はバイバニラなんだ。あなたのデスカーンでは、バイバニラには勝てない!」
「なにを生意気なことを。デスカーン、もう一度毒々です!」
「マジックコートだ!」
 デスカーンは再び毒液を噴射するが、バイバニラは光る膜でそれを反射する。二回毒液を浴びても何も起こらないが、このままバイバニラを毒状態にできなければ、デスカーンが一方的に毒のダメージでやられるだけ。
 しかし相手は腐ってもプラズマ団の大総統。一筋縄でいく相手ではなかった。
「デスカーン、金縛り!」
 デスカーンは四つの腕を広げ、両目でバイバニラを睨み、途轍もない威圧感をかける。
 金縛りは直前に繰り出した相手の技を封じる技。ブルンゲルなどが持つ特性、呪われボディを能動的にした技だ。これでバイバニラは、もうミラーコートが使えない。
「さあデスカーン、バイバニラを蝕むのです! 毒々!」
 三度デスカーンは毒液を噴射し、今度こそバイバニラを猛毒状態にした。これで時間の経過と共に、バイバニラの体力はどんどん減っていく。
「くっ、バイバニラ、ラスターカノンだ!」
「守る!」
 バイバニラは光を集めた光弾を発射するが、光弾はデスカーンの張った結界に阻まれてしまう。
「猛毒状態さえ引き起こせばこちらのものです。デスカーン、祟り目!」
 デスカーンは四つの腕でバイバニラを取り囲み、邪悪な瞳でバイバニラを見つめる。邪眼から発生られる黒いオーラを浴び、バイバニラは苦しそうな呻き声を上げた。
「どうですか、弱り目に受ける祟り目は? 特防の高いバイバニラでも、猛毒状態で受ける祟り目は相当なダメージになる。さぞ苦痛なのでしょうねぇ」
 祟り目は状態異状にかかっている時に受けると、その威力が倍増する。デスカーンは決して特攻が高いわけではないが、威力が増幅された祟り目の一撃ならば、特防の高いバイバニラにも大ダメージが見込める。
 だがしかし、その大ダメージは、デスカーンにとって有益なものばかりでもなかった。

「バイバニラ、ミラーコート!」

 次の瞬間、バイバニラは光に包まれる。光からは何本もの筋が飛び出し、光線の如くデスカーンに襲い掛かり、貫いた。
「しまった……デスカーン!」
 思いがけない一撃を受け、デスカーンは相当なダメージを負っただろう。
 ミラーコートは相手から受けた特殊技のダメージを倍にして反射する技。着目すべきは、受けたダメージ量の倍のダメージを与える、言わば一種の固定ダメージのようなものだ。なので体力の少ないデスカーンにとって、この一撃は致命傷。猛毒のダメージも合わせると、かなり追い詰められたこととなる。
「ぐぅ、小癪な……!」
 殺気立った眼光でゲーチスはNを睨み付ける。そしてNもまた、真摯な眼差しでゲーチスを見据える。
 ハルモニアの名を持つ二人の戦いは、まだ始まったばかりだ——



「僕が、キュレムを捕まえる……?」
 イリゼの言葉を、ほぼ意味そのままに復唱するイリス。
「そうだ。キュレムを捕獲すれば、あのなんとかって水晶も意味はないはずだ。あれが外的要因でポケモンを従わせているのに対し、モンスターボールに入るのはポケモンの本能だ。確実にこちらが優先される。安心しろ」
「いや、そうじゃなくて……」
 捕まえられるか捕まえられないかの問題ではない。キュレムを捕まえて逆に従えてしまうという発想は、成程、確かに思いもよらない抜け穴だ。だが、それを行うのは、
「なんで、僕なのさ……ポケモンを捕まえるなら、父さんとかの方がいいんじゃないの? 僕、バトルには自信あるけど、実際に捕まえたポケモンは七匹しかいないんだよ?」
 ダイケンキはアララギ博士から貰い、リーテイルはオークションにかけられていたのを救っただけで、ズルズキンとメタゲラスは卵から孵り、ディザソルはサザナミの地下に埋まっていたボールを掘り起こしたにすぎない。
 つまり、イリスはポケモン捕獲の経験がかなり乏しい。なのでやたらめったらポケモンを持っているイリゼの方が、ポケモンを捕獲するには適任に思うのだが、
「適任とかそういうのはどうでもいいんだよ。今の世代の英雄はお前、俺は前世代の英雄だ。今の世代に起こった危機は、今の世代の英雄が片を付ける。それが道理だ」
「それは、そうだけど……」
 まだ腑に落ちない様子のイリス。だが、イリゼはそれを無視し、
「なーに、気にすんな。俺たちも手伝いはするさ。普通にボールを投げてもあいつは捕まんねぇだろうから、狙うとすればキュレムとレシラムが剥がれる一瞬だな。だから俺たちはあの二体が剥がれるまで奴をボコって、剥がれた一瞬の隙を突き、お前がマスターボールを投げる。それだけだ」
 とまとめてしまう。
「……分かったよ、やるよ」
 どうせ誰かがやらなければならないのなら、やはり今の世代の英雄である自分がやるべきなのかもしれない。そう思い、イリスはマスターボールを握り締める。
「さて、そんじゃああいつをボコって分離させるわけだが……とりあえず作戦としては、あいつの体力を出来る限り減らし、いい感じに弱ってきたところでゼクロムが一発かまして分離させる。その時にお前がボールを投げる、って感じだ」
「君にしては随分とまとまった作戦だねぇ。異論はないけどさ」
 ボールを取り出しながらロキは口を挟む。イリゼはそれを軽く流し、こちらもボールを構えた。
「そんじゃ、行くぞ。残存戦力をありったけ出して、奴を袋叩きにする」
「了解したよ」
「うん……分かった」
 イリスも複数のボールを取り出し、ホワイトキュレムに視線を向ける。
(レシラム……今、助けに行くよ)
 そして、イリス、イリゼ、ロキの三人は、それぞれありったけのポケモンを繰り出す。