二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 569章 氷山 ( No.837 )
- 日時: 2013/04/01 01:27
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
静かに次のボールを構えたゲーチスは、怒りの形相でNを睨み付け、四番目のポケモンを繰り出す。
「ガマゲロゲ! 枯渇する民に濁流の氾濫を!」
出て来たのは、振動ポケモン、ガマゲロゲ。
直立した巨大なヒキガエルのような姿で、青くがっしりとした体つき。体幹の割に腕は細く、足も短い。また頭部、肩、手の甲、背中にそれぞれ振動するコブがある。
「今度はガマゲロゲで来たか。アーケオス、まずは地震だ!」
アーケオスは地に降り立つと、尻尾を勢いよく地面に叩き付け、大きな地震を引き起こすが、
「ガマゲロゲ、大地の力!」
ガマゲロゲも同時に地面を揺るがし、大地の力で地震を相殺する。
「濁流です!」
続けてガマゲロゲはどこからともなく濁った大波を発生させ、アーケオスを飲み込まんとする。
「アーケオス、アクロバット! 濁流をかわしてガマゲロゲにも攻撃するんだ!」
アーケオスは指示通り、まずは跳躍して濁流を回避。そして次に上空から滑空するようにガマゲロゲへと突っ込んでいき、がっしりした体幹に激突した。
「ぬぅ、気合球!」
「かわしてドラゴンクロー!」
ガマゲロゲは掌に気合を凝縮した球体を生成し、押し付けるようにアーケオスへと放つが、アーケオスはサイドステップでそれを回避。横から龍の力を込めた爪でガマゲロゲを切り裂く。
「ガマゲロゲ、アーケオスを引き剥がしなさい! 濁流!」
ガマゲロゲは再び濁流を放つが、アーケオスには当たらない。大きく飛び上がったアーケオスは滑空の姿勢を取り、そのままガマゲロゲ目掛けて下降する。
「アクロバット!」
そしてガマゲロゲへと突っ込んでいくが、
「迎撃です! ヘドロウェーブ!」
直前でガマゲロゲは毒液の大波を引き起こす。濁流よりも広範囲を襲うヘドロウェーブはアーケオスを飲み込み、押し流してしまった。
「アーケオス!」
効果はいまひとつなのでそれほど大きなダメージにはならないが、またしても不運なことに、アーケオスも毒状態になってしまった。
アーケオスの特性は、体力が半分以下にまで減ると攻撃と特攻が半減する弱気。普通の攻撃なら回避すればいいだけだが、毒状態になってしまうと少しずつ体力が削られるため、必ず弱気が発動してしまう。
「ぐっ、でもそれなら、弱気が発動する前にガマゲロゲを倒せばいいだけのこと! アーケオス、アクロバット!」
アーケオスは飛び上がり、滑空するようにガマゲロゲの周囲を旋回して少しずつガマゲロゲとの距離を詰めていくが、
「させると思うのか!? ガマゲロゲ、ヘドロウェーブ!」
ガマゲロゲは巨大な毒液の大波を放ち、アーケオスを寄せ付けない。毒のダメージが溜まる時間を稼ぐ気だろう。
「アーケオス、なんとか掻い潜ってガマゲロゲに接近するんだ!」
Nの指示を受け、アーケオスは波が来ない場所を探り、ガマゲロゲに近づこうとするが、
「だから、させないと言っているでしょう! ガマゲロゲ、連続でヘドロウェーブ!」
ガマゲロゲはどうしてもアーケオスを近づかせたくないようで、四方八方に向かって毒液の波を連発する。
流石のアーケオスもこれだけヘドロウェーブを放たれて接近するのは困難だ。どころか、普通に避けるだけでも精一杯である。
「まだだ! 濁流!」
連発するヘドロウェーブの合間に、ガマゲロゲは一発だけ濁流を発生させる。
アーケオスとしては効果抜群の濁流を喰らえば、弱気が発動するどころか一撃でやられかねないので、濁流だけは絶対にかわそうと飛行する。
しかし濁流にばかり目が行っていたためか、アーケオスは襲い掛かるヘドロウェーブを見落としてしまい、またしても毒液の波に飲まれる。
「ガマゲロゲ、アーケオスを仕留めなさい! 気合球!」
ガマゲロゲは波が引いた瞬間、気合を凝縮した球体を生成してアーケオスに投げつける。
「アーケオス、アクロバットだ!」
アーケオスはなんとか立ち上がり、機敏な動きで気合球を回避。そしてガマゲロゲに接近すると、翼の一撃を叩き込んだ。
「よし、いいぞ。続けてドラゴンクロー!」
次に龍の力を込めた爪で引き裂き、追撃をかける。
「もう一度、ドラゴンクロー!」
「調子に乗るな! ヘドロウェーブ!」
アーケオスは続けて龍の爪を振るおうとするが、そこにガマゲロゲのヘドロウェーブが放たれ、アーケオスはドラゴンクローを中断。羽ばたいて毒液の波を回避する。
「連続でヘドロウェーブ!」
ガマゲロゲはアーケオスが離れた瞬間を狙って、またしても毒液の大波を連発する。こうなってしまえば、アーケオスでも接近するのは困難となってしまう。
「だったらこれだ! アーケオス、地震!」
羽ばたきながら毒液の波を回避するアーケオスは、波が引く隙を狙って地面に尻尾を叩き付ける。その衝撃で地面は揺れ、激しい地震が引き起こされた。
「ぐぅ……ガマゲロゲ、大地の力で相殺です!」
地震でヘドロウェーブが強制中断させられ、ガマゲロゲは仕方なく大地の力を放ち、地震を相殺する。しかし、次の瞬間、
「アクロバット!」
一直線に突っ込んできたアーケオスの突撃を喰らい、ガマゲロゲは態勢を崩してしまう。
「今がチャンスだ! アーケオス、ドラゴンクロー!」
ガマゲロゲの態勢が崩れた隙に、アーケオスは龍の力が込められた爪でガマゲロゲを切り裂く。
だがその威力は、さっきまでのものと比べて格段に落ちている。毒でダメージが蓄積し、弱気が発動してしまったのだろう。
「ガマゲロゲ、気合球です!」
「アクロバットだ!」
ガマゲロゲは気合を凝縮した球体を掌に生成し、アーケオスに押し付けるようにして放つが、アーケオスはすぐさまガマゲロゲの背後に回り、尻尾の一撃を叩き込む。
弱気で攻撃力が落ちても、スピードは健在だ。火力がなくなったのなら、今度は手数で攻めればいいと考え、アーケオスは攻撃を続ける。
「もう一度アクロバット!」
ガマゲロゲが反応するよりも早く移動し、ガマゲロゲに攻撃する。そうしてガマゲロゲにもダメージを蓄積させ、アーケオスが倒れるより先に倒す。それが出来れば最高だ。
しかし、
「大地の力!」
突如、ガマゲロゲの周囲を土砂が覆ってしまう。アーケオスは飛行タイプなので土砂によるダメージは受けないが、土砂によってアクロバットの移動範囲が制限されてしまった。
「ヘドロウェーブ!」
アーケオスが進路を縛られて困惑している隙に、ガマゲロゲは毒液の波を発生させ、アーケオスを押し流す。
「しまった……アーケオス!」
毒のダメージとヘドロウェーブのダメージで、アーケオスの体力はかなり削れてしまった。しかもガマゲロゲとアーケオスの間に距離が出来たということは、
「連続でヘドロウェーブ!」
ガマゲロゲは毒液の波を連発する。
アーケオスは飛行してこれを回避するが、ただ避け続けていても、いずれ毒のダメージでやられるだけだ。かといって波を掻い潜ることは困難で、地震で中断させる方法ももう通じないだろう。だとすると、
「あの手しかないか。アーケオス、君を捨て石にするみたいで悪いけど、やってくれるかい?」
Nの言葉に、毒で疲弊していることなどおくびにも出さず、アーケオスは力強く頷いた。
「うん、ありがとう。それじゃあ行くよ!」
アーケオスはヘドロウェーブから逃げるようにガマゲロゲからさらに距離を取り、
「アーケオス、ヘドロウェーブを突き抜けろ! 諸刃の頭突き!」
凄まじい気迫でガマゲロゲへと突っ込む。
掻い潜ることも中断させることも無理なら、力ずくで突破する。それが、Nの考えだった。
「ぬぅ、だったらガマゲロゲへと到達する前に、体力を全て削ぎ落すまで! ガマゲロゲ、さらにヘドロウェーブ!」
ガマゲロゲは標的をアーケオスに絞り、突っ込んで来るアーケオスに向けて毒液の波を連発する。
だがそれでもアーケオスは止まらない。弱気が発動しても、強気に向かっていくアーケオスは、次々と毒液の波を突っ切っていく。
そして遂に、アーケオスはガマゲロゲへと到達した。
「あれは……! みんな避けろ——!」
ホワイトキュレムが冷気を溜めこみつつ熱気を発するのを見て、イリスは先ほどの大技を思い出す。樹海の一部に燃える氷山を作り出した、コールドフレアという途轍もない技。
咄嗟にイリスは回避の指示を出し、直後——ホワイトキュレムの周囲が氷結した。
「っ——!」
大きさは最初に放ったものよりも小さいが、いたるところに炎を内包する氷山が出来ている。力を分散させて放ったのだろう。
そして氷山の中には、何匹ものポケモンが閉じ込められ、炎に燃やされていた。逃げ切れなかったポケモンたちだろう。その中には、デンリュウやディザソルも含まれている。
「くっ、なんて技だ。こんな技、そう何発も喰らってたら、あっと言う間に全滅するぞ……!」
再びその途方もない威力の技に戦慄し、イリスはデスカーンに指示を出す。
「デスカーン、金縛り!」
デスカーンはホワイトキュレムに金縛りをかけ、コールドフレアを一時的に封印する。これでしばらくは、あの規格外な技は放たれないはずだ。
「こっちもかなりやばいけど、N……」
イリスはホワイトキュレムから視線を外し、少し離れた場所でゲーチスと向かい合うNを見据えた。