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・短編？


＊いつかの夏と謎の入り口



「本当に、これで、何回目だろうね・・・」

「・・・・は？」

何を言っているんだこいつは。

これで、何回目？


なにが？




「兄ちゃん・・・いや、貴方もホントは薄々気づいてるんでしょ？」

「・・何、言ってんだよ、お前・・」

あのバカ弟が俺のことを〝貴方〟とは呼ばない。
こいつは、俺の知っている弟ではない。


「でも貴方は、自分で理解しようとしない。」

弟は・・・・こいつは笑顔で、話を続けた。


「ほら、よく考えてみて？さっき俺たちがこの家に来たとき、『アントーニョ兄ちゃん』は、なんて言った？」

なんて言った？

なんて言ったっけ？


たしか、


「・・『イタちゃん！ロマ！よう来たな！』・・・・」

「そう、それで貴方は、すごく違和感を感じたでしょ？」

「なんで・・っ、」


なんで分かるんだ、俺が考えていたことが。
たしかにその通り。間違ってはいない。


俺は確かに、違和感を感じた。



それでそのあとにも・・・、
俺が思った事に違和感を感じた。



俺はなんて思ったっけ。


走ってて・・、息切れしてて、それで、あいつに、俺の麦わら帽子返せよって、言って。


『だいぶ走った。
もうスペインは見えない。』

って・・・・


「———————あ。」
「どうして違和感を感じたか、わかった？」




少しの沈黙。

そのあと、静かな、でも芯のある声で、





「『向こうのアントーニョ兄ちゃん』は、俺たちのこと、国名で呼ばないよね」







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