二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ヘタリア】S e a r c h_イラリク受付中! ( No.318 )
日時: 2011/12/26 23:25
名前: レディグレイ (ID: 9pyjQi2E)
参照: http://www.youtube.com/watch?v=7WLv7oGM8Kg&feature=related

クリスマス短編


*The Christmas night*





「お待たせいたしました」

テーブルの上に置かれたカップの中には淡いオレンジ色の紅茶。
隣の皿の上には店のランチメニュー(今は夜なのだがこの店にはディナーというのが存在しない)のサンドウィッチが盛られていた。

紅茶を一口。
「ん、この紅茶、おいしいな。香りもよく出ている」
そういってこっちに顔を向けた。
私は苦笑いをして、「俺特製のブレンドティーです。お口に合っていたみたいで、」
よかったです。と。


「お前なぁ、そんなに固くならなくてもいいんだぜ?・・・ほら、今は客だっていないし」
はぁ、と返事をするものの・・・無理だと思った。

そう、今は客は目の前にいる眉毛しかいない。・・・会長さんしかいない。
この店、「季楽」の店長であるユウリさんはどうしても外せない用事があるとかで店を開けている。
今日一日だけ。

だから私は朝から一人で・・・どっかの誰かさんみたいに一人で楽しく、店をやっていた。

今日は朝から客が多かった。
その大半が人だけれど人ではないもの。とか。
このケーキ屋は、ほとんどそういう人たちのために作られただとか、そうじゃないとか、そんな話を聞いたことある。

この店はあまり普通の人が来ないからと言って目の前にいる人もそれと同類にするわけではないけれど。

今でも不思議に思うのはなんで会長さんがこの店を知っていたかっていうこと。
でも聞くわけにもいかないしね。

・・・と、話を戻そうか。

で、今日は客が多かったわけだけど、さすがにこの時間、閉店30分前になるとなかなか来なくなり、暇なぁ・・・ってなっていたところに、この人が来た。

失礼だけど、このタイミングで来られても困る。
私がものすごく困る。
気まずすぎる。



「そういえば、あそこに置いてあるピアノ」
会長さんが指をさしたのは、店の奥に置いてある真新しいピアノ。
でもどこか昔からそこにあったように馴染んでいるピアノ。
そして譜面台の上には、開かれたまんまのピアノ楽譜が。

「ああ、あれは店長が雰囲気だしのためにって新しく購入したんです」

「楽譜がい置いてあるが、誰か弾くのか?」

サンドウィッチを完食し、紅茶をゆっくり飲み始めた会長さんはあくまでも悠長に、聞いた。

なんとなく、嫌な予感っていうか、そんな感じのものがピン、ときた。
この先はノーコメントでなんて、言えないじゃないか。

「・・・いえ、たまに、ほんとたまに、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺が弾きます」
言いたくなかった。から、すごく小さな声で言った。

のに。

会長さんは顔をこちらに向けた。
驚いている表情が半分と、弾いて!というような表情がその倍。


「クロム、その・・・・・・・聴きたい」


嫌な予感的中ーーー


「へ、あ、え?俺のピアノ、ですか?」
会長さんは頷いた。

すみませんが拒否らせてもらいます。

・・・て、言いたい。


ふぅ、聞こえないように溜息。
私はエプロンを脱いだ。

静かに、ピアノ椅子に座る。


「期待、しないで下さいよ。上手く引けるなんて保証はないですから。後悔しても知りませんからね?」
まったくその通りだ。
念に念を押したが、「構わない」と返されただけだった。




息を吸う。十本の指先まで、しっかり神経を通らせて。
動くかなぁ、指。なんて心配を少ししながら、ゆっくり鍵盤に触れていく。




弾むような音楽。














オクターブ。


そしてグレッサンド。






最後は、静かな低音でしめた。






ぱちぱちぱち。
すっかり紅茶も飲み干して、会長さんが拍手をした。
「すごい上手かった!プロ並みだぞお前!」
そこまでほめられると辛いからヤメテ。

私は少し微笑んでいるつもりで、
「有難うございます」





















時計を見れば、閉店時間の21時を過ぎていた。

「お客様、もう閉店時間ですので・・・」
外はもちろん真っ暗だ。



「外で待ってる」
「へ?」

「もう暗いしな。どうせ同じ寮だから、」
一緒に帰らないかって?
何言ってるんだこの眉毛。







「すみません、待たせて。先に帰ってくれててもよかったのに」
コートを羽織った私は駆け足で会長さんの元へ。




地面は雪が積もっていて、空には白く、細かいのが沢山舞っていた。

寒い。

白い息を漏らしながら並んで歩いた。
会長さんの隣は緊張する。



「今日はクリスマスだな」
「・・・はい、そうですね」

「紅茶、おいしかった」
「・・・それはどうも」

「・・・」
「・・・」

「・・・」
「・・・」


やばい。会話が続かなくなった。
何か話さなければ私が辛いぜ←

空気重い。



会長さんの顔を見上げれば、真っ直ぐ前を見る翠の眼。

それはまるでこの世のすべてをわかっているような、眼。


ぽん、と頭の上に手が置かれた。

「・・・・・会長さんは、わかってたんですか?」
俺のこと。



何を言っているんだ私は。
思ったけど。でも、言葉にしてしまったものはしょうがない。



「・・・・・・・・なにがだ?」


本当にそう思っているのだろうか。
実は全部知ってた上で、とか。
考えたらきりがないけど。

私が女だと気付いてる?













「・・・いえ。メリークリスマス」

「・・ああ。メリークリスマス」