二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ヘタリア】S e a r c h 企画オリキャラ募集中 ( No.483 )
日時: 2012/06/30 15:33
名前: レディグレイ (ID: R9wydAGD)

*確信のその先は

「ちょっと眉毛ー」
「うわ、星花じゃねえか。」
「うわ、て何。うわ、て。失礼な。・・・それより、あの誘拐犯が滞在してた家、あれあんたんとこの家の敷地でしょ。」

次の日のこと。

星花は朝早くにアーサーを訪ねていた。

「ん・・。ああ、そうだが。」
「あの家の鍵、貸して」
「・・・はぁ!?お前何する気だよ」
「ちょっと調べるだけだって。なるべく早めに・・・確かもうすぐ野外学習だよね。行く前に貸して」
「ちょっとって・・・・」

星花——学園一の情報屋のことだ、ちょっとで終わるとは思えない。

間違いない、こいつは何かをかぎつけている・・・とアーサーが秘かに思うのはもう少し後のこと。

そのあと、一年生が日本に野外学習に行く直前、アーサーはあの家の鍵を星花に渡した。





※野外学習に行く前

SIDE:アーサー

あの時、

「おい、ヒゲ」

クロムは捕まっていた時のことを覚えていないといった。

「んー?なによ坊ちゃん」

もし、ヒゲも覚えていないとしたら。
いや、ヒゲだけじゃない。
脳みそトマトも、ギルベルトも覚えていなかったら。

「いいか、単刀直入に聞くぞ。お前、俺がつかまってた時のこと覚えてるか?」
そう尋ねると、ヒゲはぷっ、と笑った。

「な、なんだよ。別におかしいこと言ってないだろ」
「全体的に言ってることがおかしいってwなにそれ。自分がいつ捕まってたって?w」
「——いや、何でもない。忘れてくれ」

ヒゲは覚えていなかった。

だとしたら、考えられることは一つ。

————術をかけられたんだ。

こいつは、いや、あの場にいた奴全員、一人を除いて、だ。
一人を除いてっていうのは、術をかけた本人のこと。
あの中にいた誰かが、俺たちにあの出来事を忘れさせる術をかけた。

術をかけるにはそれ相応の魔力が必要。

クロム・・・あいつは魔力を持っていたが、あの素振りからするとあいつじゃない。
それにあの程度の魔力なら俺たち全員に術をかけるのはかなり難しい。

ヒゲはまずない。
ギルベルト・・・もないだろう。
脳みそトマトは絶対ない。言い切ってやる。

クロムも違う。

・・・残ったのは、

「あっ、アーサー!どこ行くのさ!」

早足で歩き出す。

向かう先はもちろん、術をかけた本人のところへ。













































多目的室に面した誰もいない廊下に、いた。













「お前、俺たちに何しやがった」



そいつは振り返って、



「———・・・イギ・・ス・・・」


と、呟いた。


何ていった?
小さすぎて聞き取れなかった。

・・・いや、今はそんなことは関係ない。

「もう一度聞く。俺たちに何をした」

「・・・何のこと?」

「・・・とぼけるな。お前しか、ありえない」

「・・・いや、だから、何のこと?って聞いてるんだけど・・・」

「俺たちに何か術、かけただろ。俺以外、ヒゲも、クロムも、たぶんギルベルトもトマト野郎も、あの時あったことを忘れてやがる」

「・・・それが私のせいだっていうの?」

「そうだ」

思いっきり睨みつけるが、こいつは、

——カノン・ティアラは動じることなくごく冷静だった。

まるで自分が、何も知らないかのように。

・・・いや、それは多分演技だ。
だって、こいつじゃなかったら、他に誰がいる。

「・・・ふふ、これはこれは。とんだ電波さんだね。」

「なっ、」

「残念だけど私はそんなの知らないし、貴方が言うあの時ってのがいつなのかわからない」

じゃあね、と手をひらひらさせて、歩いていく——

「待てっ、」

その手首をつかむ。

「何・・・?私、用事があるんだけど。」

澄んだ青色の眼。

感じ取れ、俺・・・

こいつの、

カノンの、

魔力を

魔力を・・・

魔力・・・が、ない・・・!?

「・・・」

「・・ねぇ、もう行っていいかな。さっきも言ったけど、用事があるの」

ぱっと手を放す。

再び歩き出すカノンの背中を、ただ茫然と見つめていた。