二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 忠誠のキスと眠り姫. 【001】 ( No.7 )
- 日時: 2011/08/01 14:28
- 名前: ゆう ◆Oq2hcdcEh6 (ID: uUVs9zNY)
- 参照: 亜美がひたすら悪役に^p^
「お早う、彩音ちゃん」
ぱちり。
目を開けると目の前にはにたりと笑みを浮かべる亜美ちゃんがあたしを覗きこんでいた。眩しい光に目が眩む。亜美ちゃんは何処か上機嫌な様子であたしの挨拶をしてくる。
亜美ちゃんは基本、部屋からあまり出ないのに珍しい。ぼーっとする頭を回転させていると、亜美ちゃんが可笑しい位楽しげな声音でよく眠れたとか、優しい言葉を言ってくれる。普段ぱっちりと開いている瞳は細められ、穏やかな微笑が浮かべられている。
——この時気付くべきだったんだ。これが最高のバッドエンドの始まりということに。絶望する間もない位の惨劇を生み出すことに。
「……あ、う、うん。お早う、亜美ちゃん」
「夜中寒く無かった? 幾ら夏でも、少し冷たい風が吹いてたしね」
温かな言葉に、あたしの中の亜美ちゃんに対する不信感や負のイメージがするすると抜けて行くのが分かった。温かい感情が胸の内にふわりと広がっていく。亜美ちゃんはにっこりと笑みを浮かべ、朝食が出来たら呼ぶねとあたしの部屋を退室して行った。その数分後だった。廊下から耳を劈くような悲鳴が聞こえてきたのは。
「……亜美ちゃん?」
目の前に居るのは笑顔だった筈の亜美ちゃん。だけど、彼女の唇は青紫に変わりかたかたと震えている。何があったのか尋ねようにも、彼女は震えるだけで何も答えようとはしない。
そんな状態のまま時が過ぎれば、悲鳴を聞きつけてやってきた城で働く人達が亜美ちゃんの状態を見て驚いたように声を上げる。あたしを見つめて何があったと尋ねる風丸くんの声は何処か何時もより厳しめな声音だった。あたし、何もして無いのに。
「分かんない……あたしの部屋を出て少ししたら悲鳴が聞こえて、」
「彩音ちゃん、じゃないの……っちが、う……」
「……何が有ったのか聞かせてくれるかい?」
「っ……、」
何かがあったのは間違いなかった。でも、亜美ちゃんはきゅっと唇を噛み締めて何も言おうとしない。不安げに顔に影を落とした基山くんが亜美ちゃんを抱き上げる。少し寝かせてくるよ、と呟いた彼を見送れば風丸くんや豪炎寺くんが此方を見ていた。先程の厳しい声音は消え、宥めるような穏やかな声。
「……彩音ももう少し寝た方が良い」
風丸くんの言葉に豪炎寺くんが頷く。あたし、其処までひどい顔をしているのかな。確かにやつれてしまったけれど、
小さく溜息を漏らせば風丸くんが「送ってくよ」とあたしに手を差し出してくれた。その手を取り、あたしは漸く立ち上がる。それにしても、亜美ちゃんは一体どうしたのだろうか。何を見たというのだろうか。心の内にもやもやと広がり始めた不安を抑え込むかのようにあたしは胸に手を当てて握り締めた。
( 高まる不安 )
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「——不信感を極限まで高めて突き落とせばいいの」
「アミ……、」
「そうすれば私はお姫様になれる……彩音ちゃんなんかっ」
「……目を覚まして、アミ……!」
「ねえロココ……何言ってるの? 私は私。目はとっくに覚めてる」
「キミはアミじゃない……!!」
「————私はこうしないと、お姫様になれないでしょう?」