二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:  青の祓魔師/気まぐれな遊戯 ( No.5 )
日時: 2011/08/04 18:44
名前: 奈央 (ID: ICvI0sBK)

  #01 



俺は処刑されることになった。散々に痛めつけられ、弱った体。
ある祓魔師に蹴飛ばされて、深く掘った穴へと落とされた。
処刑場の土はやはり、冷たい。

「…………っ!」

鈍痛に顔を歪ませながらも、何とか上半身を起こし、地を這いずって、土の壁に寄りかかった。
そして見上げて目に映った——— 塾の皆。そして雪男が手にスコップを持っていた。
その表情は………忌まわしいと物語るような眼差しで。
掘られた土を、穴にいる俺に構わず、土を戻し、埋め始めた。
勝呂、志摩、しえみ、子猫丸、神木、シュラ、メフィスト……そして雪男が無表情で埋め続ける。
両腕を拘束されている、俺は徐々に埋まっていく体から土を払いのけ、もがく。
目隠しされたけど、外れた僅かな隙間から見えた、俺の家族、仲間であるはずの奴らが。
俺を、俺を。………生き埋めにする場面を見るなんて、最悪だ。

「………何、で?」

目から涙が零れ出した、頬に伝って地面に落ちる。黒い染みが幾つも出来た。
それでも、埋める作業の手は止まらない。
誰も、俺なんかに見向きもしなかった。しかし、雪男がちらりと俺の方を見て。

「兄さん。兄さんの所為でどれほどの人が傷つき、悲しみ、迷惑をかけたと思ってるのさ。僕は兄さんと血が繋がってるだなんて、本当に大恥で仕方なかった。でも……それは今日で終わりだ。さよなら、兄さん。嫌な悪夢を一刻も忘れたいから、早く埋めてしまおう。忌まわしいサタンの子供を」

何でそんな笑ってられるんだよ。何で俺の方を見て嘲笑うんだよ。神木なんか、軽蔑する眼差し。
それで、鼻で笑ってて、唯一の友達である朴と共に……笑っていた。
勝呂たちは笑わずに、ただ—— 睨みながら、埋めている。雪男の言葉に、俺は声を失う。
嘘だろ、嘘、嘘、嘘、嘘、嘘———………嗚呼、そうか。
頬にまた一粒の涙が伝う。
お前らは最初から、ううん、正体がばれた時点でもう敵だとみなしてたんだな。
あの言葉も全て過去のこと、世間のことを考えたら、巻き込まれたくないから、捨てたんだ。
つまり、俺のことを裏切った。
勝呂たちはまだ分かる。だけど雪男としえみと神木は関係ないのに裏切った。
俺、信じてたのに。信じて認めてくれて、嬉しかったのに。信じてた。
目から涙とは違う………血が伝った。嗚呼、血の涙か。

「……………ない」
「え?」

雪男が短く発した同時に俺はゆっくりと口を開く。


「許さねぇ……絶対に許さない………信じてたのに、俺のことを認めたって言った癖に……例え……血を引いてても、俺は俺だと言った癖に。皆……許さねぇ………絶対に許さない………サタンも………物質界と虚無界も…………お前ら、未来永劫………呪ってやる、絶対に許さねぇ。お前ら……恨んでも恨んでも………恨みきれない………この恨みを……子孫たちをも巻き込んで………ずっと、ずっと………恨んでやるっ!」


目隠しから外れた左目に血の涙を一滴流し、恨みごとを言う俺にしえみは怯えてスコップを放り投げた。
それでも、土はもう体の上半身を埋め尽くし、もうすぐで完全に土の中に埋まる、その寸前でも、吐いた。

「許さない………許してたまるものか………っ……」
「燐………っ!」

最期にしえみの泣き声が聞こえた気がした。その言葉を最期に俺の視界と意識は暗闇へと落ちた。
嗚呼、恨んでも恨みきれない。俺はまだ……死ぬわけにはいかないんだ。
まだ、あいつ等に復讐が出来てない。




             ○




完全に兄は生き埋めにされた。僕等の手で。僕は兄さんが昔から大嫌いだった。
少なくとも、サタンの子供だと父さんから知らされた日から。
皆を悩まし、父さんを危険にさらす、あんな奴の血を引いている兄さん。
僕は人間だ。サタンなんかとは血すらない。というか、別人なんだ。
兄さんの恨みの言葉にすっかり怯えきったしえみさんを優しく肩を手に置いて。

「気にすることはないですよ、あれはただの……負け台詞です」
「………でもっ……燐の、あの目………!」

たしかに、あの目は怖かった。目隠しが外れて覗いた左目から流れた、血の涙。たった一滴でも。
だけど、怖かった。しえみさん以外に勝呂君たちも怯えて震えている。
シュラさんも険しい表情を見せ。理事長はいつもと違って真剣な表情だ。

「もう、忘れましょう」

とだけしか、僕は言えなかった。







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