二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 青の祓魔師/気まぐれな遊戯 ( No.6 )
- 日時: 2011/08/05 16:48
- 名前: 奈央 (ID: ICvI0sBK)
#02
「奥村燐はここに生き埋めにされたんですよね、兄上」
「そうだ、アマイモン。丁寧に掘り起こすんだぞ」
私と地の王アマイモンは、正十字騎士團の公式処刑場のひとつ、生き埋め処刑場にいる。
ここに、奥村燐専用の生き埋めの、埋められた穴がある。
理由はそう、サタンの息子だという理由で。
可哀想に、と笑えば、アマイモンの無表情な顔の視線がこちらに遣る。
「まだまだ、楽しい玩具箱を楽しませたいのでね、さあ、早く掘れ」
「はい」
回復力は半端ではない、我等の末の弟だ。今頃きっと絶望に打ちのめされ、恨みを吐いているだろう。
土に埋めるその寸前まで、あの青い炎と同じ目で大きく見開いて、こちらから視線を外さなかった。
今、思い出すだけでも、息が詰まり、胸が圧迫する感じに襲われる。
—— 許さねぇ
嗚呼、哀れな末の弟よ。その恨みを抱きながら、物質界を赤の液体で染め上げよ。
ただし、完全に悪魔とならないでおくれ。私からの切実な願いだ。
面白くさせる為の準備の一環として、使うだけ。
まあ、用が済んだら殺しますが。物質界の脅威を拭い去らなければいけませんし。
「結構深く掘ったんですね、兄上」
「ああ、騎士團の奴等は用心深くて困る」
それほどの時間がかかってなくても、悪魔の力なら容易く深く掘れる。
それでも、追いつかないくらい、深く深く掘られたのだ。
だからこそ人間は、ますます面白い。
そして、私の背後に隠れて様子を窺う、愛しのレディもだ。
「ルナ、そこにいるんですね」
と言えば、木の影から、出てきた———………私の姪、ルナ。
白いワンピース、黒革のベルト、茶色のロングブーツ。
そして、空みたいな、透明感ある淡い水色の瞳、雪白な色白の肌。
足首まである、長い艶やかな黒髪。全体的にスリム抜群のしなやかさ。
淡い桃色の頬と薄い桜色の唇。ぷるぷると新鮮な果実のようだ。
美しく愛らしい、私の姪。
可憐な美少女。
性格は可憐とは…………ものすごくかけ離れ、父親そっくりだが。
「久しぶりだわ、パパ、兄上」
何故、私のことを兄上と呼ぶのかと言うと単なる伯父の言葉を言われるのが嫌なだけ。
深い意味はない。まあ、ルナの方から自然と呼んだから定着したまでのことだ。
「ルナ、物質界に来るなら僕にちゃんと言いなさい。危ないではないですか」
「だって、なかなか…帰ってこないんだもの」
「明日には帰ると言ったじゃないですか」
「いいえ、聞いてないもん」
という事はどうやら、父上が嫌がらせとして伝えなかったようですね。
ルナは父上を馬鹿呼ばわりし、虚無界から追放される寸前でした。
あの時、私とアマイモンが必死に説得しなかったら大変な所でしたよ。
そこで地面から、何かが這い出る音がした。
土をかき分け、もがき、呻きながら地上へと這い出る……奥村燐。
恨みは相当強いようですね。
「奥村燐、地面から出ようとしてるの?」
「そうですよ。………!?」
何かが、奥深い地面の底から起こった。
「なっ…!」
周囲から、私とアマイモンの体を包み込む——— 青い炎。マントで振り払うが、燃やし始めた。
手も、腕も、肉体も、私の体に青い炎がじりじりと焼きつくし、耐えがたい激痛が襲う。
必死でマントを脱ぎ棄て、炎を消そうとするも、地面から泉のように湧きだす炎は止まない。
「兄上っ!?………パパっ!」
ルナはどうやら燃やされずに済んだようですね。良かった。
この様子だと奥村燐を舐めてたようです。
彼の復讐心は—— 物質界に留まらず、虚無界にもする気なのでしょう。
嗚呼、これだとルナが危ない。
私の大事な弟の娘であるルナも一緒に共に灰となってしまう。
「パパっ!パパっ!パパ——パパっ!!」
「逃げなさい、ルナっ!」
「逃げるんですよ、ルナっ!」
嗚呼、青い炎の中心外にいるルナは懸命に炎を消そうとしている。
無駄ですよ。逃げなさいと言ってるのに、聞き分けのない子だ。
「アインス、ツヴァイ、ドライ……」
軽い音を出し、青い炎の外にいたルナは姿を消した。
ふと、穴にいるアマイモンを見遣る。
「ルナ……兄上、父上。ベヒモス、さよならです」
「ああ、さよならだな。アマイモン」
「僕たち、生まれ変われますか」
「知るか。出来たら……今度は人間だな」
「僕はどっちでも……良い、です……」
「………ああ………」
幻想的な青から闇へと視界は落ちた。
悪魔が生まれ変われるか、……知ることが出来るなら、知りたいな。
私とアマイモンの体を炎が同時に包み込んだ。
さよなら、永久に生きた時間よ。
さよなら、我が弟よ。
さよなら、暴君の父上よ。
さよなら、愛しの姪よ。
私はどうやら、人間に感化されてしまったようだな。
自嘲的に笑みを浮かべた。
本当に愉快で楽しい玩具箱よ、さよならは寂しいのが分かる気がする。
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