二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】真選組女中ですけど。【ギャグ99%】 ( No.382 )
日時: 2011/11/18 22:33
名前: いちか ◆iK/S6sZnHA (ID: rjNBQ1VC)



「あ、お姉ちゃんおかえり! 遅かったね」
「ただいま。何処に何が置いてあるかまだ覚えてないから時間かかっちゃったの」

お姉ちゃんが帰ってきたのは、陽の沈みかけた夕暮れの頃。


100)え、100? …うそ、100??



「鈴、マヨネーズ」
「おま…これで何本目だと思ってやがるんですか」
「鈴、死ね」
「沖田さんは黙っててもらえますか」

毎日のように賑やかな食堂。
皆さんのおかわりに答えるだけでも忙しいのに、
一際疲れるのがこの二人。

土方さんは晩ご飯を食べ始めて約5分で、既に20本近くのマヨを胃送りにしている。
沖田さんはマヨ男に比べて疲れはしないが、無意味に暴言を吐いてくるので精神的に傷付く。

土方さんの元にマヨを10本置いたとき、ふと気が付いた。


「…ザキさんがいない」


いつも地味に箸を取り、地味にご飯を口にするザキさん。
本来イジられる役割はザキさんにあるはずなのに、いないなんてどういうことだ。

ふと土方さんに視線を移すと、「なんだよ」と睨まれる。

「いや、ザキさんがいないなーと思いまして」
「アイツなら仕事だろ。俺が直々に頼んだからな」
「密偵、ですか?」

その問いに、土方さんはピクリと反応した。

「…まぁ、ちょっとな」
「え、誰のですか? って、私が聞いても意味ないですよね…」
「……」

…ん?
……え?

ちょっと、何で黙るんですかそこ。
超 気 に な る !!





  ( まさか、な。 )



 ***





「——鈴、ちょっといい?」
「…え、あ…うん」

隊士らの夕飯も終わり食器を洗っていると、姉から声をかけられる。
…なんだろ、小さい男の子の魅力を語られるんじゃないだろうな…。















縁側から漆黒の空を見上げれば、綺麗な満月がぽつりと浮かんでいた。
そうだ、姉が真選組に来た夜も確か満月だった気がする。
あの時は散々な目に遭ったなぁ…。

なんて一人で悲しき思い出に浸っていると。


「鈴」

不意に、すぐ隣に座る姉に名前を呼ばれる。
私の瞳をジッと見捕らえる姉は、真剣そのもの。
……いや、何処か違う。

(何か、“獣”のような、)

「…なに?」

自然と背筋がピンと張り、顔も強張る。



「この世界に来る前のこと、覚えてる?」
「……え?」

思い出話、ですか?
……なんだ、緊張して損した。

「…うん、覚えてるよ。ジャガイモでスイートポテト作ったよね」
「そうそう。味はまぁ普通だったのよね」

もう、マジで『芋だぜ!!』みたいな。
ジャガイモ好きな人にとっちゃ美味しいと思うよ。

「…そうだ! 明日、またチャレンジしてみない?」
「ジャガイモのスイートポテト?」

きょとんとした表情の姉に、うんと頷く。
すると、姉の柔らかな微笑みが、切なげなものへと変わった。


「……そう。私も作りたいと思ってたの、それ。


              ——でも、でもね…?」


目に映ったのは 、



 小太刀を振りかざす姉


( 刃先は私の首か  心臓か。 )




「もう一緒にはいれないの……、明日は来ないの…!!」



(副長、奴は…鈴ちゃんは何処に!! 大変だ…!)
(…!!)


ひゅっ、と風を切ったのは、



(…あっ、あそこだ…ッ!!)


「やっ…!!」



 どちらの刀か。

















カラン、と地面に小太刀が転がる。
小太刀には私の血がついているはずだった。

私も、死ぬはずだった。



「てめェ…どういうことだコラ…!!」
「…土方さん……!」


土方さんが、刀で小太刀を弾いてさえいなければ。



私はザキさんに腕を引っ張られ、姉から距離を取るようにされる。
だが、柔弱にも私は腰が抜けて動けない。それでもずるずると引っ張られた。

土方さんが姉に刀を向け、舌打ちをする。


「可愛い妹を自ら殺そうたァ、どういう了見だ」
「…後々楽だからよ、その方が」
「…あァ?」

土方さんは顔を歪めた。
…楽って、どういうこと…?


「……。山崎退…そういえばアンタ、自分から何者だって聞いといて寝たでしょ」
「…正確に言えば寝させられた、だけどね」
「そんなのどっちでもいいわ。…何なら、此処で名乗ってあげてもいい」


(満月に照らされている姉は、美しくも怪しげな雰囲気を醸し出していた。)
(まるで——そう、高杉さんのような。)


 やめて、やめて。


(何か、“獣”のような、)


 やだよ、お姉ちゃん。
 名乗らないで。


 聞いてしまったら、もう私たちは——


「やだ…」




「鬼兵隊…楠木霞」







 ———。


「鬼兵隊…だって…!?」

私の体を支えてくれているザキさんが、目を見開き呟いた。
嘘だ、嘘だよ。



姉は塀のわずかな幅に飛び乗り、くるりと私の方を振り向いた。
そして彼女は微笑み、

「…鈴、ごめんね」

その言葉を最後に、塀を降り屯所から脱走してしまった。



「山崎、そいつは頼んだぞ」
「承知しました!」

土方さんも、姉を追い屯所を出る。





残された私とザキさんの間には、ただ静かに、沈黙が流れる。

もう頭の中がぐちゃぐちゃ、
訳も分からず私は涙を流した。