二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】真選組女中ですけど。【原作沿い】 ( No.592 )
日時: 2012/03/13 18:39
名前: いちか ◆iK/S6sZnHA (ID: q4MzvCIN)




苺大福を飲み込んだ銀時は、
「つーかさ、」と真剣な目で霞を見捕らえる。

滅多に出会う野郎じゃない。余計なお世話だとは思うがアイツのために少し探りを入れてやろう。


138)ご飯は男が奢るものって誰が決めたバカヤロー


「なに?」

至って澄ました表情で、霞は銀時に目を向ける。

「お前はいつまで高杉らといるつもりだ」
「いつまでって、ずっとじゃないの?」

まるで他人事のような返答だ。

「…質問を間違えた。なんで鬼兵隊に入ろうと思った」
「……ある日路地裏で倒れてたのね、私。あー行くとこも食べるもんもないし、死ぬのかなぁ、って思ってたの。
 そしたら高杉が現れてさ。獣がうんたら言いながら、一緒に来るか?って誘われて…それで命拾いしたってわけ」
「要は恩返しか」
「そうそう。…今思えば不思議よね、役に立ちそうもない女を仲間に入れるなんて」

高杉には人の素質を見抜く何かがある。おそらく霞の素質を見抜いたのだろう、と銀時は思った。
現に霞はそれなりに腕の立つ輩へ成り立っているようだ。

「鬼兵隊抜けて、普通に庶民として暮らそうって意思はねーのか」
「庶民として暮らせる日なんて来ないわよ、もう。
 もし町で暮らすとする。ある日出歩いたら真選組とバッタリ、逮捕されて情報根こそぎ吐かされ最終的に牢屋行き」

どこが普通の庶民なわけ、と霞は鼻で笑った。

「でもそっちの方が喜ぶと思うぜ、アイツは。優しい姉に戻ってくれたって」
「…鈴のこと?」
「てめーのこと、心配してんだよ。今はどうか知らねェけど」
「心配ねぇ…。あって当然のものが急に無くなるのが怖いだけなのよ、きっと」

昔からそう。と霞は言葉を続ける。

「小さい頃、ずっと大事に持ってた人形を無くした時、そりゃあもう凄い勢いで泣きじゃくってたの、あの子。
 …だから、その心配ってのもそう。いつも味方だった姉の私が、急に敵になっちゃって。不安なだけ」

そんなんじゃなくて、純粋に心配してるんじゃないのかね。
そう銀時は思ったが、これを言ってもどうにもならないだろう。

こりゃ姉と妹がハッピーエンドで終われる確立はほぼ0%に等しい。
脱力したように銀時は肩の力を抜く。


もう一度真選組の女中として働きゃあいいんじゃないのか。
まぁそんなチャンス、よっぽど話が上手く運ばない限り不可能だとは思うが。
つーかそもそも本人にその気がなけりゃ無理だろうな、と銀時は瞼を閉じて考えていた。

その時、不意に霞が呟く。

「でもまぁ、あの子の職場。まぁ真選組だけど、興味はあるかな。沖田くん可愛いし」

その気があるのかどうかは分からないが、興味はあるらしい。

「沖田くんだけかよ」
「当たり前でしょ。他の奴は、嫌い。
 近藤はゴリラだしストーカーだし、土方は無愛想でマヨラーだし」

おいおい、なんか愚痴大会開いてるぞコイツの中で。
つーか無愛想なのはお前もだと思うけどな…という口には出せない本音。

「山崎…だっけ。まぁ地味だしどーでもいい。でもミントン厨なのが鬱陶しい」

…とまぁ真選組トップ2+αの愚痴を聞かされた銀時は、ふと感じた。

「てめーが誰を好こうが嫌おうが知ったこっちゃねーけどよ。お前それ、見かけだけで言ってるだろ」

決して彼らを庇おうとしているわけではない。
むしろもっと貶す方にある。

けど、霞自身の視界が狭すぎるのを教えてやりたかった。

「もっと中身見てみりゃ意外と…」

良い奴らかもだぜ、と言おうとした言葉は霞に制される。

「うるさい。アンタも嫌いよ」

その声色は先ほどまでと少し違った。
怒っているようで、切なげな。よく分からない。

「くるくる天パだし見るからにダメ野郎だし。…それでもアンタの言葉に少し動揺する自分が、一番嫌いかもね」
「え? なんて?」
「だから、坂田銀時は冴えないダメ男って」
「いやそこじゃなくて…」

銀時の言葉を無視して、「さてと」と霞は立ち上がる。


「帰る。さよなら、坂田さん」

ひらひらと手を振って去っていく彼女を、銀時はただ見つめた。





「俺も帰るか…」
「お客さん、その前にお会計してもらわないと」
「………かァァすみィィィイ!!!」








( 中身なんか知らなくったって、別にいい。

               知ったところで何があるの? )