二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】真選組女中ですけど。【3Z始めました】 ( No.645 )
- 日時: 2012/04/17 20:43
- 名前: いちか ◆iK/S6sZnHA (ID: qdhAso1A)
そして迎えた披露宴当日。
私は王女の着付けの手伝いをすることになり、その時初めてその姿を拝んだのだけれど。
……でけェ。私の予想の場合3倍じゃなくて5倍でけェ。
「ウホ、ウホウホ?」
「(何て言ってるんだろう。でも疑問系なのは確実。今のこの場面からして——)」
わたし、綺麗?もしくは、似合ってる?……か?
豚に真珠…いやゴリラに真珠のようなものだけど、機嫌を損ねちゃ命取りになるので盛大に頷いといた。
すると王女は嬉しそうに頬を染めた。翻訳当たってたか。
149)自分の持っている荷物が当たっただけなのに「いたっ」とか言っちゃう。自分は痛くねーよ
「新郎新婦、入場です!」
バァンと、扉が開いて。
新郎のゴリラ(近藤さん)と新婦のゴリラ(王女)が入場してくると、
昨日のリハーサルより大きな歓声(主にゴリラの)が上がった。
隣に座るザキさんは絶望感たっぷりの表情で呟く。
「鈴ちゃん、あのメスゴリラはお色直しに失敗しちゃったの?」
「いやまだですけど。今始まったばっかなんですけど」
「あ、そーなんだ。なんかもう局長が可哀想ってか残酷すぎて涙が…」
「泣くなよザキ、バナナあげるから。意外と美味しいですよコレ、どこ産かな」
「フィリピン産」
あ、本場だ。通りですげー甘いわけだ。
とか何とか思いながら、赤いバージンロードを歩くゴリラ二人を見据える。
「鈴ちゃんさ、悲しんでる? すげー平気な顔してるけど」
「平気っていうか、余裕ですよ。だって万事屋さんがいるんだもの。華麗にブッ壊してくれますよこんなの」
バナナをくわえながら、向かいのテーブルに座る3人に目を向ける。
ちょうど今、沖田さんが頼んでいる様子だ。
「あぁ、そういうことか」
何でもやる万事屋。こんなの屁でもないでしょう。
……と思っているんですけれど。
銀さんの表情がとてつもなくダルそうなのは気のせいかな。めっさやる気とかなさそう。
その時、向かいの沖田さんと目が合う。
どうですか、と首を傾げてみせると、沖田さんはただ首を横に振った。
……無理なの?
やがて銀さんは席を立ち、沖田さんと何処かへ行ってしまった。トイレか?
…あ、やべ。私もなんか…
「ザキさん、ちょっとトイレ行ってきます」
「あ、うん。ちゃんとニオイ消えたの確認してから個室出なよ」
「ウンコじゃねーよ!!」
そう叫んだら式場のゴリラが一斉にこちらを向いた。…なに、恥ずかしいんだけど。
言葉通じてないでしょ? 大丈夫だよねうん。
***
「ふースッキリ……わッ」
トイレから出た瞬間、
どんっと誰かにぶつかってしまった。
「てめーなに若にぶつかってんだァァ!!」
そして何か糸目の人に怒鳴られた。
「よせ東城。彼女は悪くない、僕がぶつかったんだ。…すまない、大丈夫か?」
「あ、はい。全然」
「コイツは大丈夫でも、若は大丈夫なんですか!? お怪我はッ…」
「オイ! どういうことだコラ、キツネ!」
なんだよこの披露宴。
ゴリラにハゲタカにキツネに、動物園ですかコノヤロー!
もっとも式場はゴリラコーナー(+α)となっておりますけれども!!
「そうだ。ついでと言っては何だが、少し聞いていいかな」
「はいっ何でしょう?」
キツネに比べてこの眼帯少女は良い人だ全く!
「ここで披露宴が行われてるはずなんだが、式場はどこか分かるか?」
「…え。もしかして近藤さんの知り合い、ですか?」
私が目をパチクリさせると、眼帯少女も目をパチクリさせる。
「知り合い、というか何というか…。まぁ、同じ女性を想う者同士だな」
同じ女性を……。
近藤さんの想い人はお妙さん。
それが同じということは、彼女もお妙さんを。
……あれ、これ何か聞いたことが…。
——そうだ。
「貴方が柳生九兵衛さんですか!」
「? あぁ、そうだが…」
「あ、私は楠木鈴と申します。真選組で女中やってます」
軽く会釈をすると、九兵衛さんは納得したように頷いた。
「なるほど、だから彼を知っているのか」
「イエス。私も式場まで戻るとこだったんです、というわけで一緒に行きましょうか」
「ああ、いや、式に出るつもりはないんだ」
「…あーそっか。近藤さんの披露宴ですもんね。意味ないか。じゃあ何で?」
そう問うと、九兵衛さんは懐から何かを取り出す。
白と赤の紐で飾られた白い封筒。…ご祝儀だ。なんかすごい分厚いんですけど。
「コレを渡しにきたのと…」
「…と?」
「……あと、見たいものがあって」
…?
見たいものって何だろう。
近藤さんの泣きっ面かな。
「そうですか。ま、とりあえず案内しますよ」
「かたじけない」
式場の扉の前で、九兵衛さんは受付の人にご祝儀袋を渡す。
受付の人は分厚いご祝儀袋にビックリだ。そりゃそうだわな。
「さて、じゃあ私は……」
——バンッ
「ぶほォォ!!」
「だ、大丈夫か鈴ちゃん!!」
式場の扉に手をかけたとき、それが内側から飛んで自分に当たった。一緒にゴリラまで飛んできている。
何があったんだ、と式場に顔を突っ込むと、
…人間VSゴリラの戦争が繰り広がっていた。
メインステージにいるはずの近藤さんは、
誰かの薙刀が羽織に…壁に突き刺さり、ぶら下がっている。
そして、こちらに向かってバージンロードを駆ける、見覚えのある人々の姿が。
「…お妙さん」
いつの間に。
その顔を見ると、今までのよりも遥かに綺麗な笑顔を浮かべていた。(ああ、九兵衛さんの見たいものって、)
チラリと隣を見ると、柔らかに笑む九兵衛さん。
…うん。
何があったのかは分からないけど、これで良し。
( 近藤さん、婚約解消おめでとうございます )