二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【ボカロ】夢に惑わされて、【人柱アリス】 ( No.13 )
- 日時: 2011/09/24 18:11
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
「じゃ、俺はそろそろ戻るとしよう」
ラパンはメイコに背を向け、歩き出そうとした時。
「待って。一つだけ聞きたい事があるわ」
「何の様だ」
「草木は何しても大丈夫かしら?」
「お前が日常で草木を邪魔と思ってるんならな」
メイコの質問に、その場を動かず、そしてメイコの顔も見ずに、淡々と返答した。メイコは、答えてくれた事に「ありがと」と、一言感謝した。ラパンは、足を空中に乗せて歩く。まるで目に見えない階段がそこにあるかの様に、ただ歩く。その先にはただ空しかないのに、ラパンは空の隙間に消えていった。
メイコはそれを見ても、不思議そうな顔はせず、ただただ空の先を望んでいるかの様に見つめていた。
「Good luck——幸運を、祈る」
ラパンの声が森に響いたのは、これで最後だった。
「幸運を祈るだなんて、私を馬鹿にしすぎよ」
片手に剣を持ち、ただただ楽しそうに、メイコは森の道を歩いていった。
何時間経ったろうか。いつまでも暗さの変わらない森は、夜が過ぎたのか朝が過ぎたのか、分からなかった。
「少しお腹が空いてきたわね……でも動物は殺しちゃいけないし……ここで泥棒なんかが出てきてくれたら、お金が手に入るんでしょうけど」
歩きながら、一人で呟くメイコ。通常の人ならば、光が差し込まない暗い森を歩いていると恐怖を持つ筈なのだが、メイコは人より勇ましかった。恐怖もなく、怯えもなく、今、彼女の脳内にあるのはただ楽しさと空腹だった。
歩く、歩く。靴と下の木や岩が蹴られ、静かな空間にたった一つの音を出す。どこに進めばいいのかも分からなかったので、メイコは通れる道を探し、そこを適当に歩いていった。
地面を蹴る音だけしかなかった森に、水の流れる音が、メイコの耳に聞こえた。
「水? どこから流れているのかしら」
メイコは音を頼りにして、水の場所へと進む。