二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.13 )
- 日時: 2011/08/10 01:55
- 名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: SkGQb50P)
—恐怖—
《ゴリゴリッ》
ボスらしき人物が思いっきり振った金属バッドが当たって
痛々しい、音が鳴り響いた。
でも不思議と、そんなに痛くなかったんだ。
…だって。
目を開けると、
俺の目の前で、田島が頭から血流して倒れてんだもん。
それを見たいじめっ子たちは逃げて行ったけど、
この、目の前の現実を受け入れることができなかった。
…あれからの記憶は、あまり頭に残っていない。
その時俺は、気を失ってしまったから。
目が覚めると、
黒い髪の毛がふさふさと揺れているのが見えた。
このサラサラした髪は、
泉だとすぐ分かった。
そして俺は、病院のベットに寝ているという事もすぐに分かった。
「…こ…っこうすっけ………」
俺の声は、
今にも消えそうな声をしていたらしい。
「勇人!?」
泉は、俺が目を覚ましたのに驚いて、
大きい目をさらに大きく開いて、振りかえった。
「勇人、大丈夫か…!?」
「…ん…ちょっと、右腕と…右足…痛い…」
俺の右腕は、6針も縫ったそうだ。
そして、右足は骨折。
「前にもこんなことあったな…あんときは、小学校の保健室だったけど。勇人って、本当に優しいよな、困ってる人いると、ほっとけないタイプってやつ?」
泉は、そう笑って話しかけてたけど、
俺にとっては、作り笑いをしているようにしか見えなかった。
だって…
—————田島のこと、一言も話してくれないんだもん。—————
これは、やっぱり、
田島に何かあったって事だろ。
俺を庇ったせいで酷い目にあったから、
俺が傷付かないように、泉はわざと接してくれているんだ。
だから、
思いきって口を開いてみたんだ。
「悠一郎、何処」
って。
そしたら泉、
いきなり、すごく顔が暗くなった。
やっぱり、何か隠してると思ったから、
俺、急いでまつばづえついて、
部屋から出て行ったんだ。
………。
部屋の外の廊下。
ずっと先を見ると、
水谷と苛められていた、男子がベンチに座っているのが見えた。
「文貴…」
俺が口を開くと、
水谷は顔を下げたまま立ち上がり、
「勇人だけでも無事でよかった」
と言いだした。
‘勇人だけでも無事でよかった,
…だけ…って何…。
「文貴…悠一郎…は………」
先生の話によると、
奇跡的に、命は無事だったそうだ。
田島の寝ている部屋に入って良いと許可をもらったから、
俺、水谷、泉、苛められていた男子、先生と入ると
そこには、痛々しい田島が寝ていた。
頭には白い包帯。
腕足もギブスがはめられていた。
顔にも治療した痕がある。
田島は気を失って、全然目を覚ましていないそうだ。
「…ゆー…いちろ…」
いつも元気な水谷も、元気がない。
泉はというと、
「悠一郎、てっめぇいい加減起きろ!!!お前、まだかつ丼くってねーんだろ!?そんなんで…いいのかよ…ッ」
と、田島に訴える。
2人とも涙でぐしゃぐしゃだった。
何やってんだ…俺…。
そん時、
どう受け入れたらいいのか分かんなくなった俺は、
ゆっくりとその部屋から抜け出し、
自分の部屋に戻り、ベットに横たわった。
なんか、一人でいたい気分だったんだ。
その時、
部屋を叩くノックの音がした。
「失礼しまーす。」
聞いたことのない声。
いきなり見知らぬ少年が入ってきた。
その少年は、俺より少し身長が高く痩せていて、黒髪短髪だ。
俺はびっくりして、毛布に包まった。
だって、こんな泣きはらした顔、出したくなかったから。
「え…っと…君、誰?ここ、俺の部屋なんだけど…。」
俺はその少年に言った。
すると、その少年は
「あ、いきなりごめんね。俺、‘西広辰太郎,っていうんだ。この病院の先生の息子だよ。」
どうやら、先生の息子らしい。
「田島悠一郎くんのことだけど、彼ならきっと目、覚ますから大丈夫だよ。あんま、気にしちゃダメだよ。それと、‘三橋廉,くんもね、君に謝ってたよ。そして、お礼も言ってた。」
「…うん…。えっと、三橋廉って誰…?」
「あ、あの、黄色の髪の子。」
どうやら、三橋廉とは、あの苛められてた子のことらしい。
すると、
ドアの外から、小さな声が聞こえた。
「あ…っの…三橋…ですけど…えっと…その…」
三橋廉の印象は、
すっごい、ウジウジしてて引っ込み思案だった。
だから、俺は言ったんだ、
「そんな所にいないで、中に入って話そう」
って。
だって、そうでも言わないと、
中に入ってこないだろうから。
すると三橋廉は、
俺の目の前に来て、
「さっきは…ごめんなさい…ッ!!!そっれと…助けてくれて…あ…ありがとう…。」
でも、俺はその言葉には何も感じなかった。
嬉しくもなかった。
その言葉は、
俺が田島に言いたい言葉だったから。
その時だった…
「ゆ…悠一郎が…目を覚ましたぞー!!!」
部屋の外から聞こえるその声は、
俺の耳にも入った。
その言葉に、
俺の心に明かりが灯った気がした。
でも、それは、その時だけだったのだ。