二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.18 )
日時: 2011/08/13 23:26
名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: SkGQb50P)

—気持ち—

「退院おめでとー!!!」

田島は無事退院した。
それは、あの事故から3週間のことだ。

田島の事は、ちゃんと田島のお母さんに説明した。

記憶喪失で、違う人の記憶が混ざってしまったということ。

すると、田島のお母さんは微笑んで言った。
「そう…でも、悠一郎は悠一郎だもの。分からないことがあったら、遠慮なしに言ってね。」
と。

するとオキ記憶の田島も微笑んで、
「うん」
と答えた。


これからの事を考えると、
やっぱり学校に通わないのはまずいと思ったんだ。
だから、記憶はオキだとしても、田島は田島だから。

水谷にも協力してもらって、
先生やクラスメートにも説明した。

でも、やっぱり分からない事が多いみたいで、
一番最初の時のように、落ち込んでいた。


「悠一郎?大丈夫???」


休み時間に俺が話しかけると、応答なし。


水谷も、
「お〜い、悠一郎???」
と声をかけると、やっとその声に気付いたのか、

「えっ、あ、うん。…何?」


俺と水谷は顔を見合わせて、

「カズトシ、今の君は‘悠一郎,だよ。」
と言った。


オキ記憶の田島は小さく、うん、と頷いて
ポケットから鏡を出した。

そして、自分の顔を見ながらこう言った。

「…この、‘悠一郎,くんって、どういう性格の人?」

突然の言葉で驚いたけど、
俺は、はっきり田島の性格を言う事ができた。

「とにかく元気な子。それで、明るい!!時には優しい時もあるなぁ〜」

「そーそ!!!そんで、馬鹿!!でも、とにかく明るくて、一緒にいると元気もらえるよなぁ〜。プラス思考で、マジいい奴!」

水谷も続けて言った。


すると、
オキ記憶の田島は、溜息をついて
鏡をポケットにしまった。




「…俺とは正反対…。」





その言葉を発すると
しばらく黙りこんで、
また口を開いた。




「なんで俺が…悠一郎くんの体にはいっちゃったんだろう。…こんなウジウジした性格の奴が、悠一郎くんの体ん中入っちゃった…。こんな性格で悠一郎くんやってたら、本人に失礼だよな…。」

「そ…そんなこと…」

「本当は、今ここにいるのは…本当の悠一郎くんだったのに…。」

オキ記憶の田島は
やっぱり本人の言うとおり、性格が全く違った。

自分を責める姿を見て、
俺も水谷も、助けたかった。


「そんなに、自分責めないでさぁ〜!いずれかは皆記憶戻るだろー?」


水谷も助けたかったから声をかけた。



でも…



その気持ちは伝わらなかった。






「俺の気持ちなんか、皆分かんないだろ!!!しかも、いずれか記憶戻るっていっても、いつ戻るか分かんないじゃん!!!戻るかも分かんないじゃん…戻らなかったらどうするんだよ!!!」


水谷は、ただ助けたかったから言ったのに。
だから、その言葉に頭にきた水谷は、


「…悠一郎を思って言ったのに…そんな言い方ないでしょう…!!!」

「…俺、悠一郎くんじゃない。…俺は…俺は‘オキカズトシ,だ…!!!」


その時、
俺は何もできず、
2人を止める事ができなかった。




その後も、
3人バラバラだった。


水谷のところに行っても、
「俺は、ただ助けようとしただけなのに、あんな言葉ってねぇよ」
ってしか言わなかったし、


オキ記憶の田島のところに行っても、
「誰も俺の気持ちなんか分からないよ…」
ってしか言わないし…。



だからね、この日1日、3人バラバラに過ごした。



帰り道、
俺は当番の仕事で遅くなった。

教室は、俺一人。



「…結局…帰りもバラバラかぁ…」



そう思って、昇降口に向かった。











「待ってたよ、勇人」












そこにいたのはオキ記憶の田島だった。

さっきとは違って、笑顔だった。


そして、



「さっきはごめん。…俺、パニくってて…」

と謝ってきた。

俺も、こうやって仲直りできて、すごく嬉しかった。

「大丈夫、俺もなんかごめんね。カズトシの気持ち、分かんなくて。」

俺達は、
少し夜空に近い空の下を語りながら歩いた。

「んーん。その事は気にしないで。…俺…文貴に謝りたいんだけど…許してくれるかな…?」

オキ記憶の田島は、少し顔を赤らめて言った。

「大丈夫!文貴、いいやつだから!たぶん、文貴も仲直りしたいと思うよ」



誰だって、喧嘩した時は頭にくる。

けど、少し経ったら、
仲直りしたいって気持ちになるんだ。



「うん…明日、謝ってみるよ…!!!…あ!!!」

「…ん?」

オキ記憶の田島は、空を指差して、

「今、そこ、流れ星流れた!!!」

と言った。

そのとき俺は残念ながら見る事ができなかった。

でも、オキ記憶の田島だけでも
流れ星を見る事ができて本当によかったと思う。



流れ星の‘願いがかなう,という伝説。
それは本物だったのだから。