二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.19 )
- 日時: 2011/08/14 20:31
- 名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: SkGQb50P)
—夢—
「おやすみー」
夜10時。
オキ記憶の田島は、2段ベットの上から
そう言った。
俺は2段ベットの下から、
上を見上げるような感じで、
「おやすみ〜」
と返した。
俺にとって10時は
寝るのには早すぎる時間だったから、
携帯を弄っていた。
もしかしたら、水谷からメールがくるのかと思って、
携帯のトップ画面を見たけど、
メールは1件も入っていなかった。
そして俺は、
知らない間に、夢の中に入っていた。
—————————————。
「ゆーと!!!」
夢の中では、
誰かが俺を呼んでいた。
その声は、優しくて、とても懐かしかった。
自然と涙が流れてきそうな…。
…そう、これは俺のお母さんの声。
夢の中のお母さんは、
白いワンピース姿で、
ただ緑色の草だけが生えている原っぱに立っていた。
そして、俺の方に近づいてきて、
「勇人、あなたは本当に立派に育ってくれたわね。…これからも辛いことが多いかもしれないけど、お母さんも、神様も皆、勇人の味方だから…」
そう言って、お母さんはゆっくりと姿を消していってしまった。
——————————————。
「い…行かないで!!!!!!!!!!」
目を覚ますと、
俺は大声でそう叫んでいた。
不思議な夢を見たせいか、
大声で叫んだことが、これっぽっちも恥ずかしくなかった。
時計を見ると6時半。
ちょうど起きる時間だった。
俺は、寝てるオキ記憶の田島を起こそうと、
上へ行ってゆっくりさすりながら、
「悠一郎、朝だよ。起きて」
と言った。
「う…う…ん…」
昨日の事で色々あったから
疲れているのだと思い、無理やり起こすのはやめた。
顔を洗って、
台所に行って朝食を食べた。
「今日の朝食は、卵焼きかぁ〜。おばさんの卵焼きは絶品だよ。」
俺はそう言い、
頬張って食べた。
田島のお母さんも嬉しそうな顔をして
「そぉ!?ありがとう、嬉しいわ!!!」
元気のなかった、田島のお母さんも、
少しは慣れたのか、表情が柔らかくなった気がする。
卵焼き…
昔を思い出すなぁ…
俺のお母さんの卵焼きも…すっごい美味しかった…。
「そういえば、悠一郎はまだ寝てるの?」
「あ、うん。そろそろ起こしてきた方がいいかな?」
俺がそう言うと、
《ピンポ〜ン》
家のチャイムが鳴った。
「おばさん、俺が出るからいいよ。」
こんな朝から誰だろうと思い、
玄関を開けた。
「おはよう…。」
玄関前に立っていたのは、
水谷だった。
しかも、寝癖が酷く、目も腫れていた。
「…どうしたの…こんな早くに…しかも、目、すっげ腫れてる。」
すると水谷は、
深く深呼吸して、
「昨日は本当にごめん。」
と頭を下げてきた。
俺はその姿を見て、ホッと安心した。
やっぱり皆、仲直りしたかったんだ、って。
そして俺は思った。
この腫れた目、喧嘩の事で夜遅くまで泣いて、眠れなかったのだろうと。
「そんで…悠一郎にも謝りたいんだけど…。」
「俺が、どうしたって???」
突然の声にびっくりして、声のした後ろを振り返ると、
そこには、準備万端のように制服姿の田島がいた。
「悠一郎…いつの間に…」
そして、水谷は、真っ赤にした顔を下げて、
「悠一郎、昨日は本当にごめん…っ…。」
と言った。
でも田島は、
何があったのか分からないような、
まるで、記憶喪失にでもなったかのような
ポカンとした顔で、水谷に、
「え?あぁ、電車の中で揉めた…カツ丼とケーキの事か?…あぁ〜別にいいよ、あんなん。まー皆一緒に食べるのが、一番うめぇ〜んだけど!」
まるで、本物の田島のようだった。
…いや、ようだったじゃない。
これは本物の田島だ。
だって、オキは、電車の中の事なんて知らないし…
「悠一郎…なの…!?」
「カズトシじゃない!?」
俺と水谷は、
夢中で田島に問いかける。
すると…
「はぁ!?なぁーに変なこと言ってんだー?俺は田島悠一郎。」
この田島は、
正真正銘の田島悠一郎なのだ。
そして、田島の家で飼っている、犬やら猫やらが、
一斉に田島に飛びついた。
「うわぇ!?く…くすぐってぇーよ!!!」
さすが、動物を操れる田島悠一郎。
本物だと分かって俺達も、動物たちと一緒に田島に飛びついた。
「うぇ!?な…勇人!文貴!おまえらまでいきなりなんだよ!!!」
「うわぁ〜ん!!!悠一郎おかえり〜!!!」
「本物の悠一郎だ!!よかった、本当によかったぁ〜!!!」
この時俺は思った。
昨日オキが見た流れ星、
今日俺がみたお母さんの夢。
きっと神様が、
俺達を助けてくれたのだと。