二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.20 )
- 日時: 2011/08/14 21:46
- 名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: SkGQb50P)
—祝福—
「悠一郎に…カンパーイ!!!」
その日の夜、
俺、田島、水谷、泉の4人で
田島の祝福パーティをいつものケーキ屋さんで開いた。
「ったく…心配掛けやがって…」
泉は、そう言い目をそらす。
「そーそ!!!孝介もすっげー心配してたんだぜ!!!」
水谷も続けて言う。
「…っ俺ぁ別に心配なんてしてねぇ…し・…!!!」
「うっわー照れてる照れてる!!!さすがツンデレ!!!」
「///…」
「皆、心配かけてごめんな。でも、本当記憶戻ってよかったーーー!」
俺はこの光景がまた見れて、凄く嬉しい。
だって、もしかしたら、一生見れなくなると思ってたから。
「そういえばさ、‘カズトシ,はどうなったんだろ?」
水谷がチョコケーキを食べながら言う。
「カズトシって、誰だー???」
「以前、お前の体に紛れ込んだ人。カズトシ、事故に遭ってもう目を覚まさないで1年経つんだってよ。」
「ふぅ〜ん?」
泉と田島の何気ない会話に
俺もオキの事が気になっていた。
田島の記憶が戻ったって事は、
オキの記憶は…!?
オキの身体は…!?
その時、
「記憶戻ったんだね、悠一郎くんおめでとう」
の言葉と共に、
いきなり大きなパフェが、
テーブルの目の前に出された。
その声の人を、
ゆっくりと見上げると
赤ワインのブレザーが目に入った。
これは、泉が通う‘東城学園,の制服。
泉のように、偉い人が入る学校。
恐る恐る顔を見ると、
見覚えのある顔。
それは、西広病院の先生の息子、
西広辰太郎だった。
「辰太郎!!!おまえっ、俺と同じ学校だったのかよ!?」
泉は立ち上がり、驚いた様子だった。
「そうだよ。しかも、同じクラス!なのに、全然気づいてくれないんだもん。面白いから、ワザと声をかけなかったんだー」
西広は笑いながら言った。
そして、続けて、
「悠一郎くん、初めまして、西広辰太郎です。学校は別だけど、仲良くしてね。」
と笑顔で言った。
「あぁよろしく!!!それと、俺んことは、くん付なしでいいぜー!!!辰太郎!!!」
「!!!うん、よろしく、悠一郎!!!」
西広も
改めて本当の田島と友達になった。
そして、今まで笑顔だった西広は、
顔の色を変え、
深刻な目をして、語り出した。
「あのね…皆…———」
西広の話の内容は、オキの事だった。
田島が記憶を取り戻したように、
西広は三橋と一緒にオキの様子を見に行ったらしい。
でも、もうすでにオキの姿はなかったそうだ。
それは、あの世界に行ってしまったのではなく、
意識を取り戻して、退院して行ったらしい。
退院したのは、
凄く嬉しいことだけど…
誰もオキの居場所が分からない。
引っ越してしまったそうだ。
西広が携帯に連絡しても、
オキは携帯を変えてしまったのだとか…。
「カズトシ…何処に行っちゃったんだろ…。」
俺は呟きながら、昨日の事を思い出した。
昨日、オキと話ししたんだから、
きっとそう遠くには行っていないと思ったんだ。
「でも、大丈夫!またカズトシに会えるって信じてるから!」
西広は笑ってみせた。
「辰太郎…」
オキの真実に、
俺達は一気に静かになってしまった。
その時…
「なぁなぁ!!!この苺たっぷりショートケーキ、超うめぇ〜!!!」
能天気な田島は、目を輝かせて
俺達に、食いっぷりを見せてくれた。
それは、この静かな雰囲気を変えようと、
やってくれたのだと、今でも思う。
それが、田島のいいところなんだけどね。
続けて水谷も、
「お!!!マジだぜ!!!この苺の甘酸っぱさと、生クリームの甘さが合わさってまろやかになってる!!!」
と言った。
その2人を見て、俺達もケーキを口いっぱいに頬張った。
考えてみれば、
田島もオキも無事退院できたんだ。
嬉しい事じゃないか!!!
オキが何処にいるか分からないけど、
絶対にまた何処かで会える、
そう心に秘めたんだ。
…この時の俺は、
まだ予測していなかっただろう。
この中の誰かが、
突然姿を消してしまう事を。