二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.21 )
日時: 2011/08/21 15:48
名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: SkGQb50P)

—第6章—『消えた人』

—行方不明—

田島が退院して、早くも1週間が経とうとしていた時だった。

もう、何事もなかったかのように、
俺らはそれぞれを過ごしていた。

田島、水谷はもちろん。

違う学校の泉、

そして、あの事件をきっかけに知り合った、西広と三橋とも、
連絡を取り合ったり、時々会ったりもしている。



そんなある日の学校の帰り道、

「うっわー!!!今日音楽レッスンの日だー!!!」

水谷が頭を抱えながら大声で叫ぶ。


「そういえば文貴、天才音楽少年だったよなぁ〜!!!忘れてたー」
田島が肩手にアイスクリームを持って、
水谷にちょっかいを出していた。


水谷は、週に5回、音楽のレッスン教室に通っているらしい。
レッスンのない日でも、家で練習しないといけない。

俺は、
水谷はいつも笑ってて、
ケーキばっか食ってて、
気楽でいいなぁ〜って思ってたけど、
本当は全然忙しいんだ。




「音楽のレッスン教室さー、孝介もくるんだ〜」

「え!?あいつ、楽器使えんのかぁ!?」

「だって、孝介、泉財閥のあととりだよ?習い事ならたくさんしてるでしょ」

「うおっ!!すげぇ!!!」

「ついでに、この前はピアノ弾いてた!俺が、‘青春ライン,弾いてっていったら、顔真っ赤にして弾いてくれてさ〜‘べ…別におまえの為に弾いたんじゃねぇし…///,って!!!」

「あははは!!!さすが、ツンデレ孝介だよね〜」



こんな風に話していると、
いつの間にか家に着いちゃうんだ。

「んじゃ、また明日ねー」

「明日なー」

「バイバイ」

田島家に着くと、
ここで水谷とはお別れ。

水谷は元気に右手を挙げ
おおきく振って帰って行った。





————————夜7時。



『いっただっきまーす!!!』

今日の夕食は、俺も田島も大好きなハンバーグ。
おばさん特製のデミグラスソースがかかっている。

「おばさんのハンバーグ、やっぱり美味しいよ!!!」

「おー!今日のはチーズ入りだぜ!?」

「お!!!本当だ!!!」

田島と一緒にご飯を食べると、
美味しい料理が自然とまた美味しく感じた。



「なぁなぁーそーいやさー…」



田島がそう言った瞬間、
‘ドラマチック,の着メロが流れた。

この携帯は、俺のだ。



「誰からだろう…?」



携帯を開いて確認すると、
相手は水谷だった。



「もしもし?」

{………。}

電話に出たが、無言で何もしゃべらない。




そして、予想もしない言葉が返ってきた。










{孝介がいなくなった}










孝介がいなくなった…。




こうすけがいなくなった…。




コウスケガイナクナッタ…。










俺は、その言葉が頭いっぱいに泳いだ。
















——————気付いたら俺は…
————————————近くの公園のベンチに座っていた。



隣には誰も座っていない。

ただ見えるのは、大人数が、騒いでいる様子。
きっと、泉を探しているんだ。

パトカーの音が怖い…。

あの赤いランプが怖い…。

すると…









ボロボロに泣きじゃくった水谷の姿が目の前に現れた。











「ふみ…き…。」


その水谷の顔は、
下校時に最後に手を振ったあの顔とは、裏と表だ。



「レッスンには…いたんだ…。」

水谷がそう言うと、
そっと俺の隣に座った。


そして水谷は、
ボロボロと涙をこぼしながら、話し始めた。


水谷の話によると、
音楽のレッスンには、普通に来ていたらしい。制服で。
別に様子も普通で、ピアノを弾いていたそうだ。

でも、帰り道、
普通はリムジンが迎えに来てるはずなのに、
リムジンが途中事故に遭ってしまい、迎えに来ることができなかったそうだ。

水谷は家が、レッスン教室から近いから歩いて帰る。だから、泉にもあるいて帰ろうと誘ったらしい。

でも、泉の家は結構遠かったらしく、
途中一人にしてしまったら、帰る途中にあんな事が…。







「俺が、歩いて帰ろうなんて言わなかったら…こんな目に遭わなかったのに…俺が…俺が悪いんだ…!!!」



「文貴っ…文貴のせいじゃないよ!!!自分責めないで!!!そう言ったのは、文貴でしょ!!!」


オキと文貴の喧嘩を思い出しながら言った。



すると、水谷は分かってくれたらしく、

「うん…。」

と、俯いて返事をした。



相変わらず、
騒ぎの声は止まず、
さらに大きくなってる気がした。



「文貴、俺らも探しに行こう!」

「う…うん!!」


俺は、前向きにそう言ったけど、
本当は不安の気持ちでいっぱいだった。



そして、………怖かった。