二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 幻月の下に唄う ーイナズマイレブンー ( No.179 )
日時: 2011/11/19 11:51
名前: 天音 (ID: P/D0CuiW)

(1) もう一度、

 「あ!金魚だぁ!!」

場所は変わって校舎内。
二階の廊下にある大きな水槽の中を赤やら黒やらの金魚が優雅に泳いでいた。
そしてその水槽を眺め目を輝かせる少年の姿。年は四、五歳くらいでどう考えてもここの生徒じゃないことは確かである。

「ねぇねぇ、ずっと水の中にいるってどんな感じなの?」

銀色の髪を揺らしながら金魚に尋ねる。が、金魚が返事なんてするはずもなくただ水中をフワリフワリと泳いでいた。

「赤、黒、白と……あ!!」

自分が金魚にした質問のことなどすっかり忘れた様子で金魚の色を口にしていた少年だったが、ふと水面に浮かぶ“何か”に気付く。

「……死んじゃったの?」

“何か”ーーーーそれは寿命を終え水面に漂っていた小さな赤い金魚。
自身の意志とは関係なくふわふわ揺れている金魚を見た彼は小さく“かわいそう。”と呟くとしばらくは死骸を眺めていた。
しかし不意に小さな右手を水槽に突っ込み他の金魚が慌てるのにもかまわずに死骸を手にするとーーーー

「“もう一度”」

ーーーーと呟いた。











「金魚さんボクそろそろ戻らないと兄さんに怒られるし……またね!!」

ぱたぱたと軽い足音を立てて走って行く少年。今更だがぶかぶかの青いパーカーが目を引く。

そんな彼を見送る水槽の中には死骸はすでに無く、嘘か本当か小さな赤い金魚が優雅に泳いでいた。