二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 幻月の下に唄う ーイナズマイレブンー ( No.25 )
日時: 2011/09/01 15:00
名前: 宙詩 風梨 (ID: P/D0CuiW)

(8) 消えた私の存在意義は

 「だからねぇ、喧嘩なんかしたら駄目でしょう?何度言えば分かるのかしら……それともそれすら分からないおばかさんなの?結祈ちゃん。」
広い理事長室に響く高い声。
ふぅ、とため息をつき女性が言った。
腰まであるサラサラの黒い髪に同じく黒いカッターシャツとロングスカート。
綺麗というよりは美しいの方がピッタリくるような顔立ち。

鏡花学園理事長ーー出雲 鈴(いずも りん)である。

 「……んで、なんの用ですかね。僕ら忙しいんでアンタみたいな悪趣味女の相手してる暇無いんです。」
出雲の着ている服に冷たい眼差しをあびせながら嫌そうに答える結祈。
そんなあからさまに喧嘩腰な彼女を横目に
奏始が口を開いた。

「出雲さん。それで用件は?俺達何かしましたっけ?」
口調は普段と変わらないものの若干顔が引きつる。
それを見て“私はどれだけ嫌われているのかしら?”と苦笑いを浮かべる出雲と“太陽と同じくらい。”と間髪入れずに呟く結祈。

 「何かした……って言うより、しないでほしいの。」
意味深なことを言い、そっぽを向いている結祈の頭に、ぽんっと手を置く。
「……どういうことですかね……つか僕に触るな。」
そう言いながらもなぜか抵抗しない結祈を無視し、出雲は続けた。
「……この先、何があっても絶対に“結祈”と“奏始”のままでいてほしいの。
何があっても“他人より自分優先”で行動してほしいのよね……。」

少し悲しそうに微笑み、手を降ろす。

「……お話はそれだけ?……言いたいことは言った?」
結祈がうつむきながら呟いた。
「いや、僕は僕のままでいてほしい、とか自分優先にしてほしい、とかさ正直無理なんだよね。
僕はもう救われ過ぎた。これからは僕が救う番なんだよ。
それにーー……」
一度言葉を切り、顔を上げると意地悪く笑う。

「もう僕はどれが“僕自身”かなんて分からないよ。
分かるには“思い”が多過ぎるんだ。
だからもういいでしょ?“消え”なくても。
僕らは“存在”することにするよ。
……“あなた方”と違ってね!!」
ははっ、と軽く笑うと隣にいた奏始の手を取り出雲に背を向けた。


「……やっぱり無理よねぇ、“あの子”の妹だもの……。」
二人が去った理事長室の窓際で出雲が呟いた。
窓の外には青と黄色のキャラバンが一台。

「反抗期は困ったものよ?……あなたにあの二人を……“存在”させられるか……見ものだわ……“円堂 守”君?」

窓の外の少年に向かい彼女は優しく微笑んだ。