二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 幻月の下に唄う ーイナズマイレブンー ( No.40 )
日時: 2011/09/11 14:33
名前: 宙詩 風梨 (ID: P/D0CuiW)
参照: http://loda.jp/kakiko/?mode

(12) 目前のお客様

 「あぁ、腹立つ。何か触られたし。あ〜やだやだ気持ち悪い……」
ぶつぶつ言いながら校舎の中を歩く結祈。

理事長室を飛び出してからかなり機嫌が悪い。ずっと出雲に対する文句を言い、たまに“くたばれ” と恐ろしいことも口にしている。
「……少しは冷静になれよ。出雲さんもあんなのだけどーー……」
「“命の恩人”なんでしょ。知ってるからもう言わないで。」
呆れ顔の奏始にキツい目線を浴びせ黙らすという荒業を使いつつ、どんどん歩みを進める。

何度か階段を登り、廊下の角をまがって辿り着いたのは白いプレートに大きな赤い文字で“立ち入り禁止”と書かれた校舎の最上階ーーーー屋上だった。
“入れないのにこんな所来てどうする。”
と考える奏始をよそに結祈は当然の様に扉を開け、屋上に入っていった。
唖然とする彼を見て“何か?”と首をかしげると意地悪く笑う。
「実はさっき理事長室から盗ん……
じゃなくて、ちょっと拝借してきたの。」
と笑いながら奏始に左手を差し出す。
するとそこに在ったのは太陽の光を反射して銀色に輝く“鍵の束”。

「スペアキーとか言うやつ?あったらそれなりに便利かなって。」
「だからって……ところでそれを出雲さんに返却する予定は?」
「ん?何で返さないと駄目なの?」
頭を抱える奏始、それを見てニヤニヤ笑う結祈。
手招きする彼女につられ戸惑いながらも屋上に足を踏み込んだ奏始はふと自分の前方を見て目を見開いた。
「おぉ、やっと気付いた。」
その様子を見て声上げた結祈は彼と同じ方向に目をやると楽しそうに呟いた。

「待ちに待った“お客様”だよ。」

二人の目前で赤い髪がふわりと揺れた。