二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:  花残の月 〔 inzm, 〕 ( No.25 )
日時: 2012/04/21 22:38
名前: 紅闇 ◆88grV3aVhM (ID: dNKdEnEb)
参照: 移転するとか言っておいて色々あって心折れた。


  『エレクタム』

1. 見知らぬ彼女は










   *  *  *



「じゃあ行って来るね、秋姉!」

「いってらっしゃい!」

 俺はいつも通り雷門中に向かう為、木枯らし荘を飛び出した。秋姉が前の道路を箒で掃いていて、見送ってくれるのも同じ。
別に遅刻する訳じゃないのに朝は何故か走っている気がする。やっぱり朝練が楽しみだからかな!
 この路地は人通りが少ないから、角も曲がる時も俺は注意せずに行く。だから今日もいつも通り突っ込んで行った……んだけど。

「うわぁッ!?」

 角を曲がった瞬間目の前に人が居て、反射的に足が止まろうとする。でも、結構スピードがあったらしく。
ぶつかりはしなかったけど、反動で後ろに尻餅をついてしまった。何て恥ずかしい。

「痛ったぁ……」

「……大丈夫か」

 前の人は呆れた様な口調で手を差し出してくれた。その好意に甘えて手を掴み、砂が付いた制服を叩きながら立ち上がる。
 明らかにこっちが悪い。俺は慌てて謝ろうとすると、いきなり前の人は笑い始めた。というか、今まで笑いを堪えていたらしい。
いやその前に、女の人じゃないか。口調が男らしかったので分からなかったけど、珍しい紫色の髪は左で結ばれていて、特徴的な赤目は何と言うか……不思議な感じがした。

「あ、えっと……すみませんでした」

「同じじゃないか……」

「え?」

「くっくっく……あ、いや何でもない。お前は平気か?」

「え、あ、はい! 平気です」

 女の人は俺の顔を見てまだ笑っていた。そろそろ俺も居心地が悪くなってくるので、この話を切り上げないと。
というか、転んで笑われているのが恥ずかしいだけなんだけど。

「あー懐かしい。……ん、お前その制服、雷門中か?」

 どう切り上げようか迷っていた所、女の人は話題を切り替えた。

「……雷門ですけど」

「へぇ。あ、怪しい奴じゃないから安心しな。成る程、結局似たもん同士、か……」

「似たもん?」

「何でもない。ほら、お前早く行かないとまずいだろう? さっさと行け」

 確かに、そろそろ行かないと間に合わなくなる。でも、やけに彼女の言葉が気になる。
俺が言える立場じゃないから、まあいいか。

「じゃあ失礼します!」

 一礼して顔を上げた時にはもう既に女の人は歩き始めていた。
 ボケッと突っ立っていたが、雷門中に行くという目的を思い出して、急いで走った。


 ——……似たもん同士って、どういう事かな。




   *  *  *


 ⇒紫の髪を揺らして.